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#創作
こと
29
#第3回テノコン
ひなーびぃ@続編連載中✌️
15,426
第3話:共犯者の影
夜の帳(とばり)が降りた都心の片隅。
豪雨が降りしきる中、氷室律は古びたコインランドリーの軒下に身を潜めていた。
ずぶ濡れになった白衣を脱ぎ捨て、薄手のニット一枚になった体は、ガタガタと震えている。
(現在の体温、推定三十五度二分。軽度の低体温症へと移行しつつある。このままでは思考能力が低下し、逮捕される確率が八〇%を上回る。……早く、安全な拠点を確保しなければ)
律は震える指先で、スマートフォンの画面を操作した。
警察の追跡を恐れて電源を切っていたが、一瞬だけ起動する。かけるべき相手は、一人しかいなかった。
「――もしもし、氷室先輩!? 無事なんですか!?」
スピーカーから飛び出してきたのは、焦燥しきった若い男の声だった。
彼の名前は、浅雛 航(あさひな わたる)。律と同じ第一高分子研究室に所属する、一学年下の後輩だ。大型犬のように人懐っこく、研究室では孤立しがちな律をいつも「先輩、先輩!」と慕っていた。そして何より、大河内室長の「データ改ざん指示」を唯一知る人物でもある。
「浅雛、静かに。私の声が聞こえるか?」
「聞こえてます!先輩、ニュース見ましたよ! 部屋から薬が出たって……絶対に罠ですよね? 先輩がそんな非効率な殺し方するわけない!」
「ええ。私はハメられた。今から言う場所へ、私の着替えと、室長のパソコンのバックアップデータを持ってきて」
律は合理的にテキパキと指示を出し、指定した高架下の倉庫街で待つように告げて、すぐに通話を切った。
*
三十分後。雨の煙る倉庫街。
「先輩!」
大きな傘を差した浅雛が、約束通り大きなリュックを背負って走ってきた。律の姿を見つけると、彼は泣きそうな顔で駆け寄ってくる。
「よかった……! これ、乾いた服とタオルです。あと、言われたデータも持ってきました」
「感謝します、浅雛。あなたの行動の迅速さは評価に値する」
律はタオルを受け取り、濡れた髪を拭きながら、浅雛が差し出したノートパソコンを開いた。画面の光が、彼女の冷徹な瞳を青白く照らす。
「これで、大河内室長が誰と繋がっていたのかを解析できる。真犯人の正体に近づく確率は――」
「――そこまでだ、氷室」
不意に、暗闇から低く冷たい声が響いた。
律と浅雛が弾かれたように振り向くと、そこには傘も差さずに濡れそぼった、あの美しき刑事が立っていた。
遠藤蓮。
濡れた黒髪が額に張り付き、冷たい三白眼の瞳が怪しく光っている。雨に濡れたその姿は、まるで映画のワンシーンのように恐ろしく、そして吐き気がするほどイケメンだった。
「遠藤、刑事……。なぜここが分かった?」
律の計算では、スマートフォンのGPSを逆探知されたとしても、ここまで正確に位置を特定されるはずはなかった。
遠藤は首を傾げ、薄い唇を不敵に歪めた。
「お前が使ったコインランドリーの防犯カメラだよ。そこからこの倉庫街へ向かうルートは限られてる。お前がどんなに天才でも、現場を這いずり回ってきた俺の『勘』は騙せない」
遠藤は長い脚を一歩、また一歩と進め、律との距離を詰めていく。
「おまけに、そこの可愛い共犯者くんのおかげで、お前がここへ来る確信が持てた。泳がせて正解だったよ」
「……! 浅雛、逃げなさい」
律は浅雛の前に立ちはだかった。感情はない。だが、部外者を巻き込むのは「不合理」だからだ。
「逃がさないさ。二人まとめて署でじっくり聞かせてもらう」
遠藤の手が、再び手錠へと伸びる。彼の端正な顔が、雨の中で冷酷に引き締まった。
しかしその時、浅雛が叫んだ。
「先輩、走って!!」
浅雛は持っていた大きなリュックを、遠藤の顔めがけて思い切り投げつけた。
「チッ……!」
遠藤がそれを鮮やかに払いのけた一瞬の隙。浅雛は律の手を強く掴み、暗い倉庫の奥へと走り出した。
「こっちです先輩!僕が守りますから!」
繋がれた浅雛の手は、驚くほど熱かった。
後ろからは、激しい雨音を割って、遠藤の鋭い足音が迫ってくる。
冷酷なイケメン刑事・遠藤。
忠実な後輩・浅雛。
二人の男に挟まれ、律の逃亡劇はさらに混沌とした渦へと巻き込まれていく――。
コメント
1件
おお、第3話読み終えたわ!もう毎回ハラハラさせられるな~。 遠藤刑事、カッコよすぎて怖いわ……あの雨の中の登場シーン、マジで映画のワンシーンみたいだった。でも浅雛先輩とのコンビも熱いな!「僕が守りますから!」って叫ぶシーン、胸にきたよ。 律の冷静な判断と、それを裏で操る何か……この混沌さが最高だわ。続きが気になって眠れなくなりそう!🔥