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「すっかり遅くなっちゃったな……」
10月31日の夜。仮装をした人たちが練り歩く街を、私は一目散に家へ向かっていた。時刻は20時。本当は18時に帰れる予定だったのに、上司からの頼まれ事を片付けているうちにこんな時間になってしまった。
「照くん、怒ってないといいんだけど……」
彼氏である照くんに、今日遅くなってしまうことを伝えられていなかった。さっき送った謝罪のメッセージも、既読がついたまま返ってきていない。
不安な気持ちが増していく中、とうとう家に着いた。部屋の電気がついているため、照くんはまだ家に居てくれているみたいだ。
「ただいま……」
恐る恐る中に入りリビングを覗くと、ハロウィンの様々な飾り付けで賑わっている部屋の隅で、小さく丸まっている彼の姿が。
「……ごめん、照くん。仕事長引いちゃって……」
私が声をかけると、彼は顔を少しだけこちらに向けた。
💛「……遅い」
完全に拗ねモードに入ってしまっているようだ。こんな時の彼の機嫌を治すのは大変なのだが、今日はちょうど駅前のケーキ屋さんで彼の好物を買って来ていた。遅くなったお詫び。決して物で釣ろうとした訳では無い。
「遅くなったお詫びに、駅前のケーキ屋さんでハロウィン限定のチョコケーキ買って来たの……これで許してくれないかな?」
💛「え、チョコケーキ……?」
彼は驚いた表情で勢いよく立ち上がり、キッチンへ向かった。戻ってきた彼が手にしていたのは……
「あれ?!同じケーキ屋さんの……!」
💛「俺も夕方に買ってきてたの、限定チョコケーキ」
そして顔を見合わせて、同時に笑い出す私たち。
💛「なんだ、考えてること一緒じゃん」
「ほんとにね!……ごめんね、約束してたのに遅くなっちゃって」
💛「うん、まあ大丈夫。パーティーのこと忘れちゃったかと思って辛かったんだけど……」
「忘れるわけないよ!」
照くんの言葉を遮って言った私の言葉に、彼はニコリと笑う。
💛「うん、ありがとね。俺も、既読無視しちゃってごめん」
「ううん、大丈夫だよ。それじゃあ……パーティー始める?」
💛「うん、そうしよう!俺、実は今日晩ご飯作ってみたんだ」
「え!そうなの?楽しみだなぁ」
彼が作ってくれたご飯と、二人で食べるには多すぎる二つのホールケーキ。普段は甘すぎると感じるケーキも、今日は程よい甘さのように思えた。