テラーノベル
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鏡が、割れた。
ただのひびじゃない。
それは「境界」の崩壊だった。
“ないこ”の前に現れたのは、
自分と瓜二つの――しかし、どこか異質な少年だった。
冥晶:「……“彼”か」
ないこ:「誰だよ、こいつ……」
少年の姿はまるで、“ないこ”の別の人生を歩んだかのようだった。
同じ顔。同じ声。
けれど、瞳の奥には、底知れない闇が宿っていた。
???:「名前か……そんなもの、あの場所にはいらなかった」
???:「俺は、お前の“影”じゃない。
同じ計画で生まれ、途中で“処分”されたはずの……実験体B-00」
ないこ:「……!」
冥晶:「“響導研究所”の第一世代……!」
男は、ゆっくりと名乗った。
???:「俺の名前は――“白吼(ハク)”。」
白吼:「お前と違って、声を捨てて生き延びた。
自分の感情も、心も、全部、音として他人に押しつけてな」
ないこ:「そんなの、歌じゃねぇ……!」
白吼:「そうだな。だけどな、“ないこ”。
お前の声も、結局“作られた”もんだろ? 研究の成果でしかない」
ないこ:「違う……!」
冥晶の心が揺れる。
その男は、ないこと冥晶の「中間」だった。
感情を失わず、でも吐き出すこともなく、
ただすべてを押し殺して“声”を外へ出し続けた存在。
白吼:「俺はな、“失敗作”のままで終わるつもりはねえ。
お前の声、返してもらうぜ」
その瞬間、部屋の空気が凍りついた。
白吼の手に、奇妙な黒いマイクが現れる。
白吼:「“共鳴試験・再開”だ――ないこ」
ないこ:「……来いよ。奪えるもんなら、奪ってみろ」
共鳴の地鳴りが、空間を揺らした。
ふたりの“同一存在”による、音と心の激突が始まる。
次回:「第四十話:崩壊前夜、歌えないバトル」
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