陽翔とダイキ、それぞれの言葉が胸に残ったまま、私は答えを出せずにいた。二人とも私の気持ちを尊重してくれる。だからこそ、余計に苦しい。
「ヒメ、自分の気持ちを大切にしてくれ。」
「ヒメが幸せなら、それが一番だから。」
二人の言葉が頭の中で繰り返される。私はどんな答えを出せばいいんだろう?
そんなことを考えていたら、リリカが肩をポンと叩いた。
「ヒメ、そんな難しい顔してるとシワできるよ?」
「うるさいなぁ…」
私がため息混じりに返すと、リリカはクスクス笑った。
「ねぇ、そんなに悩むなら、いっそどっちとも距離を置いてみたら?」
「え?」
私は驚いてリリカを見つめた。
「ほら、今って二人ともヒメのこと気にしすぎてるでしょ?ヒメもそれで余計に混乱してる。でも、一度冷静になれば、自然と答えが見えてくるかもよ?」
リリカの言葉に、私はハッとした。確かに、ずっと二人のことを考えすぎて、自分の気持ちが見えなくなっているのかもしれない。
「…そうだね。ちょっと考えてみる。」
私はそう答えたものの、実際に二人と距離を置くのは簡単じゃなかった。
**◆◇◆**
次の日から、私は少し意識して陽翔とダイキと距離を取るようにした。二人と話す機会があっても、いつもよりあっさりと会話を終わらせる。今はとにかく冷静にならないと。
でも、その変化に二人も気づいているみたいだった。
昼休み、廊下を歩いていると、後ろからダイキが声をかけてきた。
「なぁ、ヒメ。なんか俺、避けられてる?」
ダイキの言葉に、私は一瞬動揺したけど、すぐに落ち着いたふりをして答えた。
「そ、そんなことないよ。ただ、ちょっと考え事が多くて…」
「考え事?」
「うん…少し自分の気持ちを整理したくて。」
私がそう言うと、ダイキはしばらく黙っていた。でも、やがて軽く笑って言った。
「そっか。まぁ、ヒメがそう言うなら、俺は待つよ。でも、無理すんなよ?」
その優しさが、逆に私の心を締め付ける。
ダイキと別れてから、私は中庭のベンチに向かった。リリカの言う通り、一度冷静になれば、自分の気持ちが見えてくるかもしれない。
そう思っていた矢先、今度は陽翔が現れた。
「ヒメ」
私は驚いて顔を上げた。陽翔は、まっすぐな目で私を見ている。
「…どうしたの?」
私が聞くと、陽翔は少し困ったような顔をして言った。
「お前、俺のこと避けてる?」
ダイキと同じことを言われて、私は内心焦った。やっぱりバレバレだったみたい。
「いや、そういうわけじゃ…」
「ならいいけど。でも、もし何かあるなら、ちゃんと話せよ?」
「…陽翔」
私は思わず彼を見つめた。ダイキとはまた違う、陽翔のまっすぐな優しさを感じた。
「ヒメがどういう答えを出すにしても、俺はお前のこと、大事に思ってるから。」
陽翔のその言葉に、私は思わず息を呑んだ。
**私は、どうしたいんだろう?**
距離を取ることで、むしろ二人のことがもっと気になってしまう。リリカの作戦、ちょっと失敗かも…。
私は本当に、どうすればいいんだろう?