カメラが好きだ。
日常の何気ない瞬間を切り取ったり、特別な日を一生の思い出に残したり。
抱きしめたい一瞬を、カメラの中に封じ込める。
今は泣きたいような気分でも、写真の中の自分が笑ってる。
それだけで元気を貰える。
前を向いていく支えになる。
好きだなあと思う趣味をこつこつと続けていたら、それがいつの間にかお仕事に繋がり、メンバーにも認めてもらえ、嬉しくて楽しくてますますカメラが手放せなくなった。
俺は今撮りたいものがある。
渡辺翔太。
メンバーの一人で、俺の最愛の人。
本人には言えてないけど、他のメンバーたちと紛れて撮った彼の写真はどれも俺の宝物だ。
🧡本格的なポートレートが撮りたいねんなあ
自分たちの撮影の合間やオフの時に、ふざけたふりをして撮った写真ならいくらでもある。
それはそれで大好きなんだけど、向井は自分だけの特別な一枚が欲しかった。
ちゃんと場所と時間を決めて、渡辺にモデルをやってもらいたい。
でも、渡辺は忙しい。
向井も忙しい。
そもそもこれを言い出すのも断られることを考えるとちょっと怖い。
そんなこんなであっという間に月日が経っていく。
お互いにますます忙しくなってしまった。
🤍康二くん、最近カメラ持ってきてないね?
🧡今スランプ中やねん
🤍そうなの?
🖤珍しいな。康二はただ撮るのが楽しいって感じだったのに。
🧡せやねんけどな…欲が出てきてもうて
雑誌の撮影で3人ずつ。
少し離れたところに渡辺、阿部、宮舘の姿が見える。
仲良く撮影している。
向井の目は渡辺を追っている。
自分が写真を撮らないのならせめて、一緒に写りたかったなあと向井は思っている。
二人だけの記念に。
🧡あ。でも3人おるからだめや
🤍康二くん?何言ってるの
🖤康二、俺ら呼ばれたぞ。
次は自分たちの番だ。
向井は頭を切り替えて撮影に臨む。
写真はラブレターだと思う。
文章を書く代わりに、好きなものへの想いを込める。
向井は今まで、残しておきたい瞬間を次から次へと切り取ってきた。
風景も、動物も、植物も、そして人も。
撮った自分も間違いなくそこに存在する。
写真には写っていなくても、その息づかいを感じる。
たまに向井はプロの写真展にも行く。
撮影者の想いが載った作品はやはり違う。
対象がなんであれ、胸を打つ。
素晴らしい作品に出会うたび、自分もいつかあんな作品が撮りたいと向井は思う。
💙おーい、康二
🧡!!!しょっぴー!いつからいたん?
目の前に渡辺がいて、怪訝そうな顔をして向井を見ている。
距離が近くて、一気に向井の動悸が跳ね上がった。
💙ちょっと前から
🧡声かけてーや
💙今かけてただろ(笑)
🧡どないしたん?
💙俺、今日この後サウナ行くんだけどお前も
🧡行く!!!!!!
💙ふはっ…返事はや
渡辺からの誘いは無条件に嬉しい。
自分が子犬なら尻尾がちぎれそうなくらいに振ってると思う。
仕事終わりにいつもの流れで二人で行きつけのサウナへ向かう。
会員制なので、いつも空いているし、周りも見知った顔ばかりで気を遣わなくて済む。
渡辺がサウナにハマってから、向井も通うようになった。
気持ちいい。
毛穴から吹き出る汗が、一日の疲れを癒してくれる。
🧡綺麗よなあ
💙何が?
🧡しょっぴーの肌
向井は渡辺の白くてすべすべの肌が羨ましい。
長年の努力の賜物だとは思うが、陶器のようなのに、瑞々しい。
最近では筋肉もついてきて、ほどよく締まっている。
まるで美術作品のようだと思う。
触るのも憚れるような、芸術的な身体。
💙康二の肌も好きだけどな俺は
🧡!!ほんま???
💙うん。健康的でいい。出るぞ
向井は思わず渡辺に後ろから抱きつき、叱られる。
叱られても嬉しい。
肌が密着するのも嬉しい。
こういう時は同じ男同士で本当によかったと思う。
デビューに向けてのラストチャンス。
東京への異動を打診された時は正直迷った。
大好きな仲間たちや家族と別れて単身、知らない土地へ。
馴染みのないグループへの加入。
でも、これしかないと思った。
これが最後。
これでダメなら諦めよう。
子供の頃からずっと追い続けてきた夢。
アイドルという仕事は、現実には楽しいことばかりではなかった。
そんな中で出会った渡辺翔太という人間。
向井はその魅力にどんどん引き込まれていった。
口は悪いが、根は優しい。
意外と寂しがりやで、甘えん坊。
向井の過剰なボディータッチに驚いて嫌がってた時期もあったが、今となってはそんな昔があったなんて思い出せないくらいに自然と向井を受け入れている。
あまり拒否されなくなった頃から、向井の思いは変わっていく。
これ、イケるんちゃうか?
渡辺翔太の恋人に、俺はなりたい。
目黒と二人、居酒屋で並んで飲んでいた時、向井は静かになったタイミングで切り出した。
🧡めめ、相談があるんやけど
🖤なに?仕事のこと?
🧡ちゃうねん
🖤じゃあ、プライベートなこと?
🧡おん
🖤なに?
🧡好きな人がおんねん
🖤へえ?
🧡めめにも協力してほしいねん
🖤いいけど…俺の知ってる人?
向井は神妙に頷く。
目黒はあれこれ考えていたようだが、結局わからなくて向井を見返した。
🧡しょっぴーやねん
🖤えっ!!!
🧡…そら驚くよなあ…
🖤いや…言われてみればわからなくはない…かな?
🧡どう思う?
向井は真剣である。
目黒も腕組みして考えた。
🖤まあ、反対はしないし、俺でできることだったら…
🧡おおきに!!!!!
目黒が言い終わらないうちに、向井は強く目黒の手を握りしめた。
コメント
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新連載です! 休憩所も更新したのでよろしくお願いします!!🧡💙 コメントお待ちしています😆