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第5話手紙
少し血のついたボロボロのサンダルだけ履いて、鳥居をくぐる
琉生はただ前だけを見ていた
あんなに入るのも躊躇われた草むらも、サンダルで走り込む
(本当に成長したね、)
と、嬉しくもありつつ淋しくもある
もう君はこの手のなかに収まらないくらい大きくなった
私は背を追うばかり
横に並んで今も歩きたかった
でも、君は見えていないと思うけど
私はずっとここにいるよ、ずっと側にいるから
安心して、泣かないで
苦しそうにしないで
大丈夫だよ
私はもう大丈夫、痛くもないし辛くもない
君の側に少しでもいられたから
満足したよ
もうたくさんだ、お腹いっぱいだよ、w
みんなの感情が流れ込んでくるようで、見ていて苦しい
でも、この現実から目を逸らすのは駄目だと思って
ずっと側にいたよ
私に起こったこの奇妙な現象は、恐らく私の心残りだろう
(琉生はちゃんとしているかな)
(涼は元気にしてるかな)
(クラスのみんなは笑顔で居られてるかな)
そんな沢山の後悔と、疑念、心残りが形になった
本当は私はここに居ちゃいけない
もうここにはいない人なんだ
わかってはいた、でもわからないフリをしていた
わかってしまったらもうここにはいられない気がして
琉生が私の書き残した手紙を見つける
あれは、夏休みの星空撮影会の次の日
夏祭りがあった日に、お父さんに無理を言って一緒に来てもらった
あのときはまだ死ぬなんて思ってなかったから、
手紙にはまた来年も_
なんて幻を書いたよ
もう来年なんて来ないのに
______________________
星空撮影会の翌日
私はあの恐怖体験から、少し夜が怖くなった
でもみんなには悟られたくない
いつもみたいに元気にいたかった
だからお父さんに無理を言ってでも夏祭りに行った
{んじゃ、母さんいってくるな}
〈行ってきます、!〉
《いってらっしゃーい!》
《気をつけてよね?》
と、疑いの目で見てくる
〈大丈夫だってーw〉
笑ってはいたが、心無しか恐怖が混じってる
さすがにトラウマになったか…?とも思ったが、外に出て歩き出したらそこまで気にしなくなっていた
〈お父さんよかったの?付いてきてもらって、〉
{可愛い娘がトラウマになったかもって言ってんだぞ、ついていくに決まってんだろー?}
いつになくにかっと笑う
いつまでも元気な50代だ
〈お父さん…〉
〈そういうかっこいい言葉言うなら、その両手と顔どうにかして?〉
私の目の前で立っているお父さんは、両手をこちらへ広げてきて、ハグを求めているようだ
それに加え、顔は満遍の笑み
そういう事言うならキリッとしてたほうがかっこいいよと、伝授
いつもはあまり話さないお父さんと話し続け、いつのまにか草むらの奥の丘についていた
{で、何を植えるんだ?}
お父さんが聞いてくる
さっき話してる途中で、今日は何をしにここへ来たのかを説明した
夏休みに琉生たちとこの丘に花を植えたいと話していた
が、なかなか都合が合わず植えることすらできなかった
本当は3人で植えたかった
でも今私が植えて今度またここへ来た時に綺麗だねって楽しそうに話すことを願って、ここに来た
〈うーん、それが考えてないんだよねーw〉
{え、今から植えるのに?}
戸惑いの表情
さすがのお父さんも驚いている
{種はもう買いに行けないしな…}
〈…あっ、じゃああれを植えようよ!〉
私が指差したのは、林の少し奥に生えている咲けていないたんぽぽ
あそこの土に栄養がないのか蕾はまだ開いていない
{えっ、あのたんぽぽをか、?}
{たんぽぽなんてどこにでもあるだろ、わざわざ植え替えなくても…}
〈はあぁ…、お父さんはわかってないね!〉
理解していないのか、きょとんとしているお父さんに喝を入れる
〈あのたんぽぽは栄養がなくて咲けてないだけ〉
〈栄養がある元気な土に植え替えてあげたら、きれいに咲き誇れるでしょ?〉
と、お父さんに語る
今は咲けてなくても、いつかいつかきっと綺麗に咲くから
蕾のまま終わるなんて可哀想だと思う…
自分の考えだが
{なるほどな}
私の説明を聞いて納得したかのように笑顔が戻る
私達は、家から持ってきたスコップでたんぽぽを慎重に植え替える
この時は琉生宛に手紙なんて書こうとは思っていなかった
もしこれが涼に宛てた手紙なら、私は堂々と口で伝えただろう
でも琉生となるとどうも私はおかしい
口が窄んでうまく言葉が作れない
いつもは元気に振る舞って取り繕っているけれど、結構一杯一杯なんだ
伝えたいけど、伝えたくないこの気持ち
いつからかはわからない
もしかしたら最初からなのかもしれない
でもこの気持ちを伝えてしまったら、何かが崩れてしまう気がして、言えなかった
言ってしまうのが怖くて、手紙に綴るという卑怯な手段を使った
便箋は私の鞄に入っていた無地の紙
封筒なんかない
そんな雑な手紙でも、伝わればそれでいい
綺麗じゃなくていい
卑怯な手段でも、私は伝えるって決めたんだ
{書けたかい?}
お父さんが覗き込んでくる
〈見ないでよー!〉
ばっと、手紙を手で隠すように覆う
{ごめんごめんw}
むーっと、不満気な顔をしつつ続きを書く
そう、この時は私が死ぬなんて思ってなかったから
今度は、とか来年は、とか未来の話をしていたね
…もういつかなんて言葉私には使えないのに
{さ、帰ろうか}
うん、と返事をする時にはもう夜の恐怖などなくなっていた
そして二人で鳥居をくぐって帰路についた
この時を琉生が見ていたなんて知らなかった
あの喧嘩の理由さえも知らなかったから、何も弁明できなかった
申し訳ない気持ちの反面なんで喧嘩になったのか、気になる気持ちもある
もしかしたら、ってありえない夢を抱いてる
いつか聞こうとしていた
文化祭の時にでも聞き出そうとした
でも今になってはもう確認のしようもない
本当に、いつかいつかって先延ばしにしすぎた
ゆっくり、ゆっくりでいいっていつまでも思っていたかった
嫌だよ、信じたくない
私にこの先の未来が、琉生といる未来がないなんて
この時は考えもしなかった
この当たり前の幸せが、ずっと続くと思ってた
明日があって当たり前
いつかおじいちゃんおばあちゃんになるのが当たり前
ずっと待っててくれる人がいて当たり前
そんな当たり前が、私にはもうなくなっちゃった
もっと早くこの当たり前なんてない幸せに気づけてたら、どれほど幸せだっただろう
毎日毎日を全力で過ごして、悔いの残らないようにして
そうしたら、今もこんなふうに幽霊になってでも現世にはいなかっただろうな
〈本当に私は愚かだ…〉
泣き笑い
醜い私に、愚かな私に
私の手紙を持った琉生は、次々と私の綴った恥ずかしい言葉を読んでいく
本当に少し、いや大分恥ずかしい
ここに私はいないものとして書いたものだから
読み終えたのか手紙を膝の上に置き、ぼろぼろと泣き始める
「……っ…、」
「そっかぁ…っ、そっかぁっ…、」
独り言を喋りながら
「…ゆ、うか…っ、」
「もっとっ、もっとっ…早くに言っていればよかったっ…」
「意地なんか張らずに、早く名前で呼んでいればよかったっ…!」
「本当に、僕は最低だ…っ…」
最低なのは私もだよ
私もいつかいつかって、先延ばしにしすぎた
私たちは似ているよ
どちらも完璧に見えて欠けている
心の何処かで言いたくても言えないことがある
本当に、私と君は似ているよ
座り込んだまま空を見上げる琉生
「僕も、とっくに君のことが大好きだったよ」
「夕華…、」
ずっとずっと聞きたかった言葉
やっと聞けた
「君に、直接…言えたらよかったなぁ…っ、」
「もっと…っ、声を聞きたかったなぁ…」
大丈夫、君は直接言ってくれたよ
君から私は見えないと思うけど、ここにいるから
私ももっと琉生と話をしたかった
もっと琉生と他愛のないことで笑いたかった
〈本当に未練たらたらじゃん私…っ、〉
こんな我儘で傲慢な私
それでも好きになれた人がいた
本当は私以外見ないでほしい
でも、私はもうここにはいないから
ずっと君の幸せを願ってるよ
「またね、夕華…」
〈またね、琉生…〉
そう言う琉生ほ背中を見送った
先程までは気にもしなかった星々が、何故か異様に明るく感じられた
ちょっと短いけど、次で終わりにしたいです…!w
まあ、回想のストーリーだからねw
あとは、ifの物語とか書けたらいいなって思ってます!
最後も楽しみにしててね〜!
次回第6話➾いつかまた