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テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

あの夜に教えてくれたこと

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あの夜に教えてくれたこと

第3話 - 第3話　過去

2025年03月25日

#第4回テノコン

#ドロドロ

#謎の男

麻木香豆

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麻木香豆

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あの夜に教えてくれたこと
#3 第3話　過去 / 麻木香豆

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『お腹の赤ちゃんのお父さんは誰かしら』数日前、病院で女性の医師に言われたその言葉が頭から離れない。エコー写真と共に、アスミは事実を告げられた。武臣、彼以外に思い当たる人はいないはずだったが、彼にその写真を見せた瞬間、アスミは車から蹴り出されてしまった。

「彼氏……か」

運転席にいるダイが低く尋ねた。アスミが小さく頷くと、彼は続けて問いかけた。

「暴力振られてたのか？」

「いいえ」

「あんなことするなんて、立派な暴力や。知らぬ間に心が蝕まれてたはずだ、酷すぎる」

ダイの口調が少し強くなり、アスミは息を飲んだ。夜の道路を走る車の中、川沿いの橋に差し掛かると、彼は再び問いかけてきた。

「他に隠してること、あるやろ」

「……」

「こんな真夜中に会った男に話すのは無理か」

アスミは唇を噛んだ。無理もないだろう、しかし彼の言葉に、夜の闇に潜む秘密を打ち明けたくなる気持ちもわずかに感じた。

「もうこれっきり、会うことはないと思えば話せるんじゃないか？」

「……」

彼の問いかけが、どこか優しい重圧のように心を締め付ける。だが、やはり話すのは怖かった。アスミは押し黙り、ただ黙って窓の外の景色を見つめ続けた。

「もし病院に行って元の生活に戻ったら、君はまた同じ目に遭う。今度は怪我じゃ済まんかもしれない」

ダイの言葉が、武臣の言葉を思い起こさせた。『結婚するつもりはない。子供はおろせ』。その言葉が胸に刺さるたび、アスミは心が引き裂かれそうになる。

涙が込み上げ、ついに声を上げて泣き出した。

「ごめん、アスミ」

不意にダイの声が優しく響く。初めて呼び捨てにされ、少し驚いたが、涙は止められなかった。