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#創作
こと
29
#第3回テノコン
ひなーびぃ@続編連載中✌️
15,426
第4話:浅雛の秘密
遠藤刑事の執念深い追跡をなんとか振り切り、二人が逃げ込んだのは、浅雛が隠れ家として手配した郊外の使われていないコンテナハウスだった。
叩きつけるような雨の音が、薄いトタンの屋根を激しく鳴らしている。
「はぁ、はぁ……っ。なんとか、撒けましたね、先輩……!」
浅雛は壁に背を預け、肩で荒い息をつきながら、安心したようにへなへなと座り込んだ。
律はそんな彼を冷淡に見下ろしながらも、手渡された乾いたタオルで自分の髪を拭いた。
「浅雛、あなたの心拍数は現在推定百四十。先ほどの逃走による運動量に対して、やや高すぎます。過度の緊張状態にあると推測されますが、大丈夫ですか?」
「そりゃ、緊張しますよ! 警察に追われるなんて初めてですし……。それに」
浅雛は少し顔を赤くして、視線を泳がせた。
「……先輩とこんなに近くにいるのも、初めてですから。濡れた髪、すごく綺麗です」
直球すぎる言葉。普通の女性ならここで動揺するのだろうが、律の脳内は「浅雛の好意の確率:九二%」と淡々と処理するだけだった。
「お世辞は不要です。脳のエネルギーを会話ではなく、次の作戦に回してください」「あはは、相変わらず冷たいなぁ。でも、そんな先輩だから信頼できるんです」
浅雛は苦笑しながら、リュックからノートパソコンを取り出し、机に置いた。
「ほら、大河内室長のパソコンから抜き取ってきたバックアップデータです。パスワードは僕が解析しておきました」
「優秀ですね。とても助かります」
律はパソコンの前に座り、画面に並ぶファイル群を冷徹な目で走査し始めた。 室長が裏で関わっていた未承認薬のデータ。不自然な資金の動き。画面をスクロールしていくうちに、律の指先がピタリと止まった。
(……おかしい)
律の超人的な頭脳が、データの違和感を瞬時に見抜いた。
隠蔽されたログの底。大河内室長に不正なデータを送信していた端末のIPアドレス。それは、研究室の共用端末ではなく――浅雛が普段使っている個人の個人ID(アカウント)だった。
(浅雛が、室長の不正の片棒を担いでいた……?)
律の心臓が、ほんのわずか、計算外のテンポで脈打った。一分間に六十二回だった心拍数が、六十八回に跳ね上がる。
「先輩? 何か分かりましたか?」
背後から、浅雛が顔を覗き込んできた。彼の熱い息が耳元にかかる。
律は瞬時に画面を切り替え、表情を鉄の仮面で覆い隠した。
「いいえ。データの暗号化が予想より複雑です。解析にはあと、数百時間は必要かと」
「そっか……。じゃあ、今日はもう休みましょう。先輩、体冷えてますし」
浅雛は自分の着ていた乾いたパーカーを脱ぐと、律の肩に優しく掛けた。男物の大きな服に包まれ、彼の体温と、ほんのりと甘い香りが律を包み込む。
「僕、外で見張りをしてますから。先輩は中で寝てください」
そう言って笑う浅雛の目は、どこまでも澄んでいた。
彼が本当に真犯人、あるいはその仲間なのだろうか。もしそうだとしたら、なぜリスクを冒してまで自分を助けたのか。
(私の計算式が、成立しない。浅雛の行動は、論理的(ロジカル)ではない……) 初めて覚える、胸の奥の奇妙なモヤモヤ。
その時、コンテナハウスの薄い扉が、外から激しく蹴破られた。
「――そこまでだ、ネズミども」
暗闇の中に現れたのは、ずぶ濡れのまま、狂気的なまでに美しい笑みを浮かべた遠藤刑事だった。
彼の切れ味鋭い瞳が、パーカーを羽織った律と、浅雛の姿を交互に捉える。遠藤の周りに、目に見えるほどの嫉妬と怒りのオーラが渦巻いていた。
コメント
1件
わああ第4話!もう展開が二転三転しすぎて心臓もたないよ〜😭💦律ちゃんがデータから浅雛くんのIP見つけちゃったときの「心拍数 62→68」の描写、逆に冷静すぎて怖い…!でもって浅雛くん、パーカー掛けて「外で見張ってますね」って…お前が怪しいのに優しすぎんだろ!?🥺💘ラストの遠藤刑事、嫉妬オーラまとって乱入してきたのマジでカッコよすぎるし、次回どうなっちゃうの!?続き教えてくださいって感じ🌸