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ピキピキ!ピキピキピキピキ!!!
見たこともない少女が飛び出してきたかと思うと、素早く地面に向かって腰に据えている中型の剣を差し込んでそのまま両腕で力を押し込めるように体重をかけた。
ゴゴゴゴゴゴ!!!!
一気に室内に霧が立ち込めたかと思うと霧は霜に、植物は地面から天井へ駆け上がるように凍りついていく。
「はふつ、ぷはっ……。けほっけほっ……」
からだにまとわりついていた植物や口に突っ込まれていた植物もすぐに凍漬けになり、体の自由が解放されるヴァイオレッタ。
「…植物の動きがとまりましたの〜……。この植物、表面がすごくニガくて……ぺっ……!」
俺はヴァイオレッタを解放させすぐ抱き上げた。
「ごめんな、ヴァイオレッタもすぐ治癒魔法かけてやる。」
「リュージさん、わたくしはもっと酷い目にあってきましたの。こんなのどうってことないですわ!気にしないでくださいませ。」
「どんな目だよ…。」
これ以上酷い目って怖くて聞けねえよ。
「やられた!足が……!」
リリスは足を凍漬けにされ動けない。
カキン!!いい音を出しながら剣を抜き、鞘に納めた少女はコツコツと氷の上にブーツを鳴らしてリリスに近づいていく。
「だだだ、誰なのよアンタ!?」
寒いのが苦手なのか、リリスは縮こまってしまっていた。
「私はリッカ。リッカ・ブリザ・クロイツ。貴様、1番に私の気配を感じ取っていたな。」
「え?あっ……いや…あれはハッタリで言っただけでたまたまなんだけど。」
シーーーーン。
透き通るような空色の瞳に水に近い灰色のような幻想的な天然のショートボブの髪の毛。聞かなくても純血種特有の神々しさを纏った彼女。
雄々しいマントと、固そうな下着のような防具から露出している胸はヴァイオレッタにひけをとらない。そこには見たことのある紋章がついていた。
「雹龍レオパード。ーークロイツってアドバズニアの…国営龍騎士団の…。」
「……寒いのは嫌…こんなとこで……」
「…植物の気配に気を取られていたけど…。この子が私のケルベロスをくぐりぬけてたみたい……。ずっと怪しい気配がしていたけど場所を突き止められなかった。」
「レオパードは過酷な雪国を生きる戦闘民族だ。気配を消し相手に近づく訓練をほとんどのレオパードが受けていることをきいたことがある。」
「…だとしたらかなりの上級ね。それだけでは私には通用しない…。」
リッカは空中に氷のナイフを作り、リリスの首元にかけた。
「お前、ヴァイオレッタ嬢を殺すとかなんとか言ったな。私が貴様を捌いてやろうか。」
「…ヴァイオレッタとどういう関係?侵入者のくせに偉そうな………」
がくっ!
「リリス……?」
「…精霊龍のルーツは森属性。純血種であれば氷は相当厳しいよ。」
「…リリスを……早く解放しなければ…死んで…しまいます…」
「…事情聴取は大事。」
そう二人が呟いた瞬間、魔術がとけるように氷は溶け、氷焼けしたリリスはその場に倒れ込んだ。カグヤはすぐ駆けつけ、リリスの手を後ろで縛り目隠し救護班を呼ぶ。
「…しばらく大人しくしてもらおう。」
俺の方へツカツカと小走りに近寄ってくるリッカ。
ずんずん
ずんずんずん!!
「リユージ・シディウスノシス。メルティニアの第三王子、貴殿がヴァイオレッタ嬢の種馬か?」
た、種馬!!
「まぁ間違ってはないけど、ヴァイオレッタがここで働きたいつってるから、試験的に働かせてみてる1日目なんだけどな。」
にしても、酷い有様だわ。
「そうか。」
「こんな大惨事になっちまったけど……。どうやって侵入した?」
「私はヴァルヴレッド様の大ファンで追っかけをしているものだ。*たまたま*ついて行った場所でヴァルヴレッド様が結界に大穴を開けてしまった。その時に一緒に侵入したのだ。
ヴァイオレッタ嬢のことはついて行く前にヴァルヴレッド様がゴニョゴニョ独り言をずっと言ってたからおおよそ検討はついていたしな。」
「追っかけじゃねぇよ、ストーカーだよ。」
「貴殿にお願いがある。」
「なんだよ。」
「私にも子種をわけてほしい。」
「………は?」
「私もヴァイオレッタ嬢と同じがいい!」
食い気味!
「いや、ちょっとま……」
「ここだ!」
「王子!大丈夫ですか!」「なんだこれは!」
騒ぎを聞きつけた騎士団や第一、第二の離れた棟からメイド、執事がゾロゾロと食堂に人が集まってくる。
「また来る。助けてやったのだ、借りを作ったのだぞ?見逃せ。」
「おおい、一方的だな!侵入者!」
リッカは騒ぎに駆けつけたメイド達の人混みの中に自ら入っていき、一気に姿を眩ませてしまった。