テラーノベル
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いつからか長義が笑わなくなってしまった。私が声をかけても、「あぁ」「そうか」「ありがとう」などと簡素な返事しか返されなくなった。私の初期刀である国広は、「俺たちが付き合っているのを知って気まずいんだろう。少し放っておけばいつもの調子を取り戻すはずだ。」と言っていた。私はそれを聞いて、確かに普段から話すことの多かった私と国広が付き合っている、というのは長義にとっては意心地が悪いんだろう。そう思うと気持ちが楽になった。簡素な返事しか返さなくなったのもきっと動揺しているからだろう。と自分の中で結論づけた。少し引っかかるところもあるが、初期刀である国広が言うならきっと間違いない。
この判断が間違いだと気づくのは長義の様子が本格的におかしくなってからだった。
それからというもの長義は書類仕事を毎日過剰な程するようになった。私が「もうやめよう、ね?」と言っても長義は「いや、まだ大丈夫だ」と言う。それからみるみる長義はやつれていった。目の下には濃い隈が現れ、顔色は今にも死にそうだった。そんな状態が見ていられなくった 他の刀剣達からもうやめてくれと言われても「まだやれる」と覇気のない声で言うのだ。1度無理やり止めようとしたこともあったが、その度に「すまない」と泣きそうな顔で謝ってくる。謝るくらいならやめてくれと何度もお願いをしたが、それでもやめてくれなかった。その数日後にいい加減無理にでもやめさせようと思った私はいつも長義が書類仕事をしている部屋へ向かった。するとそこには死んだように眠る長義の姿があった。どうやら突然倒れた長義に国広がタオルケットをかけてあげたらしい。そんな優しい国広がやっぱり好きだなぁ、と頭の中で惚気をかましつつ、長義が早く元気になってくれますように…。と静かに願い事をした。
それから数日後に長義が突然やってきたと思ったら、こんなことを言い出した。
「主、俺に出陣をさせてくれ」と。
勿論私は反対だった。数日前まであんなにも狂ったように書類仕事をしていたのだ。きっと精神的にも肉体的にも疲れているのに出陣はさせられないと私は言ったのだが、それでも長義は「そんなことは分かっている。」と言った上で「だが、それでも出陣されてくれと言ったんだ。」と長義は言った。そこで今日の近侍であった国広がため息をつきつつ、「滅多に勝手なことを言わない本歌のことなんだ。きっと大事なことなんだろう」と言ってきた。それを言われると私は何も言えなくなづてしまう。
私は覚悟を決め、「分かった。ただし、一つだけ約束して。少しでも怪我を負ったらすぐに帰還すること」
長義は少し驚いた顔をした後に「分かった。」と返事をした。
私は後にこの判断を後悔することになる。
まさか、長義が折れることになるなんて…
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