🖤「初めまして、お嬢さん」
顔を上げると、目の前にはすごく顔の整った男の子がいてびっくりする。昨日は仕事から帰って来た後、すぐにベッドで寝たはずなんだけど……私なんでこんなところにいるの?ここ、どこ?彼は誰?
戸惑ってキョロキョロしている私を置いて、目の前の男の子は続ける。
🖤「僕は東の国の王子、レン。どうしたの、そんな浮かない顔して……」
喋ろうと思っても、口がパクパクするだけで声が出てこない。な、なんで……?!
🖤「……大丈夫?あ、そうだ。良かったらさ、俺と一緒に東の国に来てくれない?もしかしたら……」
🧡「ちょっと待ってや、レン!一人で勝手に話進めんとってよ〜」
え、誰誰?!どこからともなく聞こえてきた、関西弁で喋る男の子の声。
🧡「ごめんなぁ、勝手に話進めて。怖かったやろ?大丈夫やでぇ」
声の主である男の子は、近くの草むらから出てくると私の頭を撫でながら優しく声をかけてくれる。……いや、怖かったやろと言われてもあなたも初対面だから変わらないんですけど!
🧡「俺はな、西の国の王子、コージ!王子とコージって似てるやろ?実はなぁ、『あなた迎えに行く王子・コージ』やねんで〜!」
……西の国だから関西弁なのだろうか。とはいえ、一人でずっと喋り続けているため、どう反応していいのか分からない。そんなことを考えているうちに困った表情になっていたようで、レンさんが私の表情に気づきコージさんに伝えてくれた。
🖤「ちょ、コージ。余計に困っちゃってるから……」
🧡「あ、ほんまや。つい喋りすぎてもうたわ」
手で口を抑えて、しまったという表情を浮かべるコージさん。二人の柔らかい空気に怖さが少し薄まってきたかなと感じていると。
💚「ねぇちょっと!二人とも何してるの〜?!」
突然、近くの草むらから声が聞こえてきて三人一斉にそっちを振り向く。
🖤「あ、やべ」
草をかき分けてやってきたのは、優しい雰囲気をまとった男の子。
💚「早く王様の指輪見つけないと怒られちゃうよ……って、わぁ!どうしたのその女の子」
二人に向かって怒っていたその子は、私の姿を見ると目を真ん丸にして固まっている。
🧡「なんかな、気づいたらここにおってん」
🖤「どこから来たかとかいろいろ聞きたいんだけど、声が出せないみたいで……」
💚「え、そうなの?それは困ったな……あ、そうだ。自己紹介まだだったね。僕は南の国の王子、リョーヘイ。よろしくね」
少し考える素振りを見せた後、爽やかな笑顔で名前を教えてくれた。その後は、しばらく三人で何かをコソコソ話していた。
🖤「……それにしても、あの子ほんとかわいいよね」
🧡「ほんまな!俺のお姫様にしたいわぁ……」
💚「ちょ、何言ってんの!抜け駆けは禁止だよー?」
少し聞こえてきた会話の内容に思わず顔を赤くする。え、なになに!?私をお姫様に!?
💚「あーというか、こんなこと話すよりも先に!王様の指輪を……!」
🩷「あったぁぁぁ!!!」
リョーヘイさんが慌てて草むらに戻ろうとした時。三人とはまた別の男の子の叫び声がして、私はまた驚いた。
🖤「え、ダイスケ?」
🩷「どーだ!俺が見つけたぞ、王様の指輪ぁ!!」
🧡「マジかぁ、そんなすぐ見つかるとは……油断しとった」
🩷「へっへーん!俺にかかればこれくらい余裕だぜ……って、誰この子!かわいい〜!」
指輪発見時と変わらないテンションで、三人と一緒にいた私に声をかけてくる。
💚「いつの間にかここにいたんだって。レンとコージが見つけてくれて……」
🩷「へぇ、そうなんだ!俺は北の国の王子、ダイスケ!」
私が会釈をすると、彼はさっきまでの元気さとはうらはらに丁寧なお辞儀を返してくれた。そういう細かいところから、この人たちはやはり本物の王子様なんだなと感じる。
……いやそれにしてもここどこなの?!
🖤「ねぇ君、この後どうするつもりなの?」
どうするつもり、と言われても……
🧡「どうするも何も、喋られへんし行く当てもないんやろ?」
コージさんの言葉に、全力でうんうんと頷く。するとコージさんは私に近づいてきて、耳元で囁いた。
🧡「なら……俺のお姫様になってくれへん?」
……へっ?!
💚「あ、コージ!抜け駆け禁止って言ったじゃん!」
すると、レンさんも私に近づいてくる。
🖤「……悩んでるの?お嬢さん。それならさ、さっきも言ったけど、俺と一緒に東の国に行こうよ。絶対に君を幸せにするから」
💚「ちょ、レンまで……!」
🩷「にゃは!みんな急にスイッチ入るじゃーん。ズルいねぇ全く」
ニコニコとして楽しそうなダイスケさんと、レンさんとコージさんの行動に慌てているリョーヘイさん。
どうすればいいのか分からずにまた戸惑っていると、ダイスケさんとリョーヘイさんが顔を見合わせ、私の方に向き直った。
🩷「……お嬢さん。俺と一緒に、笑顔の絶えない人生を歩んでいきませんか?」
💚「ねえ。僕のこの身、貴女だけに捧げるって約束するよ。どんなものからも君を守ってみせるから……僕の隣に、いてくれない?」
二人は声のトーンを変えて、順番にそう言った。
……なになになに?!なんで私こんなことになってるの?なんでここに来たかも分からないし、声も全然出せなくなってるのに、4人の王子様から……
🧡「他の人には、渡したくないんよね」
🖤「後悔は絶対させないから」
🩷「俺のこの気持ちは譲れないの」
💚「命に代えても守り抜いてみせるよ」
🧡🖤🩷💚『さあ、おいで?』
えっと、私、ど、どうすればいいのー!?