💙翔太side
目黒と話してから俺は涼太と話す隙をうかがっていた。
ところがメンバースケジュールによると、お互い入れ違いに仕事が入っていて、なかなか顔を合わせる時間がなかった。
ちくしょう、用がない時はやたらと会えてた気がすんのに。
そんなふうに後悔してみてももう遅い。
こうして足踏みしているうちに、阿部ちゃんの包帯が取れた。
俺は涼太と話せないまま、再び9人でのダンスレッスンの日を迎えていた。
💛よし、少しペース上げていくけど、阿部はキツかったら言って
💚うん、ありがとう、大丈夫!
みんなも迷惑かけてごめんね?
🩷おかえり、阿部ちゃ〜ん!
佐久間が阿部に抱きつく。
おいおいそんなことしてると、涼太が嫌がるんじゃねー?
他人事ながらひやひやし、思わず涼太を見たが、表情ひとつ変えてない。
💙(相変わらずクールなやつめ…)
🧡やっぱりみんな揃うとええな!
🤍ね!うれしいよね!
💛よし、始めよう!!
阿部ちゃんは休みの間に照にもらった動画で少し自主練をしていたらしく、練習は比較的スムーズに進んでいく。
さすが努力家な阿部ちゃんらしい。
ただ休んでいたわけではないようだ。
これなら一安心。
新曲お披露目までには十分間に合いそうだ。
それにしても…。
💙(あいつ…ダンス、あんなに上手かったっけ?)
今までそこにいて当たり前だった涼太を、俺は気になる人として意識し始めたのか、不思議と胸がどきどきしていた。
変だな…。
今までこんなふうに思ったことなかったのに。
だめだだめだと思いつつ、ついつい涼太ばかりに目がいってしまう。
あいつ、あんなに綺麗だったっけ…。
🖤しょっぴー、見過ぎ
すれ違いざまに目黒に小声で注意される。
やばい。
慌ててダンスに集中する。
今回の涼太への告白が周りに気づかれるのは無しだ。
阿部ちゃんもいるし、涼太も迷惑する。
たぶん涼太には全く相手にされないだろうから、波風立てずにこっそり玉砕することになるだろう。
しばらくは自分も落ち込むだろうが、ちゃんと区切りを付けて泣いてスッキリすればただの幼なじみに戻れるに違いない。
そんなふうに考えていた。
曲が止まって、照が阿部ちゃんに細かい指導をしている。
俺は大きく深呼吸した。
まず、涼太を捕まえて一対一できちんと話さなくては。
休憩中
俺は目黒に会議室へ呼び出されて二人で話している。
🖤しょっぴー、今日はとにかく普通にしてて?
💙ああ、悪い…
目黒が心配してくれている。
本当にいいやつだなあと思っていたら
🖤それにしても…ぷぷっ…
と目黒が突然笑い始めた。
🖤意識したとたん、あんなにどぎまぎしてるのウブすぎでしょ🤣🤣🤣
ついには我慢できなくなって腹を抱えて目黒は爆笑している。
マジでウザい…。
💙俺だってこんなの初めてで勝手がわかんないんだよ!///
ひとしきり目黒の笑いがおさまるまで待つ羽目に。
こいつほんとに俺のことが好きなのか?
今さらながら疑問に思うわ。
🖤あーあおかしかったww
…それで?今日話すの?
💙うーん…。でも今日は二人になれなそうだしなあ。
🖤そうだね。みんないるもんね。
頷く。
🖤とりあえず、約束だけでもしたら?
💙だな。とりあえずLINEしてみる。
🖤がんばって
俺はレッスン室に戻ると、涼太にLINEを送った。
❤️涼太side
トイレに行き、レッスン室へ戻る途中、ちょうど会議室から目黒と翔太が出て来るのを見かけた。相変わらず仲が良さそうだ。
そういえばダンスの最中にも目黒が翔太に耳打ちしていたっけ。
あれには正直むっとした。
やはり二人の仲は順調に進展しているようだ。
胸がズキズキと痛む。
二人が親密になる前はこんなに苦しい思いはしてなかったのに、あのキスを目撃してから、自分の二人を見る目がすっかり変わってしまった。
そしてこれ以上現実を直視できないから、俺は長年あたためてきた恋を阿部で上書きしようとまでしている。
…まさか阿部が自分を好きだとは思ってもみなかったが。
携帯が震えた。
❤️翔太から?
珍しい。
個別に翔太からLINEが来ていた。
同じ部屋にいるのに話しかけて来ないなんて変だな。
💙『話があるんだけど、近々二人だけで話せない?』
まさか、 目黒との交際開始の報告だろうか。
いやだ、聞きたくない。
俺は返信せず、携帯をそのまましまった。
💚亮平side
💛みんなだいぶ形になったな。じゃあ、続きはまた次回にしよう。
数時間に及ぶハードなレッスンが終わった。
久しぶりに力いっぱい踊った俺はもうクタクタだ。
何しろ2週間もサボっていたんだから体力も相当落ちていた。
💛大丈夫か?痛みは?
💚足の痛みは平気だけど、久しぶりでバテバテだよ笑
💛まあ今日はゆっくり休め
💚ありがとう
照と分かれ、目で涼太を探す。
今日は一緒に帰ってくれるかな?
せめて夕飯くらいは一緒にしたいな。
俺は涼太を見つけて、近づく。
涼太は気づかずに携帯の画面をじっと見ている。
誰かとLINEしてるみたいだ。
💚涼太?
❤️!……もう帰るか?
💚うん。この後二人でご飯でも行かない?
❤️いいよ、行こう
💚LINE、返さなくていいの?
❤️この間行った服屋の広告だから平気。
携帯をポケットにしまいながら笑顔を見せる涼太を俺は本当に嘘つきだと思った。
だって今のLINE、翔太からだったよね?
❤️宮舘side
阿部に誘われて夕食に一緒に行くことにしたが、事務所を出たら、阿部は家で食事がしたいと言い出した。
食材を買いにスーパーに寄り、二人で阿部の家へと向かう。
なんだか阿部の口数がいつもより少ない気がする。
❤️疲れた?
💚うん、ちょっとね
❤️阿部…?
阿部が俺の腕に自分の腕を絡ませてきた。
少し驚く。
家に上がり、キッチンに立つと、阿部が今度は後ろから抱きついてくる。
❤️包丁持ってるから危ないよ
💚んーん。今日はくっついてたい…
こんな阿部は初めてだった。
俺は戸惑いつつも、料理を続ける。
💚ねーえ、涼太
❤️ん?
💚俺のこと、好き?
❤️好きだよ
💚ほんとに?
❤️ほんとに
背中越しに阿部の体温を感じる。
人肌って温かいんだなと思ったが、微かに阿部の身体が震えているのがわかった。
なぜかはわからない。
情緒不安定になってるのかな?
今日は久しぶりにみんなと踊ったし、もしかしたら阿部の中でうまくいかない部分が多かったのかもしれない。
阿部が小さな声で言う。
💚涼太
❤️ん?
💚お願いがあるんだけど
❤️なに?
💚今日は帰らないで
❤️阿部……
💚お願い。今夜はどうしても涼太と一緒にいたい…
腰に回した腕にさらに力がこもるのを感じた。
❤️わかった
俺は阿部の部屋に泊まる覚悟を決めた。
阿部をちゃんと愛さなくては前には進めない。
💙翔太side
💙既読スルーかよ
昼間送ったLINEに、涼太からの返信はない。
まだなんか怒ってんのかなあいつ。
二人だけのインタビューの日に少し嫌な感じになったけど、今日はみんなと普通に練習していた気がする。
阿部ちゃんの手前もあり、話しかけづらくて、個人的には口をきいてないが。
それに、俺はいつも目黒といるから急に涼太に馴れ馴れしくするのも変だと思ったのだ。
💙あーもう。何が気に入らないんだか。
もう一回送ろうかな、いや、やめた方がいいかなと携帯を見ながら迷っているうちにいつのにまにか俺は眠ってしまったようだった。
翌朝目が覚めると、 涼太から返信が来ていた。
❤️『もう連絡してこないで』
何が起きたのかわからなかった。
ただ、この世にこんなに悲しく辛いことがあるのかと思った。
涼太に拒絶されることは、こんなにも痛いのか。
俺は泣いていた。
コメント
4件
えっ🥺
おはよう〜🙋♂️w いつもほめてくれてありがとう💕 早く幸せになってほしいよ苦笑
くっ…ぐる"じい…! てか書くの上手すぎ…