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それからだったか。

明智は、どうも中高時代、青春というものを送ってきてなかったらしく、ダチと何処かに遊びに行くという習慣も何もなかったみたいだった。だから、俺達は明智の「遅めの青春大作戦」を決行し、週末、外出許可が取れた日には明智を色んな場所に連れ回した。

カラオケもいったし、ボーリングもいったし、バッティングセンターもいった。

兎に角明智に色んなものを見せてやった。彼奴が、恋人を忘れられるぐらいには。だが、きっと明智は片時も忘れてはいないんだろうな、と俺は密かに思っていた。明智の恋人は明智の足枷だと思う。明智は楽しむときは楽しんでいるのに、その余韻に浸ってはいない。何処か、恋人も一緒だったら楽しいだろうに何て遠い目をしてやがったから。

それが、何だかイラついて、今目の前にいる人を大事にしてくれと思ってしまった。

それより、何よりも……明智が可哀相だ。


「久しぶりの外出~だあ~死ぬかと思った」

「お前、赤点ギリギリだったか?」

「実は、オレも相当危なかった」


テスト期間を終え、外出許可をかっさらい、俺達は電車に揺られ、当てもなく何処かに揺られるまま向かっていた。

テスト期間というものを初めて味わい、期間中は外出が禁止され、机に貼り付け状態。俺は勉強が苦手な人間だったから、それはもう逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。だが、逃げ出せば教官達のしかりと、圧にやられて渋々部屋に戻ることになる。あの明智でさえ必死にやっているのだから、もう何だか全て負けてしまったような気がした。

でも、普通それぐらいやるんだろうなと、俺がだらけているだけだと思った。

空も空で、やる気なさそうにぐったりと机に突っ伏していたし、それでも赤点を回避できたのは明智のおかげだろう。明智は、俺達のせいで無駄……にはならいないだろうが、余計に勉強をさせてしまった。それでも、俺達に弱みを疲れているところを見せないのはさすがだと思った。本当に尊敬している。

揺られ揺られて、ついた駅で俺達は降り、辺りを見渡す。

すると、若い女性達が俺達のほうによってきた。どうせ明智狙いだろうと思ったが、俺と空に話し掛けてきたため驚いた。モテるのか、とかそういう邪な思いを抱きながらも、ちらりと空の方を見る。空は女性が好きな弟タイプだからそんな嫌がる素振りも見せず、ニコニコとしていた。もしかしたら、空も嬉しかったのかも知れない。


(そう思うと、何だか複雑だな)


「お兄さん達、観光ですか?」

「良ければ一緒にまわりませんか?」


明智の方を見れば、呆れたように一人たそがれ紅葉を眺めていた。

季節は秋、ちょうど紅葉も見頃だった。明智は「春」という名前なのに、どの季節の花や葉の前でも似合うもんだなあと俺はどことなく未亡人感が漂う明智を見ながら思った。まあ、「未亡人」と思ってしまうのは、恋人と離ればなれになっているからか。

(モテるのはいいけどよぉ、今日は明智と空と来てんだ……どうにか、離してくれねえかな)

女性達は、大学生のように見えたが、どうも苦手だった。女性が苦手というよりかは、勝ち気、男勝り、食い気味、肉食系……これらの要素が含まれる女性がタイプではなかった。否、姉もそういう人間だったかだ。

そんな風に俺がどう切り抜けるべきかと思っていれば空が俺の手を握った。


「ごめん、お姉さん達。オレ達今日ね、久しぶりの友達とのデートだから、また今度ね」


と、持ち前の可愛さを生かして空が女性達に謝る。俺もぺこりと頭を下げれば、何故か黄色い歓声が飛び「可愛いから許す」といって手を振って何処かに行ってしまった。まあ、一件落着な訳だが、その可愛さは他に見せて欲しくねえなとも思っちまった。


(それよりも、明智だ)

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