何故、花は散るのだろう。
神は、何故美しいものほど早く散らしてしまうのか。
それは誰も分からない。
殆どの者が、分かろうともしないのだろう。
電車に乗ってしばらくすると、知らない駅についた。
まあ、まず屋敷から移動する時に電車など使わないので、駅自体今日初めて見たのだが。
電車を降り、彼女を電車に連れて来る時に買った切符で改札を抜け、駅を出ようとすると、夜だと言うのにたくさんの人が町を歩いていて、駅前は前が見えない程混み合っていた。
はぐれないように、手を繋いで人混みを抜けると、そこには知らない町が広がっていた。
たくさんの高い建物が立ち並び、それをビルの灯りと蛍光色のライトが照らしている。僕達はその輝く街を歩いて回った。すると彼女は突然立ち止まって、ある建物を見つめていた。
看板にはゲームセンターと書いてあり、こんな時間だというのに同年代くらいの少年少女達が仲が良さそうに話しながら入っていく。一瞬開いた透明のドアの向こう側からは楽しそうな雰囲気が漂っていた。
僕はその時少し安心した。
ああ、やはり彼女は巫女である以前に自分と同じ歳の少女なのだ、と。
彼女は普段から神格化され、本来僕達が頼るべきであろう『大人』に縋られ、気付けば彼女は自身が少女であることも忘れて、本当に神のように振る舞うようになっていた。
しかし、今目の前にあるのは間違いなく、憧れたものをみつめる少女の姿だった。
「行こう!」
そう言って彼女の手を引くとその少女は嬉しそうに頷いた。
それから何時間遊んだだろうか。時間も忘れる程に夢中になり、気付けばゲームセンターの閉店時間の直前まで遊んでいた。
ゲームをしている時の彼女はどこかあどけない、年相応の表情で笑っていた。『あの日』と同じように…。
ゲームセンターを出て、これからどうするか考えていると、彼女に「ねえ」と呼びかけられた。振り返ると彼女は落ち着いた表情に戻っていた。
「……お願いがあるの。」
彼女は俯くと、かなり間を開けてそう言った。表情は見えない。だが、なんとなく嫌な予感がした。
「あそこの屋上に連れて行ってほしいの。」
そう言いながら、彼女はこの街で一番高い建物を指差した。
彼女の望み通りの場所へ着くと、彼女は僕に問い始めた。
「ねえ、どうして花は散ると思う…?」
「……。」
何を言っているのだろう。質問の意図が読めない。
「どうして、人は長く側にあり続けるものをだけを見るのかな…?」
「………。」
分からない。この問から彼女は僕に何を伝えたいのだろう。
「私はね…、君に生きて欲しいの。…でもね、そのために私は死ななくちゃいけない。だからね…、」
「待って、それってどういう…………!?」
すると後ろから何かで口を抑えられた。
ぼんやりとしていく意識の中、彼女の言ったことだけが耳に残る。
「ごめんね。」
その時の顔は酷く寂しく辛いように見えた。
コメント
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数ヶ月間全く投稿をせず、申し訳ありませんでした!!