テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#親友
*椥守蕊月*
219
~♡Տᗩᑎᗩ♡~
29
## あの子なら大丈夫
季節が変わるたびに、ひなたの周りには人が集まった。
ひなたがいると、空気が明るくなる。
誰かが落ち込んでいたら、ひなたが声をかける。
誰かが喧嘩をしたら、ひなたが間に入る。
いつの間にか、みんなの中でひなたはそういう存在になっていた。
「ひなたがいるなら大丈夫」
「ひなたに相談すれば何とかなるよ」
そんな言葉が増えていった。
ひなたは笑った。
「そんなことないって」
そう言いながらも、少し嬉しかった。
誰かに必要とされている気がしたから。
でも、ある日。
なつきは気づいた。
昔のひなたなら、もっとくだらないことで怒っていた。
「なつき、それずるい!」
「知らない」
「絶対今笑った!」
「笑ってない」
「笑った!」
そんなことで本気で言い合っていた。
なのに最近のひなたは、
「まあいいじゃん」
と言って笑うことが増えた。
「ひなた」
「ん?」
「最近、怒らなくなった?」
「え?」
「前なら絶対文句言ってたじゃん」
ひなたは少し考える。
そして笑った。
「だって怒ってもしょうがないじゃん」
「……」
「それより笑ってた方が楽しいでしょ?」
なつきは、その言葉に少し違和感を覚えた。
でも、すぐに消えた。
ひなたが笑っていたから。
「お前、本当に変わったな」
「いい意味?」
「……たぶん」
「たぶんって何!」
いつものようにふざける。
いつものように笑う。
だから、なつきはそれ以上考えなかった。
ひなたは、人の変化にはすぐ気づいた。
友達が少し元気がないこと。
誰かが無理して笑っていること。
小さな違和感にも気づいた。
でも、自分のことになると分からなかった。
いや。
分かっていたのかもしれない。
ただ、見ないようにしていた。
「ひなたって悩みなさそう」
「いつも楽しそう」
「ひなたは強いよね」
その言葉を聞くたびに、
ひなたは少しずつ思うようになった。
――そう見えてるなら、そうでいなきゃ。
誰かが安心するなら。
誰かが笑えるなら。
自分が少し我慢するだけなら。
大丈夫。
その言葉は、最初はひなた自身を支えるものだった。
でもいつの間にか。
ひなたを縛るものになっていた。
ある日、なつきと二人で歩いていた。
夕方の帰り道。
「なつき」
「ん?」
「私ってさ」
「何」
「いい子なのかな」
突然の言葉に、なつきは目を丸くする。
「何それ」
「いや、なんとなく」
「ひなたが?」
「うん」
なつきは少し考える。
そして笑った。
「いい子だろ」
「即答じゃん」
「だってそうじゃん」
「……そっか」
ひなたは笑った。
その笑顔を見て、なつきは安心した。
やっぱりひなたは大丈夫だ。
そう思った。
でも、その時ひなたが欲しかった答えは、
「いい子だよ」
じゃなかったのかもしれない。
「無理しなくていい」
「疲れてもいい」
「大丈夫じゃなくてもいい」
本当は、そんな言葉だったのかもしれない。
だけど二人とも知らなかった。
ひなたがずっと欲しかった言葉を。
なつきが最後まで言えなかったことを。
コメント
1件
うわ、これ……めっちゃ刺さったわ。ひなた、周りを明るくする存在でいることに必死で、自分のことは後回しにしてる感じが伝わってきて胸が苦しくなった。「いい子だよ」って言われるより「無理しなくていい」って言ってほしかったんだろうな……最後のなつきが言えなかったっていう描写、切なすぎる。連載中なら続きが気になるし、このままじゃひなたがいつか壊れそうで怖い😢