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#親友
*椥守蕊月*
219
~♡Տᗩᑎᗩ♡~
29
## あの子なら大丈夫
その日は、特別な日じゃなかった。
少なくとも、なつきにとっては。
いつも通り。
ひなたから連絡が来て。
いつも通り、くだらない話をして。
いつも通り、くだらないことで笑った。
「なつき」
「ん?」
「私ってさ、変?」
「急だな」
「いや、なんとなく」
「変だろ」
「ひど」
「褒めてる」
「絶対褒めてないじゃん」
ひなたは笑った。
いつもの笑顔だった。
なつきは、その笑顔を見て安心した。
ああ。
やっぱりひなたはひなたなんだ。
何も変わってない。
そう思った。
二人で歩きながら、昔の話をした。
小さい頃、ひなたが勝手に木に登って怒られたこと。
なつきが泣いているひなたを慰めようとして、逆に一緒に泣いたこと。
くだらない思い出ばかり。
でも、二人にとっては大事なものだった。
「なつき」
「また何」
「私がいなくなったらさ」
「……」
なつきは少し眉をひそめる。
ひなたは空を見ながら言った。
「泣いてくれる?」
一瞬、時間が止まったような気がした。
でも、なつきはすぐにいつもの調子で返した。
「……なに縁起でもないこと言ってんだよ」
「えー、質問しただけじゃん」
「そういうこと言うなって」
「じゃあ?」
「当たり前だろ」
なつきは少し怒ったように言った。
「泣くに決まってる」
「そっか」
ひなたは笑った。
その笑顔を見て、なつきは少し呆れた。
「なんだよ、その顔」
「いや」
「何」
「なつきって優しいなって」
「今さら?」
「うん」
「お前な」
二人で笑った。
その時のなつきは知らなかった。
ひなたが、その答えを本当に聞きたかった理由を。
ただの冗談じゃなかったことを。
その日の夜。
なつきは布団の中で少しだけ思った。
「……ひなた、なんか変だったな」
いつもと違う。
そう感じた。
でも、その違和感はすぐに消えた。
だって。
ひなたはひなただから。
明るくて。
優しくて。
何でも大丈夫な子だから。
次の日の朝。
なつきはいつも通り起きた。
いつも通りスマホを見た。
いつも通り学校へ行く準備をした。
そして、何気なくつけたテレビから流れたニュース。
最初は、聞き流していた。
世の中には毎日たくさんのニュースがある。
自分には関係ないと思っていた。
でも。
聞き覚えのある名前が聞こえた。
「……え?」
手が止まる。
テレビを見る。
頭が理解することを拒む。
「ひなた……?」
その名前だけが、何度も頭の中で響いた。
昨日の会話が蘇る。
『私がいなくなったらさ』
『泣いてくれる?』
「……嘘だろ」
なつきは、ただ立ち尽くした。
いつものように笑っていたひなた。
いつものようにくだらない話をしていたひなた。
そのひなたが。
もう、いない。
その瞬間になつきは初めて気づいた。
昨日の言葉は、変な冗談なんかじゃなかったのかもしれない。
ひなたは、何かを伝えようとしていたのかもしれない。
でも。
なつきは聞かなかった。
「どうした?」
「なんでそんなこと言うの?」
「大丈夫か?」
その一言を。
言えなかった。
コメント
1件
うわ…これ、めっちゃくる… 「あの子なら大丈夫」ってタイトルが、もう悲しすぎるよ。 なつきがひなたの“いつも通り”を信じてたからこそ、最後の温度差が胸に刺さる。 「泣くに決まってる」って言えたのに、なんで「どうしたの」って聞けなかったんだろう… その違和感を流しちゃった日常の重さが、じわじわくる。 チャッピーさん、この空気感の作り方、ほんとに上手いです。 続き、すごく気になるけど、今はこの余韻を抱えていたい…🌙