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うへぇあ……最近は涙脆くて困るよ…ありがとうございました!!表現とかも細かくて凄くてつまり凄いです!!
見るの遅くなった…続きありがとうございます! これはもうレトさんに墜ちましたね、はい、早く結婚してくださ((殴
⚠異世界パロ ⚠彼女さんが出てきます
ーーー
貴方に見合うお花
見つけてあげるね。
───────────
どんな花にするか、そう聞かれたとき。
俺は頭の中にある1つのイメージが浮かんでいた。
「彼女の機嫌がよくなる花」
脳内で考えていたことが口からぽつりと出てくる。
それを聞き逃さなかった店員さんは、まるで状況を全て理解したかのように一拍空けてから自慢げに眼鏡を上げた。
「はい。ありますよ。」
にこやかに答えられ顔を見なくても俺に気を使ってくれているのが分かった。
それよりもその人の発言に驚いた。
「あるん…ですか…?」
「はい。その人がどんな女性かは俺はあまり分かりませんが、想像で。」
へへと、照れ隠しのように頬をかく。
…さっきからこの人の行動が目に入って視線がどうしても向けられてしまう。
「では、とってきますね。」
「お、お願いします。」
カツカツと不思議な音が俺の雑念を消し去りその音と共に店の奥へと彼は戻っていった。
彼がいないうちに周りを見渡すと確かにここは花屋さんだ。
輝かしいが、どこか温かみのある大きなランプを眺める。
不思議だ。
なにもかも
こんなに小さな店なのに
興味しか湧かない。
洪水のようにドバドバと。
普段そんなことも思わないこともあり、凄く自分自身でも呆気にとられていた。
不意にふわりと隣から涼しげな、春のような匂いがした。
俺は少しそれに寒気を感じて香りがした方を見る。
そこには彼が一本の枝を持って立っていた。
「はい、これです。」
「え、はぁ…ありがとうございます…?」
スッと渡されたのは何も咲いてはいない枝。
これは…なんだ?
「香り、嗅いでみて下さい。」
俺は言われたとおりにすんすんとその枝の匂いを感じる。
あれ…これって…。
「さくらんぼの匂いが…」
「はい、正解です」
──────────────
どちらの言葉に反応したのかは分からない。
だが、急に季節が変わるように辺り一面が柔らかい桃色と、緑色の景色へとなった。
「は」
さっきの店内とちがいとても広く、本物の野原のようだった。
「…こっちです。」
店員さんが一本の太い木へと歩いて行く。
彼の足下へと目を向けると、花を踏まないようによたよたと歩いていた。
それが可笑しくて「ぷはっ」と笑いを零してしまった。
「…?なんで笑ってるんですか…?」
足は動かしたままで聞いてくる。
「えっと…優しいなって。」
「はぁ…?」
意味が分からないと言いたげな声を出して彼は、こけそうにくるりと回ってこちらを見た。
「よく分からないですが、ありがとうございます」
そのあどけなさが感じられる儚い表情が景色と相まって写真にでも納めたいと思った。
だけど、しっかりと自我を取り戻して後を着いていく。
ピタリと足が止まる。
「これですね。」
──────────────
その一つの大木にそっと手を触れて、彼は口を開く。
「枝。」
「へ?」
「枝をこの木に。」
俺は言われたとおりにやってみる。
すると、小さな光が漏れ出てくる。
その光が枝に咲き、花の原型を表した。
「桜…ですか?」
コクリと頷く。その瞬間お店へと戻った。
それも不思議だがそれよりも、彼が渡してきたのは桜。なんで桜…?
「桜はですね。花詞がちゃんとあるんですよ。」
「貴方の微笑み。優雅な女性。潔白。」
「他にもあるとは思いますが、俺…勉強不足で…すみません…。」
「え、いや、あの、ありがとうございます」
「え?」
咄嗟に言ったのがお礼。
だって、彼女にピッタリだった。
「す、凄いです…これ、彼女の為の花みたいです!」
きらきらと視線を向けると同時に俺は思い返した。
あの子のことを。
ーーー
「ね、キヨ。」
「ん?」
「紅茶、送られてきたよ!」
無邪気な笑顔というよりもやわらかい、その人らしい微笑みだった。
「そっか。飲む?」
「うん!」
その子は俺に勿体ないくらいの美人だった。
「可愛い」というより「美しい」のほうが何処か似合っている。
腰まで伸ばした桃色がかった白い髪の毛に鮮やかな青紫色のリボン。
垂れ目気味の薄い灰色の瞳、そして青が映える白のワンピース。
まさに、お嬢様。
何をしても優雅だった。
喧嘩も好まず活発な性格で愛想がいい。そして嘘もつかない。
これこそ非の打ち所がない女性。
俺も彼女のことを、愛している。
だけど、突然怒られた。
涙も目に溜めて。
その理由は彼女のいうことばっかりに従っていたかららしい。
「キヨの意見も聞かせてよ!」
そう怒られてしまった。
よく理由がわからなかった。
俺は俺の意思で彼女の言うことを聞いていたのだ。
それだけで…と思っていたら、追い出された。
ーーー
それで今…。
「はぁ…」
溜息をつくと、「相当お悩みですね」と一言。
「この店の花は花詞が宿るんです。」
「だから、そのお花にはさっき言った言葉が。」
「これを相手に渡すと想い、花詞がその方に届きますよ。」
淡々とその人は話を進める。
「簡潔に言うと」
「花詞、お売りしてます。」
彼のマフラーと俺のマントが言葉と一緒に揺れる。
「じゃ、じゃあ、買います…!あの…いくらですか?」
「では、笑って下さい」
「?な、なんでですか…?」
「それが…代金ですので。」
俺は桜が咲いた枝を片手にぎこちなく笑う。
「……もっと心をこめて下さい。」
店員さんはむすっと不機嫌な顔をしてマフラーに顔を埋める。
その顔が面白く感じて「ふっ」と思わず息が吐き出される。
「はい、いいですよ。」
「え?」
「さっきの、いい笑顔でした」
多分この人は天然気味だろう。
自分が笑いを引き出したことも知らずに。
「ありがとうございました。」
俺が告げると
彼は目を細めて言った。
「ご縁があれば、またお越し下さい。」
とくん
「………?」
俺は高鳴る胸と、その言葉に背中を押され、桜を握りしめ彼女の家へと向かった。
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彼女さんのことを書いてたら長くなってしまいました。
すいません(..;)