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「あっ、いた! おーい」
さっきの騒ぎは普通に収まり、子どもたちも「今日のフィナねえちゃんはいつもより凄かったね」なんて口々に言いながら解散して行ったっす。
なので私だけここに残るかたちで魔力の痕跡とか無いかなと探していたら、さっきのエルフさんが戻ってきて呼んでくれたっす。
「さっきはいきなりでビックリしたよね? ごめんね?」
「いえ、私は大丈夫っすよ。それよりは面白いものが見れて良かったっす!」
「まあ、分かってるけど……少し見せ物みたいになってるよねぇ。えへへ」
照れくさそうに頬をかきながらそんな事を言うエルフさんはとっても可愛いっす。
「ジョイスさんはどうなったっすか?」
一応聞いてみるっす。スプラッタな事になってなけりゃ良いっすけど。
「麻痺矢で痺れて転がってるわ」
スプラッタは回避したっすけど、割とひどいことになってるっす。
「まあ、いつものことよ。むしろ最近は慣れてきたのか麻痺させられて喜んでる気がするのよね。だから今日はおまけで軽めの毒矢もやっておいたわ」
それって大丈夫なんすかねぇ。
「それで、魔術が見たいっていう旅のラビ種の子って君よね?」
「え? あ、はいっす。ジョイスさんに聞いたっすか?」
「まさか。痺れて会話なんて今は無理よ。聞いたのはミーナちゃんからね」
なるほど、エルフさんも知り合いだったっすか。これはやっぱりミーナちゃんが目的に1番近いっすかねー?
「ミーナちゃんからも、魔術をたくさん見せてやってとは言われてるから。と言ってもあとは召喚くらいなんだけどね」
またしても街の外に出てきてエルフさんと2人っきり。
というか召喚って言ったっす。何かを喚びだす魔術ってのは他の国でももう限られたひとしか使えない魔術っすよ。
この街の人は魔術を使えないのが殆どなのに、使える人が規格外の人ばかりっす。
ビリーさんの剣技もジョイスさんのあのレベルの纏魔も。
そしてそれを軽々と撃ち抜いたエルフさんの矢はさらに上。
「じゃあこの街の最強はエルフさんじゃないっすか?」
つい疑問に思って聞いてみたっす。
「あー、ジョイスと私ならそうね。でもそれは私が弓矢を使った時だけね。無ければジョイスには敵わないわ」
謙虚。というよりそこに拘りは無いといった感じっす。ある面で優っていてもある面ではそうではないと。
そう言って退くことの出来る冒険者なんてなかなか居ないっすね。みんな自分の1番得意な得物で勝った負けたをやってるんすから。
「じゃあ、やってみせるから見ててね」
そう言ってエルフさんは手に持った木の枝で地面に何やら模様を描き始めたっす。
「これって、もしかして」
「うん? 魔法陣よ。私はこれしか知らないんだけどね。」
「そんな貴重なもの軽々しく見せていいんですか⁉︎」
これこそ魔法。人が己の理解の範疇を超えた現象を起こすために作られた魔法装置。人が制御できる術とした魔力の使い道ではない、超常。それを知るものが秘匿して頑なに見せない秘中の秘。
「ん? まあ私も教えてもらったし? それにこれって知ったところで誰にでも出来るわけでも無いのよ」
誰にでもは出来なくても誰かは出来るっすよ、それ。
「ふふん、完成ぃ」