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ごきげんよう、シャーリィ=アーキハクトです。ライデン会長に案内された倉庫に鎮座していたのは、戦車でした。『帝国の未来』に記載されていたものとは違うみたいですけど。

「これは所謂菱形戦車で、マークIVと呼ばれるタイプである。車体は全面が装甲板に覆われ、小銃弾程度のものは跳ね返すことが出来る優れものだ。つまり、相手の銃弾を防げる自動車と考えたまえ。車体側面のスポンソン、つまり張り出しには機関銃や砲を装備し、移動しながら敵陣を攻撃可能だ。全長八.一メートル、全幅四.一メートル、重量二十九トン、乗員は八人。最大速力は時速六キロ程度である……単位はわかるかね?」

「分かります、うちでは『帝国の未来』にあった単位を採用していますから」

帝国では単位が統一されていないので、『暁』ではメートル法などを参考に単位の統一を図っています。

「それならば話も早いな」

「はい。この戦車は相手の攻撃を防ぎながら一方的に攻撃できる兵器であると考えて良いでしょうか?」

「一方的とは言わんが、これまでの帝国のあらゆる常識を打ち破る兵器であるのは間違いない」

「それは素敵ですね。ですが時速六キロ程度ですと、歩く速度とそこまで変わりはありませんね」

「その通りである。それが最大の弱点ではあるな」

つまり、ゆっくりとした進めないと。

「このタイヤは?周囲に何か着いていますが」

「キャタピラである。無限機動、つまり場所を選ばずに行動が可能である。瓦礫の上はもちろん、多少の段差ならばものともせずに進撃可能である」

「場所を選ばない運用が可能であると。しかしこの形状は、泥なんかが詰まったら大変そうですね」

掃除が大変そう。

「うむ、あまり泥地を進まぬことを推奨しよう。しかし、シャーリィ嬢の主戦場は市街地や周辺の平原であると考えた。それならば問題はあるまい」

「それはそうですが……」

「お姉さま、これはあくまでも初期の代物です。これから改良されたものがたくさん開発されるでしょう。もちろんアフターサービスも期待して良いのですよね?ライデン会長」

レイミが間に入ります。

「それはもちろんである。無論実戦データは残さず提出して貰うことになるが」

「構いません。むしろそれらのデータでどんどん改良していただければと思います」

「承ろう。そしてこいつの燃料は石油である。そちらで自在に操ることが出来るだろう」

「なんと!」

「お待ちを、お姉さま。ライデン会長、もちろん精製に関する技術も教えてくださるのですよね?」

「むっ!」

はて?

「レイミ、精製とは?」

「石油はそのまま利用するのではなく、用途に応じて精製する必要があるのです。石油はあっても精製できないのでは意味がありません」

ほほう、つまり『ライデン社』が精製した燃料を使うしかないと。それはつまり、手綱を握ろうと考えていたのかな?

「それはそれは……戦車運用は『ライデン社』の匙加減一つでどうにでもなるような状況は避けたいものですね?」

「うむむっ」

「会長さん、悪いことは言わねぇ。うちのお嬢の手綱を握ろうなんて考えない方がいい。しっぺ返しが洒落にならねぇからさ」

「その通りです。ライデン会長、私が居る以上お姉さまの無知につけこむ事は不可能ですよ?」

「むぅ……新兵器を提供するのだ。保険くらいは掛けておきたいのが人情では無いかね?」

「それについては同意しますし、信用してほしいなどと言うつもりはありません。私がどんな使い方をするのか、会長は予測できないのです。悪評が立つのは困りますよね?」

それは当たり前の感情です。

「それはそうである」

「ならば、利用してください。私は貴方が開発したものを思う存分利用して勢力を拡大します。貴方はそれによって得られるデータなどを最大限活用して、新兵器を存分に開発してください」

「だが、悪評は避けられんぞ?」

「それらの勢力は私が黙らせます。利益を提示してくれるならば、汚れ仕事を請け負いますよ」

「……それが暗殺や恐喝の類いでもかね?」

「貴方が望むならば」

「ふむ、つまり君たちは我輩のケツモチをすると」

「けつもち?」

「用心棒のことです、お姉さま」

「用心棒ですか。いよいよ悪の組織っぽくなりますね」

「違うのかね?」

「必要だからやるだけです。私の目的は、正道では絶対に達成できないのでこの道を選んだんです。そして、ライデン会長の新兵器はその目的のために必要不可欠。そのためなら何でもしますよ」

「……厄介事に対処する用心棒は必要か。なにせ、様々な勢力から目の敵にされているのであるからな」

「うちはギルドの連中に嫌われてますからなぁ。連中も裏社会と繋がりがあるし、我々も良い機会なのでは?会長」

ダイロスさんが助け船を出してくれましたね。

「であるな。先程は意図を説明せず失礼した。レイミ嬢の言う通り、精製に必要な施設の設計図も君に渡そう。悪用するとは思えないからね」

「当然です」

『暁』と『ライデン社』だけが知っていれば良いんです。

「その代わり、厄介事が起きた際には力を借りることになる。もちろんその都度報酬も別途用意しよう」

「契約成立ですね」

無事に最初の取引を終えることが出来ました。『ライデン社』の用心棒代わりと言うちょっとした仕事は増えましたが、問題はありません。まだまだ勢力を拡大して組織を強くしていくつもりなのですから。

ただ、直近の問題は。

「これ、どうやって持って帰れば?」

「アークロイヤル号ならば積み込めるだろう。甲板のスペースをかなり占めることになるがね」

「嵐が来ないことを祈るしかないな」

「鉄道で輸送は出来ないのですか?」

機関車なら簡単そうですけど。

「お姉さま、お勧めしませんよ。間違いなくリースさんの目に止まります。秘密兵器はなるべく隠しておくべきです」

「つまり、船で運ぶしかないと。『海狼の牙』には見つかりますよ?」

「構わねぇだろ?サリアの姉さんはお嬢にしか興味は無いだろうからな」

それはそれで不穏な感じがするのですが。

「分かりました、このままアークロイヤル号に積み込むとしましょう」

「では試運転も兼ねて動かしてみると良い。積み込み作業は我が社も手伝うのでな」

「助かります、マニュアルをください」

「お嬢が運転するのかよ!?」

「お姉さま、一緒に頑張りましょう」

紆余曲折ありましたが、取り敢えず取引は成功して私達は『ライデン社』の開発した戦車を手にすることが出来ました。

……レイミが知ってて不思議に思わないのかと?何れ話してくれるでしょう。私はそれを黙って待つだけですよ。

暗黒街のお嬢様~全てを失った伯爵令嬢は復讐を果たすため裏社会で最強の組織を作り上げる~

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