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星崎視点
自殺未遂騒動を起こしたために、
僕は病院のベッドにいた。
入院して今日で3日目だった。
さすがに退屈すぎるため買うだけ買って、
そのままになっていたUNOで遊びたいと、
少しだけワガママを言ってみた。
どんな反応をされるか分からないため、
言う時は緊張した。
すると予想外の返答をされた。
「いいじゃん。
善は急げだ!
アパートの鍵貸して?」
そういえば今は家にあるのかと思い出し、
素直に鍵を渡す。
「え⋯ずるい!
優里くんだけ行くの?」
深瀬さんはやや不満そうだった。
そう言うところがなんか、
ちょっと可愛いなと思って、
少し笑う。
「瑠璃夜を一人にできないだろ」
急に真面目なトーンと真顔でそう言う優里さんに、
僕はドキッとする。
優里さんの優しい言葉が、
僕の荒んだ心に沁みていく。
そしてそのまま病室を出て、
アパートにUNOをとりに行ってくれた。
優里さんは10数分で戻ってきた。
「ん〜どうしよう?
普通にやってもつまらないからな。
何か特別条件つけたいな」
何となくの思いつきでそう呟いてみた。
するとそれに深瀬さんが反応した。
「たっくんってUNO初めてだったりする?」
「全くルールがわかりません。
何ならハンデとか罰ゲームとかつけますか?」
軽い冗談のつもりでそう言ったのだが、
優里さんと深瀬さんの二人が罰ゲームという言葉で、
何故か嬉しそうな顔でニヤニヤする。
(あ⋯なんかヤバい顔してる。
これは口が滑ったな)
後悔しても遅く、
結局は言い出しっぺだからと言い負かされて、
全部で3回戦行って3回とも負けたら、
勝者の言うことを一つきくという条件になった。
「そんじゃいくぞー」
「はい」
「楽しみ〜」
丸一日目を覚まさなかったせいか個室にいるため、
少し騒いでも問題はなかった。
1回戦。
僕は惨敗した。
気を取り直そう。
もう一度だ。
次で巻き返せるはずだ。
僕はそう意気込んだものの2回戦目も、
同じく僕の負けだった。
優里さんに教わったルールで遊んでいるはずなのに、
何故か僕は勝てなかった。
コンコンッ
そのタイミングで誰かが訪ねてきた。
誰だろう?
「どうぞー」
軽い口調で返すと大森さんが入ってきた。
え?
何で?
別に会いたくないわけではないが、
どうしても理由が分からなかった。
何と声をかければいいのか迷って、
押し黙る僕をみかねて、
優里さんが明るく茶化す。
「このままだとストレート負け確定だぞ」
「二人とも加減なしで強すぎ!
ハンデないなんて聞いてないですよ」
「だってあんなこと言われちゃったら、
本気出しちゃうでしょ」
このやろう!
2人とも策士か!
完全に嵌められたと思った時には遅かった。
結局僕は先輩方にうまく乗せてられるだけ乗せられて、
ボロ負けした。
「くっそー!
なんかめっちゃ悔しい!」
絶対に変な罰ゲームやらされるんだろうなと、
覚悟しつつもやはり、
悪態をつきたくなる。
そんな僕の様子を見ながら、
優里さんはどこか満足気に笑う。
何その笑顔?
普通に怖いわ!
「今年の誕生日は丸一日俺と一緒に過ごすこと」
へ?
それだけ?
なんか意外と普通だな。
まあそれくらいなら大丈夫か。
「いいですよ」
「っ!?」
僕は即座にそう返事をすると、
何故か大森さんは嫌そうな顔をした。
何でだ?
断って欲しかったのだろうか?
やっぱりよく分からない人だなと思う。
「じゃあ俺は欲しいものをプレゼントしたい」
深瀬さんも優里さんと同じで、
無茶苦茶な要求はしてこなかった。
そのことに安心したが、
少し困る。
(欲しいものか)
今は取り急ぎ特に何かなかった。
せっかくの厚意だから、
特にありませんと突っぱねるわけにはいかない。
どうしよう?
僕が迷っていることに気づいたのか、
優里さんが聞いてきた。
「タブレットあるか?」
「はい」
僕は仕事用にタブレットと、
プライベート用にスマホの2台持ちをしていた。
そのため何の警戒もなく優里さんに渡してしまった。
するとタブレットを操作して、
何かを探し始める素振りを見せた。
ん?
何をしているんだろ?
「Amazonってよく使う?」
「そうですね。
ギターピックとか弦とか消耗品の類はよく利用します」
その後もよく分からない質問をいくつかされた。
流石に深瀬さんも気になったのか、
画面を覗き込んだ。
僕の位置からは真逆のため何も見えない。
「じゃあ最後にこれは?」
「あっ!!」
Amazonの欲しいものリストに入っている、
一番古い商品が映し出されていた。
僕の好きな画家で「それ」はとても高価な画集だった。
The Art Of Lassen: The Secret Path(ハードカバー付き)26,108円とある。
中々スッとは手が出ない金額のため、
僕が欲しくてもずっと買えずにいたものだった。
優里さんはどうやってそこに辿り着いたのか、
何故か見つけ出したようだった。
「⋯⋯当たりだな。
深瀬これだ」
嘘だろう?
何でわかったんだ?
僕の顔色で気づかれたらしく、
深瀬さんにそう優里さんがけしかけた。
「よし!
じゃあ注文するね♪」
「⋯⋯⋯⋯は?」
いやいや、
何言ってるの?
2万越えの画集だよ?
そんなもの先輩に買わせられるか!
「ふーさん!
本気にしなくていいですからね!?」
慣れた手つきで深瀬さんの指は素早く、
何やら打ち込んでいく。
まさか?
本気で買う気なのだろうか?
数分で嬉しそうに、
深瀬さんからスマホの画面を見せられた。
ご注文有難うございます。
と言うメッセージと荷物の到着予定日が表示されていた。
「⋯⋯⋯⋯⋯終わった」
「瑠璃夜は絶対に欲しいもの言わないからな。
7年もいたら好みの系統なんか見れば分かるんだよ」
優里さんは得意げにそう言い放った。
やはり優里さんは、
恐るべき勘の良さを持った人だな実感した。
UNOで打ち負かされ、
欲しかった画集まであっさり見破られ、
もはや優里さんに叶うものは何一つないと確信した。
それに副社長にされた枕営業、
盗撮被害などの嫌なことが全部、
優里さんの優しさで上書きされていくような気がした。
パタンッ
え?
大森さんは僕らのやりとりを聞いて、
何も言わずに出て行った。
(本当に何をしにきたんだろうか?)
雫騎の雑談コーナー
はい!
たまにはこういうマイルド?
ほのぼの系?
そんなのがある方が読みやすいですよね?
⋯⋯⋯⋯⋯多分。
そんじゃ本編っす!
優里さんはただ勘がいいだけじゃなく、
星崎が好きだから自分の好意に気づいてもらうために、
好みの系統をしっかりと覚えているんです。
でも星崎は察知能力が高い人としか思っておらず、
大森さんの好意だけではなく、
優里さんの好意もぜーんぜん!
伝わってないんですね。
今作でもただただ優里さんが『紳士!』なところを書きたくてこうなりました。
でも大森さんからしたらね、
優里さんと深瀬さんのイチャイチャを見せつけられたら、
何もいえないし、
複雑ですよね。
ということで♡もねついに、
600(2025.03.19付)を超えてきましたし、
これからも精進して書き続けますわ!
ではでは〜