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うにい
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谷崎爽奈
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#聖女
桜井正宗@オートスキル1巻発売
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我が子の安全を脅かす確率が最も高いのは、ドワーフでも魔族でも王国人でもなく地球人である。
何故なら、今後も地球人が異世界に召喚された場合、アービトラージ戦法が見抜かれ、そこから俺の手口や軌跡に逆算して辿り着かれてしまう可能性があるからだ。
また、少数派である為に悪目立ちしてしまう可能性がある。
特に俺や高橋の様にチートスキルを身に着けてしまうと危険だ。
そいつが暴れたら?
盗みや殺しを犯したら?
ヘイトは地球人全体に向かうだろう。
当然、地球人である俺や地球ハーフであるエヴァの子もそこには含まれる。
それだけは絶対に避けたい。
俺にとって地球人など百害あって一利ないのだ。
だからこそ、異世界人の召喚術を潰せるのであれば潰しておきたいと考えている。
「エルフ社会は召喚はしないと思うよ?」
『マグダリオンさん…
言い切れますか?』
「だって我々は外来種が大嫌いだもの。
わざわざ外部から異物を呼び込むという選択肢があり得ない。」
『まあ、現に鎖国されておられる訳ですしね。』
「大体、経済効率が悪いよ。
異なる世界から生物を呼び込むって、とてつもないエネルギーが必要だよ?
エルフ社会はコスパ至上主義だからねぇ。
無駄なプロジェクトを提唱するだけで評価点下がっちゃうんだよ。
仮に必要でも、召喚関連の企画書を出す勇気のある者は…
居ないだろうねぇ。」
エルフは人間種の10倍の寿命がある。
しかも緻密な記録社会。
なので一度失敗してしまうと、数百年に渡って人事評価欄に☓が残り続ける。
結果、超減点社会なのだ。
新卒20年目でニヴル詐欺に引っ掛かったマグダリオンが未だにリカバリー出来ていないように、失敗に厳しい。
だから召喚のようなリスクの大きい事業を提案する事には、かなりの勇気が必要になってくる。
『なるほど。
コスパが悪い…
じゃあ王国や帝国は何故召喚を?』
「え?
封建社会って経済観念と真逆だし。
そもそも人間種は知能が低いから魔法の費用対効果を算出するのは不可能なんじゃない?」
『彼ら、また召喚しますかね?』
「どうだろ?
王国はやるんじゃない?」
マグダリオンの分析はシンプル。
王国と帝国は超農業社会。
狩猟や遊牧に比して農業は土地当たりの食料生産効率が格段に高いので、エルフやドワーフに比較して莫大な人口を抱えている。
つまり万年人余り状態。
なので口減らしの為にしょっちゅう戦争を始める。
年中戦争しているので、思考が冒険的になりがちだし、主戦論者がヘゲモニーを握り易い。
従って一発逆転的な召喚ガチャの企画提案が通り易い。
(低能は博打が好きだ。)
既に地球人に戦果を挙げさせた実績があるので、期待値は前回よりも高いだろう。
ベテランコンサルはそう分析した。
『ほーん。
じゃあ、この資料読み込んでおいて下さい。
王国の召喚を不可逆的に止める方法を…』
「いや、止めたいならメインクリスタルでしょ。」
『ん?
それ詳しく。』
「いや、普通は召喚魔法陣の近くに巨大な魔石が設置されるんだよ。
それさえ破壊すれば…」
便所に行ってワープ(以下略)
『これっすか?』
「うわっ!
デカっ!
流石は超大国だねえ。
こんな巨大な魔石で制御してたんだねぇ。
この巨大魔石3つの中間点に魔法陣があった筈だよ。
ああ、これだけのサイズがあれば人間種の集団を召喚する事も可能だろうねぇ。」
便所に行ってワ(以下略)
『これもですか?』
「えっと、どうしてキミはいつも血塗れなの?」
『安心して下さい俺の血ではないので。』
「あ、うん。
それは質問に対する回答にはなってないよね。
まあ私は居候だから強く出られないんだけどさ。」
便所に(以下ry)
『ハァハァ!
これで3つ全部ですね。』
「えっと、他種族の遣り方に口を出す気は無いのだけど、さっき以上に血飛沫が付着しているよね。
あまり暴力的なクライアントさんには…」
『話は変わりますが王国金貨です!
追加コンサルフィーとしてご笑納下さい。』
「え!?
いやあ、悪いねぇ。
むほほ。
うん、人間種さん同士のいざこざに口を挟むのは良くないね。
この金貨も真っ赤だが、きっとトマトソースでもこぼしたのだろう、うん。」
マグダリオンの長所は2点ある。
キャッシュに困っている点と減点主義のエルフ社会で暮らしている点だ。
目先のカネが必要だから倫理面では目を瞑らざるを得ないし、無事に定年を迎える為にも余計な騒ぎは起こせない。
手駒が欲しい俺にとっては願ってもない相手である。
加えて、エルフにとって人間種は下等生物に過ぎず、下等生物同士が何をしようがあまり目くじらを立てない点も極めて好ましい。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『よう高橋。
何か分かったか?』
「オマエのスキルに見当が付いたくらいかな。」
『おいおい仲良くしようぜ。
カネ、受け取ったよな?』
「…そうだな受け取った。
気の迷いだった。」
『いーや、違うね。
オマエにだって被害者意識はあるんだよ。
だから血の付着した方の王国金貨を敢えて受け取った。』
「…飛田は俺を共犯にさせたい訳?」
『いや、別に高橋でなくても良かったんだ。
相手が1人なら交渉が成り立つ。
俺なら江添君とも上手くやれてたと思う。
ただ、交渉相手がクラスという集団だと俺は何も出来ない。
極端な人間を排除するのも集団の機能だからな。』
「なあ、最初からクラス抜きでオマエに話しかければ良かった訳?」
『かもな。』
俺は所詮ミュータントだ。
スキルもそうだし、人格的にもきっとそうなのだろう。
なので集団の中に溶け込むのは非常に難しい。
だから集団の論理で俺に接されても応対に困る。
この高橋は俺をクラスの輪に協調させようとしていた。
恐らくそれは善意に基づくものだったのだろうが、勝ち筋を発見していた俺にとっては重荷以外の何者でもなかった。
逆に2人きりになった今は俺に対して協調を試みてくれている。
当然俺も高橋に相当な譲歩を強いられているのだが、今のコイツには頼もしさすら感じている。
「こっちの書類は召喚のルールだな。」
『そうなのか?』
「要は王国は、モンスターをマーキングしてから魔石で出現座標を指定。
そこに射出しているのだが…
前半ではその手順、後半では禁忌を羅列している。」
『禁忌?』
「サイズだな。
大き過ぎる生物の召喚は原則禁止。
また王国内には王国成人男性の平均身長を越える生物を絶対に召喚してはならない。」
『じゃあ俺達日本人と言うモンスターはギリギリセーフ?
王国人って平均身長180くらいか?』
「ああ、一応レギュレーションには沿ってる。
彼らにとっても苦渋の選択だったのかもな。」
そりゃあそうだろう。
手に負えない番犬など害獣そのものだからな。
『高橋。
ありがとうな。
オマエのおかげで今更概要が掴めてきたよ。』
「ホント今更だな。
最初から王国の本音が見えていれば、少しは交渉の余地があったのかも。」
まあ、相手も馬鹿じゃない。
召喚モンスターに胸襟を開く訳もなかった。
『じゃあ、これは作業料だ。』
「作業料ならもう受け取った。
王国金貨10枚って相当なものだぞ。」
『あれは前の書類の対価だ。
この10枚は今の分。』
「…。」
『遠慮する事はないさ。
たった2人の生き残りじゃないか。
俺だって少しでも仲間に良い暮らしをして欲しいんだよ。
共和国って外人には結構税金高いんだろ?
ほら受け取れよ。
金貨なんて幾らあっても困る事はないんだからさ。
ちゃんと栄養のあるもの食ってるか?
江添の話を聞いてからオマエが心配になってさ。
このカネで旨いモンでも食いに行けよ。』
「分かった。
感謝する。」
『オイオイオイ。
感謝だなんてよしてくれよ。
オマエは仕事をしてくれた。
俺はその対価を払った。
対等の取引じゃないか。
もっと堂々としてくれないと困るよ。』
「…今度から血の付いてない金貨で支払ってくれないか?」
『血?
トマトソースだろ?』
「…やっぱり江添が良かった。」
『よし、受け取ったな。
これで取引は完了だ。
じゃあ、次の案件なんだが帝国文字も覚えておいてくれ。
当然翻訳とは別に特別手当を支払う。』
「分かった。
しばらく図書館に通うよ。」
『GOOD、感謝する。
来週また顔を出すよ。
じゃあな、相棒。』
「…ああ、またな。」
こんな風に高橋には全体の4割程度の資料を翻訳させている。
重要そうな6割の翻訳はマグダリオンに任せているので、全貌は俺だけが把握している。
正直、コイツの助力はそこまで必要ではないのだが、ある程度手を汚させて俺を告発出来ないようにしなくてはならないからな。
少なくとも今後王国が地球人を召喚するのは非常に困難だろう。
魔力場の再生成だけでも500年は掛かるだろうからな。
何より、ノウハウを持った関係者が強盗に殺されている最中だ。
リカバリーは不可能に近いかも知れない。
先日の旧都大火災で資料の大半が焼亡したのも好ましい。
被害者が1万人以内に収まったのも実に平和的だった。
生まれて来る子供の為にも区切りが付いて一安心である。
コメント
1件
第138話、読み終えました!「トマトソースだろ?」って高橋さんに言い返すシーン、思わず笑っちゃいましたよ😂 飛田さん、確信犯的にやりすぎでしょ…でも、エルフ社会のコスパ至上主義とか、王国の召喚の仕組みとか、世界観の説明が会話に自然に混ざっててすごく読みやすかったです。高橋さんとの距離感が少しずつ縮まってる感じもいいですね。次はどんな手を打つのか、気になります!