テラーノベル
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朝、仕事場についた俺はノートのことなんてすっかり忘れていた。
「おはようござ」
います、と挨拶しようとしたその時。
「元貴!おはよ、ねぇ見てっ」
後ろから涼ちゃんの声が聞こえて、ねぇねぇ、と話しかけられる。
「おはよ、どしたの?」
「これ見て!可愛いでしょ?青りんごのブックマーカー」
涼ちゃんは手に乗せたものを見せてくれる。
「可愛い···どうしたの、これ」
「買い物してたら見つけたの!ハンドメイドでね···思わず買っちゃった。1つ、元貴にあげる」
「ありがと···いいの?」
「もちろん!ちなみに僕とお揃い」
そういってもう一つ見せてくれる。
お揃いなんて、可愛い。
ありがと、ともう一度言って大切に鞄に仕舞う。
「もしかして3人お揃い?」
何気なく聞いたけど涼ちゃんが少しだけ困ったように笑って、ううんって言ったのが意外だった。
「あ、えと、若井には···ギターのやつにした···」
「そっか、涼ちゃんとお揃い嬉しい、大事に使うね」
そう言うとほっとしたように笑ってくれる。
「最初に渡せて良かった、僕もお揃い嬉しい···」
それから部屋に入ってスタッフさんたちにも挨拶をした。
家に帰り、涼ちゃんから貰ったものを取り出す。お揃いだなんて、なんて嬉しいことをしてくれるんだろう···その時あのノートのことを思い出した。
「願い叶ってる」
偶然にしろ、今日の俺はご機嫌だった。少し考えて次のページをめくる。
“涼ちゃんにカッコいいって言ってほしい”
そのページにブックマーカーを挟む。俺は少し明日が楽しみになった。
翌日、スタジオで各々パートの確認をしていた時いつも通りギターを弾いていると隣で涼ちゃんにじっと見つめられて、俺は少しドキッとしてしまう。
「ギター弾いてる元貴ってカッコいいよね···」
「えっ?」
「歌ってるときも素敵だけど、真剣にギター見つめて弾いてる時の表情ってカッコいいなあって···ごめん、変なこといってる?」
俺が驚いたから、焦って涼ちゃんがそういってくれる。
「ううん、嬉しくて、ちょっと驚いちゃった。俺も涼ちゃんがピアノ弾いてる時、カッコいいって思うよ」
それにほら、その嬉しそうに笑う笑顔は可愛くて···好きって思うよ。
それは伝えられなかったけど、今日も涼ちゃんの言葉は俺を幸せにしてくれた。
俺の頭にはあの黄色いノートが浮かんぶ。すっごく些細なことだけど、願い叶ってる···今日の夜は何を書こうか、と俺はふと考えてしまった。
帰ってからすぐに俺は次の新しいページに願い事を書いた。
“涼ちゃんと手をつなぎたい”
コメント
6件
これどんどんハグしたいとかキスしたいとか、大きいものになっていきそう…
確かにピュア♥
願い事が微笑ましくて、癒されます🫶