テラーノベル
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しばらく花火を見上げた後、涙を拭う。
(もう諦めて帰ろう)
帰ろうと身体の向きを変えた時、見覚えのある姿が目に入り、俺は息を呑む。
「恭也!」
「…陽雅さん」
陽雅さんは息を切らしながら俺の前で立ち止まり、俺を見る。
「お待たせ…遅れちゃって…ごめんね」
陽雅さんが、俺に会いに来てくれた。
信じられない光景に目に涙が滲む。
そんな俺を陽雅さんは心配そうに見つめる。
「恭也、泣いてるの?」
「別に…泣いてないです」
震えた声でそう言う俺を陽雅さんは抱きしめる。
「ごめん。俺のせいだよね。ホントごめん」
陽雅さんの言葉で余計に涙が溢れる。
「俺っ…ホントもうっ…陽雅に会えないと思ってましたっ…」
「そうだよね。ごめんね」
「だからっ…会いに来てくたのが嬉しくてっ…」
「うん。俺も恭也に会えて嬉しいよ」
「もう陽雅さんとっ…離れたくないですっ…」
「俺も。もう二度と恭也と離れたくない」
陽雅さんはそう言った後、抱きしめるのを辞め、俺の涙を拭いながら言う。
「ねぇ恭也。俺の事好き?」
「はい。好きです」
「俺と一緒に乗り越えてくれる?」
「もちろんです」
「俺の恋人になってくれる?」
「はい。もちろんです」
俺が微笑むと、陽雅さんも微笑んだ。
「花火、観る?」
「そうですね」
「うわ。ここ全然見えないじゃん」
「そうですよ。陽雅さんが来るの遅いせいで俺ずっとこれ見てたんですからね」
「ごめんね。もっと見やすい所行こっか」
そう言って手を差し出す陽雅さんの手を俺は握る。
「みんなあっちの方行ってたんで、あっちが見やすいんだと思います」
「あぁ。河川敷かな。そこ行こっか」
「はい」
そして俺達は歩き出した。
_________
神社から少し離れた河川敷で二人並んで花火を見ていた。
「おぉ。すげぇな。でけぇ花火」
「そうですね。凄い綺麗です」
「快と見てるから余計に綺麗だな」
零斗さんはこっちを見て微笑む。
「またそんな事言って。ほら、俺なんか見てないで花火見てください」
「あー、分かったよ」
零斗さんは花火に目を向ける。
夜空に咲く花火を見上げる零斗さんを見て、俺はカバンからデジカメを取り出した。
零斗さんにカメラを向け、パシャっと一枚撮る。
続けて花火の写真を数枚撮ると、再び零斗さんに目を向けた。
(かっこいい…)
俺は再び零斗さんにカメラを向け、パシャっと撮る。
そして花火と零斗さんを交互に撮っていると、零斗さんがこっちを見た。
「お前撮りすぎだろ。ちゃんと肉眼で見ようぜ」
「確かにそうですね。クライマックスまでは休憩します」
「よし。いい子だな」
零斗さんは俺の頭を撫でた後、花火に目を向ける。
「…で、今度はどんだけ俺の事撮ったんだよ」
「えっ」
バレていた。また俺が零斗さんの事撮ってたの。
「どんだけって別にっ。二、三枚ですよ二、三枚」
「答え合わせしてみるか?」
そう言って零斗さんはもう一度こっちを見る。
「しません。二、三枚って分かってるんで」
ちなみに嘘だ。
多分十枚は撮っている。
「じゃあ、後で花火の写真見てぇから後で見せろよ」
「そんなの今見ればいいじゃないですか。実物」
「快と見た特別な花火だからとっときてぇんだよ。デジカメのデータ俺にも送れよな」
「花火の写真だけならいいですけど」
「今までの写真全部送れ。快が撮った俺の写真」
「な、なんでですか」
「好きな人に撮ってもらった写真なんて、持ってねぇと勿体ねぇだろ」
零斗さんがニコッと笑う。
ホント、なんでこの人はこんなにドキッとする事を言うんだろう。
恋愛初心者のくせに、なんかムカつく。
「…一枚ずつなら送ってあげてもいいですよ」
「何でだよ。全部くれよ」
「嫌です。正直撮りすぎてるんで」
「へぇ。今は? 二、三枚って言ってたけど本当は?」
「…十枚以上です」
俺の言葉に零斗さんはフッと笑う。
「相変わらずめっちゃ撮ってんな。フラワーパークん時もめっちゃ撮ってたよな」
「まぁ…はい」
「あん時から俺の事大好きなんだな」
零斗さんはそう言って嬉しそうに笑う。
「う、うるさいです。花火見てください」
「はいはい」
零斗さんは満足そうに笑った後、花火に目を向けた。
_________
河川敷の道を手を繋いだまま、二人並んで歩く。
夜空には花火があがってた。
「お〜。今結構大きいの来ましたね」
「そうだね」
「あっ、今の。上がった後にパチパチなるやつ好きなんですよね」
「分かる。俺も好き。綺麗だよね」
「はい。綺麗です」
「どっか座れる場所ないかな…」
「もう結構みんな座ってますもんね」
河川敷で座れる場所が無いか探していると、見覚えのある後ろ姿が目に入り、立ち止まる。
「あっ」
「何? どうしたの?」
不思議そうに問う陽雅さんを見て、俺はその後ろ姿を指差す。
「見てください」
陽雅さんは俺の指差す先を見る。
「あっ。零斗と快くん」
「快、写真撮ってますね」
「本当だ。しかも零斗撮ってるっぽいね」
「ホントですね」
そう呟いた後、河川敷で座れそうな場所を見つけ、俺は陽雅さんの手を引く。
「そこ座りましょう」
「えっ。ちょっと」
河川敷に座ると、二人の方に目を向ける。
「ほら、ここならあの二人見えますよ」
「何。恭也はあの二人を見に来たの?」
「違いますけど、せっかくなんで見ます」
「花火見ようよ」
「花火も見るしあの二人も見ます。ほら、陽雅さんも見てくださいよ。零斗さんの初恋ですよ?」
俺がそう言うと、陽雅さんは零斗さんに目を向ける。
零斗さんは快の方を見て何か呟いた後、快の頭を撫でた。
その様子を見て、陽雅さんがフフッと笑う。
「零斗のあんな顔初めて見た。凄い嬉しそう」
「そうですね。ちなみに俺も陽雅さんと居られて嬉しいです」
「俺も恭也と居られて嬉しいよ」
陽雅さんがニコッと笑う。
その言葉が嬉しくて、俺もニコッと笑った。
「もうほら、こっち見てないで花火見てくださいよ」
「いいけど、恭也もあの二人見てないで花火見てね」
「はい。見ます。陽雅さんと一緒に」
「よし。じゃあもうちょっとこっちおいで」
その言葉で俺は陽雅さんに近づく。
「ちょっと近すぎません?」
「それがいいの。一緒にいるって感じがして凄い好き」
「確かにそうですね」
俺はそう言いながら陽雅さんの腕を両手で掴んでもたれる。
そしてそのまま最後まで花火を見た。
「凄かったですね」
「そうだね」
「あっ、屋台終わっちゃう。なんか買っていきましょうよ」
「そうしよっか」
陽雅さんが立ち上がるのを見て、俺も立ち上がる。
河川敷の道に戻ると、横から声がした。
「恭也!」
声のする方を見ると、快と零斗さんがこっちに来ていた。
「快」
「いつの間にそこいたの? 全然気付かなかった」
「二人のイチャイチャ見せてもらったよ」
「うわっ。見ないでよ」
そう言った後、快は陽雅さんの方をチラッと見て小声で言う。
「ってか陽雅さん来てくれたんだね。良かったじゃん」
そう言って俺の背中をポンっと叩く快に零斗さんが近づく。
「おい、快」
そう言って零斗さんは快の肩を掴み、自分の方へ引き寄せる。
「なんですか? あっ。嫉妬ですか? 嫉妬」
「違ぇよ。俺はな。陽雅の前で恭也にあんまくっつくな」
「もう。ただの友達なのに」
快は頬を膨らませて陽雅さんを見る。
そんな快を見て、陽雅さんが申し訳なさそうに言う。
「ごめんね。嫉妬しないように頑張るから、しばらく我慢して欲しいな」
「いいですよ。恭也の事大切にしてくださいね」
「うん。ありがとう」
陽雅さんがそう言うと、快がハッとした表情を浮かべる。
「あっ、零斗さん。早くしないとりんご飴買えなくなっちゃいます」
「あ? ふざけんな早く行くぞ」
「じゃあ四人で行きましょう。それで零斗さん家行きましょう。泊まりで」
「あ? 俺は快と…」
零斗さんの言葉を遮るように陽雅さんが言う。
「いいね。四人で行こっか」
「ふざけんな。俺は快と二人が…」
「まぁまぁ零斗さん。帰ったら…」
快は零斗さんの耳に口を近づけ、何か言う。
「…まぁ、それならいいぜ。ほら、行くぞ」
頬を赤らめてそう言った後歩き出す零斗さんに俺達はついて行った。
コメント
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みぅ🤍🥀です。 第39話、読みました…! 陽雅さんが恭也のもとに駆けつけてくれた場面、もう本当に胸がぎゅっとなりました…「会えないと思ってました」って泣きながら言う恭也くんに私ももらい泣きしそうだったよ😢 零斗さんと快くんのやり取りも相変わらず甘々で、零斗さんが「好きな人に撮ってもらった写真は持ってないと勿体ない」って言うところ、ずるすぎるでしょ…!って思わず叫びました。 最後の4人で花火見て帰る流れもすごく温かくて、読んでて幸せな気持ちになりました。 灯依さん、素敵なエピソードをありがとうございます🖤