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あまりの寒さに目が覚める。

毛布を羽織ったままベッドから降り、恐る恐るカーテンを開く。なんと一面の銀世界。 話には聞いている。これが雪というやつだ。私は「雪だるま」というものを作ってみるため、レイを誘おうと居間へと向かった。

居間に着くと、いつものようにレイが朝食を作って待っていた。

「お嬢様、本日の朝食は卵かけご飯という物になります。この国では卵を白米の上にかけて食べる文化があるそうですよ。 」

既にこの辺りの食文化まで調査済みとは、流石に彼女は働きすぎじゃないだろうか…。しかも卵まで手に入れて来るとは。本当によく出来た従者だ。卵かけご飯…まあ食べた事は無いが、まあ恐らく卵をかけたご飯だろう。卵料理は嫌いじゃないため、意気揚揚と席に着く。

「…ん?これは何かしら?」

「卵でございます。」

「そうじゃなくて…何故食卓に生の卵が?」

生の卵だなんて食べた事が無いし、そんなものを食べられるなんて聞いた事もない。

「この国ではそういう文化だそうです。ご安心ください。病原菌などは無いそうです。毒味も済んでおります。」

正直信じられないが、レイの言う事なのだからそうなのだろう。恐る恐る生卵を白米に垂らしてみる。

「こちらをかけてお召し上がりください。」

レイから見たことの無い茶色い調味料を渡される。見た事ないものだらけ。この辺りの食文化は特殊みたいだ。

「いただきます。」

醤油を適当にかけ、恐る恐る1口…。

「…美味しい!これ、本当に生の卵なのよね?…調理した卵よりも美味しいかも…。」

「この辺りで入手出来る物では最も高級品ですので。」

「生でこの味なら…普段食べているお肉の2倍くらいの値段はするんじゃ…」

「いえ、高級品とは言っても普段お嬢様が食べていらっしゃる牛肉の50分の1程度にも満たないような金額で購入できました。」

レイが自慢げに言うが、流石に嘘だろう。それだとわざわざ牛肉を買う意味が無くなってしまう!三食卵かけご飯で良くなってしまうではないか!

「それは嘘よ。」

「いいえ事実です。」

レイがレシートを見せつけて来る。驚愕。本当にありえないくらい安い。

「この辺りは物価が安いのかしら?」

「いいえ、標準的です。」

「私、この国に永住しようかしら。」

正直こんな物をこの値段で毎日食べられるなら、一生ここに住むのも悪くないかもしれない。

「ところで、ここは雪が降っているしかなり寒いけれど…何処なのかしら?」

卵に気を取られて聞くのを忘れていたが、此処は何処なのだろう。何度か北の方のもっと寒い国に何度か行ったが、ここまで綺麗に雪が降っていたのは初めてだ。

「此処は温帯に位置する島国です。」

「それは嘘よ。温帯の島国でこんなに雪が降るはずないでしょう?そのくらい私でも知っているわ。」

「いいえ事実です。ここは季節風の影響で雪がかなり多く降ります。」

「なるほど…?」

にわかには信じ難いが、レイが言うのだからそうなのだろう。

「で、この辺りにはどんなものがあるのかしら?」

「この地域は島の中でも北に位置する場所のようで、温泉が多くあります。」

温泉…?聞いた事の無い言葉だが、なんとなく良さそうな物だ。

「温泉というのは何かしら?」

「はい。温泉というのは…簡単に説明すると自然発生した大浴場です。」

「それは嘘ね。大浴場が自然発生する訳無いでしょう?」

これは今度こそ流石に嘘だろう。流石に大浴場は自然発生しない。

「いいえ事実です。ざっくり言いますと火山の熱で湧き水が熱せられるのです。」

またこれだ。世の中は信じられない事ばかりだ。

「…まあ、とりあえず行ってみましょうか。中々面白そうだしね。」

「はい。支度は既に済んでおります。お嬢様が食べ終わり次第、すぐ出発できます。」

相変わらず用意周到すぎる女だ。

「温泉には温泉卵、という物があるそうですよ。」

ほう。更に興味が湧いてきた。温泉と卵なんてなんの関係も無い。どんな料理なのか私には想像も付かない。

「それは楽しみね。」

急いで卵かけご飯を口にかき込む。邸宅が転移するようになってからと言うもの、どんどん食べ方が汚くなっているような気がする。

「よし、行きましょう。」

まだ口にご飯が入ったまま言う。

「お嬢様、口元にご飯粒が。」

レイが私の口元に付いた白米を指で取る。

「ねぇ、レイ?」

「何でしょう、お嬢様。」

レイが指についた米粒を食べてから聞く。

「…いえ、なんでもないわ。」

最近レイが従者以上の何かのように振舞ってくる気がするのだが…気の所為だろうか?

旅する邸宅と箱庭の二人

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