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「ようアルフレッド!」

「やぁアーサー」

それから数日経ち、フランスとスペインが帰国してイギリスが港へ来た。

「何やら静かだな。何かあったのか?」

「いいや何も。昨日祭りがあったからみんな疲れているんじゃないのかな」

「そうなのか」

あの事件のことは言っていない。いや、言わせない。全てのことが決定するまで口を閉ざし続ける。そんな意志を持っていたからか、顔が強ばっていたのだろう。気づけば顔の近くにアーサーがいた。そしておでこに手を当てる。

「体調、悪いのか?」

「,,,,,,ううん」

あぁ、そういうとこだよアーサー

俺は君と対等な、同じステージに立ちたいのに


………………………………………………………

その日アーサーはアメリカに泊まることになり、俺と同じ宿に招待した。

「そういえば、アリスは最近来ないんだね」

「あ?アリス?いや来てるぞ。」

「え?」

「裁縫がなんちゃらでずっと船内にいるがな。エミリーには会った時言ったから今頃会ってるんじゃないか?」

「ひどいじゃないか。俺にだけ教えなかったのか?」

「いやいやそんなわけ,,,,,,あいつが女子会というものに興味を示したから、エミリーとメグだけに伝えろって言われたんだよ。」

「じゃあメグもいたんだ。」

「マシューも誘ったんだが,,,,,,あっちは大変そうでな」

「,,,,,,そっか。ふわぁ,,もう眠いぞ」

「あぁ寝ようか」

嘘なんだぞ    本当は眠くもない。

別々の部屋に寝ていたが、こっそりベッドから起きてアーサーの部屋へ行く。キィと音が鳴ったが相当疲れているらしく、起きる様子がない。馬乗りのような形でアーサーの体にのしかかる。気づけば喉を締めるような手を出していた。ハッとしたとき、アーサーの目が覚めた。

「アルフレッド,,,,,,?」

「,,,,,,アーサー」

「どうした,,,,,,眠れないのか,,,,,,?」

「,,,,,,ううん」

「じゃあこっちこい,,,,,,」

そういって布団をガッと捲りあげる。だが、それに反応することもなく問う。

「ねぇ」

「ん?」

「俺の名前、言ってみてよ」

「アルフレッド,,,,,,【アルフレッド・フォスター】だろ?ほら、寝るぞ,,,,,,」

「,,,,,,うん」


………………………………………………………

「名前?」

「あぁ」

フランシスは署名を指さす。アントーニョは察したのか腕を組んで傍観している。

「フォスター。お前の苗字だな」

「そうだよ。アーサーがつけてくれた名だ。違和感なんて持ったこともないよ。」

「,,,,,,じゃあ言ってあげようか。フォスターって言うのはな,,,,,,」


【養子って意味を持つんだよ】


「,,,,,,え?」

「お前は元々、というか絶対にアーサーから手放されることはなかった。だが、それは子供っていう扱いからだな。」

「いや,,,,,,でも!」


「アルフレッド。お前の願いはなんだ」

………………………………………………………

数日後

軍人や役人全ての重役を集め、会議を始める。しかし、ざわめきが収まることがない。そのうち、1人が声を出す。

「あ、あのMr.アメリカ。後ろの方たちは,,,,,,」

俺の後ろにはフランシスとアントーニョ、オランダ、プロイセンが直立していた。深く息を吸う。

「皆。自由をもとめたことはないか?」

場が静かになる。

「俺は自由、そして制する力が欲しい。」

所々で興奮するような声がする。目を向ければキラキラと輝かせるような目が待ち構えている。1番、この世で出したこともない大声を腹の底から出す。

「代表なくして課税なし!!俺たちはイギリスから独立することを宣言する!」

歓声が湧き上がった。手を取り合い、そして地図を持ち出して作戦会議が行われていく。1人、息をフーっと吐き出しているとポンと肩を叩かれる。プロイセンだった。

「言っただけで終わりじゃねえぞ。正念場はここからだ。ケセセッ言うようになったじゃねぇか。まだまだへっぴり腰なくせにな!」

「これから背筋は伸びていくさ!」

「まぁお兄さん達が支援するし。あの眉毛には勝てるだろうよ」

「任せときや!あのブリテンには地獄というものを味わわせてやりとぉてな,,,,,,」

「お前の戦争ちゃう。こいつのやろ」

「オランダも、ありがとう」

「別に」

そんなワイワイとした空気の場。次の日には国の化身たちがぎょっとする出来事が起きたのだ。

「え、エミリー,,,,,,その髪の毛どうしたんだい,,,,,,?」

「え?これ?切ってもらったの!似合ってるでしょう?」

「あ、あぁ,,,,,,」

エミリーがバッサリ髪を切ってきたのだ。これまであったアリスの面影の一つである長い髪の毛を。今まではストンとしていた長髪が少しだけくせ毛をおびているような気がする。フランシスが近づいてきて頭をなでてくる。

「覚悟はお前のものだけじゃない。エミリーも持ってんだ。しっかり勝つぞ。」

開戦時こそ苦戦したものの、アメリカ軍は次第に勝利を掴んでいくようになっていった。そして、あの日。朝から天気は悪かった。

「アルフレッド。」

「エミリー。どうかした?」

「あ、あのね。さっき,,,,,,ここまで来る時に少しだけ戦場を見たの。そこで,,,,アーサーとマシューを、見て,,,,,,」

「っ,,,,,,え」

銃を手に取り、雨の中走り出す。後ろから声がしたが、気にせずに走り続ける。決着はいつつける?今、この瞬間しかないだろう。

走り続けていると陰に隠れているフランシスを見つけた。

「あ、アルフレッド!?なんでここに,,,,,,」

「アーサーがいる!トドメを刺しに来た!」

人をかき分ける。泥が跳ねて白いズボンは色を変え始める。一段と柔らかい土を踏んだ時だ。アーサーを発見した。お互い、それぞれの軍の先頭に立っていた。久しぶりのアーサーの顔であったが、とても酷いものであった。今までの優しい彼の姿など、ひとつも見えない。銃を向ける。

「イギリス。俺たちは君たちから独立する。」

だが、アーサーの動く気配はしない。

「,,,,,,アーサー?」

ビクッと手が動き、銃を構え直した時、アーサーも構えて俺に倒れ込む。アーサーが俺の体に跨って銃を突き出している。

「アメリカ!」

どこからか聞こえたその声とともに銃声が鳴り響きぎゅっと目を閉じる。もう一度目を開けた時にはアーサーは視界の中におらず、真横に倒れ肩から血を流していた。

「,,,,,,っ」

急いで立ち上がり、再度銃を突きつけるが下ろす。青白い顔が倒れながらもこちらを除きこみ、冷や汗か、それらしきものを流す。

「,,,,,,もう君の弟じゃない。やり直すことはできないんだよ」

そういうとアーサーは口を開いたが、何も声に出すことはなく倒れた。後ろから歓声が聞こえ嗚咽もまじった凄まじい喜びの声が響き渡る。対してイギリス軍は静まり返っていた。戦場を後にしようとしたとき、アーサーを呼ぶ声が聞こえた。マシューが現れた。

「アーサーさん!アーサーさん!」

布で打たれたところを必死に止血し、おぶる。目が合ったが、何も言われずどちらの表情もせず、イギリス陣営へ退却していった。



「アルフレッド!」

目が覚める。目の前にはエミリーがいて、もう出かける用意ができていた。自分も起きようとしたが首元が凄まじく濡れている気がする。そう思ったところにタオルを押し付けられる。

「うなされてた。どんな夢をみていたの?」

エミリーの心配そうな顔。久しぶりに見た。

「,,,,,,ううん。なんでもない。」

戦争の後は何回かこの夢を見ていたが、ここまで鮮明だったのははじめてだ。タオルで汗を拭きながらエミリーはクローゼットをガサガサと漁る。その背中に思わず言ってしまう。

「なぁエミリー」

「ん?」


「君はなぜ髪を切ったんだい?」

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