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インストールが終わったアプリを開くと、真っ黒な画面に文字が浮かんだ。
――「追跡開始」
数秒後、地図が表示される。
赤い点が、街の一角を示していた。
……彼の位置。
今、この瞬間、彼がどこにいるのかが見えてしまう。
息が詰まる。
罪悪感よりも先に、胸を満たしたのは甘い高揚だった。
“これで彼を逃がさない”。
さらに通知がひとつ。
アカウントからの新しいメッセージ。
――「今夜、彼は女と一緒にいる。」
わたしの手は無意識に震えた。
どうして分かるの?
問いを打ち込むと、すぐに返事が来た。
――「わたしは、君より彼を知っているから。」
その言葉に、背筋が冷たくなる。
まるでこの人は、ずっと前から彼の隣にいたみたいに……。
地図の赤い点が、ゆっくり動き出した。
繁華街のホテル街を抜け、ひとつの建物の前で止まる。
“ラブホテル”の文字。
頭が真っ白になる。
でも、画面から目を離せなかった。
そのとき、新しい通知が重なる。
アカウントからの一文。
――「ねえ、まだ気づかないの? わたしは、君のすぐ近くにいるよ。」
指先から力が抜け、スマホを落としそうになる。
近く……? どういう意味……?
周りを見渡す。
深夜の街、人影はまばら。
でも確かに、誰かがわたしを見ている気配があった。