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前半巫女視点で書いてみました!! それとすみません、今回ちょっと長いかもです…。
目が覚めると、そこは見覚えのない場所だった。
状況を確認すると、私は何者かによってやたらと大きな乗り物の中で椅子に座らせられているようだった。拘束はされていないから、手荒な事をする気はないのだろう。
さて、どうしたものか…。
そうして、周りを見回していると、馴染みのある顔が横で寝ていた。いつも私の身の周りの世話をしている彼だ。そういえば、最後に一緒にいたのは彼だったはずだ…。
まさか彼が……だとしたら何のために?
そんなことを考えていたら、彼が起きたようだった。
「んん………あ!おはようございます。突然知らないところに居て混乱しましたよね。起こしてくだされば良かったのに…。」
「よく寝ていたものですから。ところで、ここはどこでしょう?ここに私を連れてきたのはあなたですか?」
「はい。無理矢理で申し訳ございません。ここは電車という乗り物の中です。」
「どうしてこのような事をなさったのでしょうか?」
そう尋ねると、彼は「落ち着いて聞いてください。」と言った後にゆっくりと話し始めた。
「……僕は明日、あなたを殺さねばなりません。しかし、あなたは覚えていないかもしれませんが、僕はあなたが巫女になる前まで、あなたの双子の弟でした。いつ捨てられるか分からないという恐怖の中、あなただけが心の支えでした。これは僕の我儘だってことも分かっています…。でも、僕にはあなたしかいないんです……。だからどうか…、死なないでください。ご自分の命を大切にしてください…。」
彼は、縋るような、懇願ような目でそう言った。
私はなんて残酷な事をしてきたのだろう。しかし、今全てを無に返してしまえば、彼はどうなるか…。
そんなことを考えていると、彼は再び話し始めた。
「忘れてしまっていても構いません。でも、あなたと過ごした日々を、無かったことにはしたくないんです…。」
「……そんなこと、一度もないよ。」
「……え…?」
それは、気がつくと口を衝いて出ていた。でも不思議と、後悔は無かった。そのまま私は話し続ける。
「忘れたことも、無かったことにしたことも、一度もないよ。ずっと嘘ついててごめんね。」
「なんで…。」
「当主様が協力してくれたの。「幼いうちに記憶を無くすのはあまりに酷だから」って。」
そう言うと、彼は泣きだしてしまった。そして、優しく私を抱きしめた。
この子は私の死ぬ理由。世界でたった一人の私の片割れ。だから私はあなたを守り抜く。例え私が死んだ後だろうと。
気が付くと僕の目からは涙が溢れ出していた。
それは、安堵からなのか、彼女だけにそんな辛いことをさせてきたという自責の念からなのかは僕には分からなかった。
それから僕達は、思い出話や今までお互いについて思っていたこと、普段の悩みや愚痴なんかも話した。あの頃と同じように…。
電車の窓には町並みがながれている。
適当に乗ったこの電車は一向に駅につかないことから察するに、各駅停車ではないのだろう。何処に向かっているのかは分からないが何処の町にも児童保護施設の一つくらいはあるだろう。そこに保護してもらって、大人になったらまた二人で暮らそう。
ある程度話し終えると、僕は彼女に向き直り、僕は思いの旨を告げた。
「このまま一緒に逃げよう。」
「………うん!」
彼女は僕はの生きる理由。世界でたった一人の片割れ。だから僕は彼女を守り抜く。例えどんなことをしたって。