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#ファンタジー
うにい
114
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谷崎爽奈
282
#聖女
桜井正宗@オートスキル1巻発売
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さて、子供は今週生まれる。
いや、それ自体は勿論祝福すべきなのだが…
どうやらエヴァと沼袋の出産日が丁度同日になる見込みなのだ。
「ヒロヒコ君。
少しいいかね?」
『はい、お義父さん。』
「今回の出産は氏族全体にとっても非常にイレギュラーだ。
娘に掛かっているプレッシャーは大きい。
分かるね?」
『はい、仰る通りです。』
「…私は君の精勤を高く評価している。
君が入手してくれた風魔石のおかげで建造出来た高炉も軌道に乗った。
ゴブリン・コボルト難民保護は魔界から大きな好感触を勝ち取っている。
ピエール領の誕生もポジティブに作用している。
いずれもヒロヒコ君が成し遂げた偉業だ。」
『ありがとうございます。』
「それはそうとして、今週はずっと在宅して貰う。
いいね?」
『あ、いや。』
「忙しいことは知っている。
だが、私も1人の父親だ。
娘の出産には万全を期したい。
邸宅に居なさい。
いいね?」
『あ、はい。』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「飛田さん。
貴方には娘共々感謝しております。」
『あ、いえ。』
「まさか母の葬儀にまで駆け付けて下さるとは思っておりませんでした。」
『あ、いえ。
恐縮です。』
「そして…
東京のこんなに広い部屋で南と住める日がやって来るとは思いませんでした。」
『あ、いえいえ。』
「ただ!」
『あ、はい。』
「せめて今週だけは広尾に居て頂けませんか!?」
『あ、いや。』
「忙しい事は存じております!
でも、私も1人の母親です!
娘の出産には万全を期したいのです!!!
広尾に居て下さい!
宜しいですね?」
『あ、はい。』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
(シュンシュンシュンシュン)
『コージさん、と言う訳でちょっと今週は大変なんですよ。』
「ああ、それでラグってるんだ。
本妻さんも同じ日でしょ?
モテる男は大変だねぇww」
(シュンシュンシュンシュン)
『からかわないで下さいよぉ。
義父が怖い人でガチで詰められてるんです。
ほら、俺の顔、左右で形が違うでしょ?
前に義父に殴り倒されたんですよ、新婚なのにソープ嬢孕ませたから。』
「なるほど。
その時の嬢が南さんだと。」
(シュンシュンシュンシュン)
『ええ、遠藤だったかもですけど、どっちでもいいや。
兎に角、義父のプレッシャーが半端ないんです。』
「そりゃあ、舅さんとしては出産日くらいは居て欲しいよね。
でも、気持ちは沼袋家も同じだと。」
(シュンシュンシュンシュン)
『そうですね。
入院されていたお祖母様が亡くなられたばかりで不安定ですし…』
「そっか。
じゃあ沼袋家は母1人娘1人になっちゃったんだ。
そりゃあ、居てあげなきゃ駄目だよねえ。」
(シュンシュンシュンシュン)
『もう本当に途方に暮れてしまって。
それで本妻宅と広尾を反復ワープする事で、両方の顔が立つかなと。』
「うーーん、どうだろ。
今の君、何かチカチカ点滅しているように見えるしね。
まあ、居ないよりマシなのかなぁ。」
(シュンシュンシュンシュン)
『あ!
すみません!
今、親方に呼ばれてました!
残像だけ残しておきます!』
(シュンシュンシュンシュン)
「あ!
おーい。
ああ、本当に残像だけじゃん。
これ逆に不誠実なんじゃないかな?」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
(シュンシュンシュンシュン)
『親方!
お待たせしました。』
「おう、トビタ。
オマエ、何かチカチカしてね?」
(シュンシュンシュンシュン)
『すみません、体調がまだ本調子ではなくて。』
「お、そうか。
無理だけはしないようにな。
まあいい。
出産には長老会議の査察も入る事を知らせておこうと思ってな。」
(シュンシュンシュンシュン)
『え!?
査察!?』
「いやいや、仕方ないだろう。
種族にとっても全く未知のケースだ。
未だに長老連中もどう対処していいのか見当も付かんのだ。
それは分かるな?」
(シュンシュンシュンシュン)
『はい、仰る通りです。』
「まあ、概ねは祝福してくれている。
何せブラギの初孫だし、既にトビタの貢献も認められているからな。」
(シュンシュンシュンシュン)
『恐縮です。』
「ただ、この出産に関しては公務のつもりで臨んでくれ。
エヴァは勿論として、ブラギや俺もしばらくは事情聴取の連続だ。」
(シュンシュンシュンシュン)
『ですよね。』
「特に出産前日から出産日まで。
ずっと立ち会って貰わなくては困るぞ?」
(シュンシュンシュンシュン)
『…はい、承知しました。』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
(シュンシュンシュンシュン)
「飛田さん!
南のお産にはちゃんと立ち会ってくれるんですね?」
『あ、いえ。
はい、まあ、善処します。』
(シュンシュンシュンシュン)
「あの子も精神的に不安定になっているんです!
出産したらすぐに離婚だなんて話ですし!!」
『いえ、はい、いえ。』
(シュンシュンシュンシュン)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そうは言ってもなあ。
こちらも子供を非嫡出児にしてしまわないようにスケジュール調整を頑張っているのだ。
工程としては以下の通り。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
結婚(沼袋) ←イマココ
↓
出生届提出後に離婚
↓
結婚(遠藤)
↓
出生届提出後に離婚
↓
結婚(らぁら(本名))
↓
出生届提出後に離婚
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
理論上、上記のスケジュールを順守すれば生まれて来る子の全員を嫡出児とする事が可能となる。
沼袋の子の出生届を出し終わった後に、すぐに離婚手続きを開始するのはその為だ。
…そして遠藤との婚姻手続きに移行する。
俺は遠藤が心底嫌いなので、あの女との婚姻届など想像しただけで胃が痛いのだが、出さなければ生まれて来る双子が非嫡出児となってしまう。
やるしかない。
生まれてくる子には罪が無いのだから。
(シュンシュンシュンシュン)
「飛田、オマエも無駄にマメだよな。」
『いえ、村上さんに御迷惑ばかり掛けてしまってます。』
(シュンシュンシュンシュン)
「まあ、丁稚の面倒見るのも弊社の福利厚生の一環だ。
気にせず南ちゃんのケアに専念してくれ。」
『えっと、商売の話なんですけど…』
(シュンシュンシュンシュン)
「あのなー、今くらいは100%のパパでいてやれよ。」
『あ、すみません。』
(シュンシュンシュンシュン)
「ラピスラズリ建材な…
今朝の趙社長のメッセ読んだか?
北京のAIIB本部にガチで採用されたな。
これであの世の犬童さんにも顔が立ったわ。」
『マジっすか?
スミマセン!
メールチェック全然出来てなくて…』
(シュンシュンシュンシュン)
「ばーか、子供が生まれる前なんてそれくらいで丁度いいんだよ。」
『そんなもんすかね。』
(シュンシュンシュンシュン)
「なあ、飛田。」
『はい。』
(シュンシュンシュンシュン)
「オマエとも色々あったな。」
『そうっすねぇ。
村上さんにはお世話になりっぱなしです。
何とお礼を言っていいか。』
(シュンシュンシュンシュン)
「ばーか、若いうちはそれくらいで丁度いいんだよ。」
俺は無意識に目を閉じて村上翁から教えを受けた日々を思い返す。
反復ワープの所為なのか走馬灯っぽく感じるのは御愛嬌である。
この人が居なきゃ、地球で足場は作れてなかっただろうな。
『村上さん。』
(シュンシュンシュンシュン)
「んー?」
『いい加減、謝礼を払わせて下さい。
ずっと、はぐらかされてきました。』
(シュンシュンシュンシュン)
「そうだったか?」
『葛飾産業さんから聞きましたよ。
金貨の現金化も殆ど口銭取ってくれてなかったじゃないですか。』
(シュンシュンシュンシュン)
「アイツは相変わらず口が軽いな…」
『一段落しちゃいましたし、今のうちにこれまでの御礼をさせて下さい。
かなりの金額でしょ。』
(シュンシュンシュンシュン)
「…俺も老い先短い身だからなぁ。」
『縁起でもないこと言わんで下さい。』
(シュンシュンシュンシュン)
「分かった。
じゃあ、1個だけ俺から遺言な。
ゴニョゴニョゴニョ。」
『え!?』
(ピタッ!)
「んー?」
『いや!
それは流石に!』
「じゃあ、そういうことだ。
後はオマエの仁義を信じる。」
『いやいやいや!』
「おい、沼袋母娘が呼んでるぞ。
早く行ってやれ。」
『は、はい。
でも、この話は…』
「頑張れよー、新米パパ。」
『は、はい!』
(シュンッ!)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
出産の際、男の仕事なんて無いと思っていた。
精々病院代を払う程度だと考えていた。
勿論、世の中はそんなに甘くない。
嫁が動けない分、男の側が関係者への説明や調整を行わなくてはならないのだ。
それが×2で地球と異世界に跨っているのだから辛い。
…だがまあ、皆が通って来た道なのだ。
俺が生まれる時、親父もあの女もやっぱり大変だったのかな…
『…。』
(シュンシュンシュンシュン)
溜息を吐きかけて、慌てて飲み込む。
出産前に男がうんざりした様子なんて見せたら女が不安になるものな。
『南さん。』
「…。」
(シュンシュンシュンシュン)
『エヴァさん。』
「…。」
(シュンシュンシュンシュン)
『『いよいよ俺達の子が生まれるんだね。
俺は世界一の幸せ者だよ。』』
(シュンシュンシュンシュン)
「ヒロヒコ。」
「飛呂彦。」
(シュンシュンシュンシュン)
『ん?』
(シュンシュンシュンシュン)
「「目がチカチカするからあっちへ行って。」」
だよな、俺も密かにそう思っていた。
仕方ないので部屋の隅でお産を見守る事にした。
まあ、例え残像でも居ないよりマシだろ。
シュンシュンシュンシュン!
コメント
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いやあ、もう「シュンシュン」が耳に残りすぎて頭の中で効果音がループしてますよ(笑)。義父×2と親方からガチめのプレッシャー掛けられて反復ワープでチカチカしてる飛田さんの姿、笑いながらも「そりゃそうなるよな」って納得しちゃいました。それでも「非嫡出児にしない」というスケジュールの理論武装っぷりには、飛田さんのしたたかさと責任感が滲んでて好きです。村上さんの遺言、気になるなあ…!