私
達は、もう誰も傷つけたくないからこそ、戦うことを決めたんだ! お前なんかにはわからないだろうけどな! あの人は私のことを、大切に想ってくれているんですね? それがわかれば十分です。
それじゃあ、あなた達が守っているものはなんですか!? それは……。
誰かを守るということは、別の誰かを傷つけることと同じだと思いますよ。
大切なものを護るためには、他の何かを犠牲にしなければならない。
そういうことじゃないでしょうか。さて、今回は少しだけ真面目な話です。
まず、前回までの登場人物紹介を見ていただきたいのですが、やはり全体的に見て女性陣の方が多いですね。
これは私の小説の特徴でもあるのですが、私が書くヒロインたちはなぜか女っ気が強めになりがちです。
これは別に意図してそうしているわけではありません。ただ単に私の趣味嗜好の問題なのですが、しかしこれが物語の構成上かなり重要な意味を持ってくることがあります。
というのも、恋愛モノの場合、主人公(つまり私)以外の男性は邪魔になることが多いからです。
例えばハーレムもので主人公が複数の女の子たちとキャッハウフフな展開を繰り広げる場合、その中心にいるのは基本的に主人公だけですよね? 当然他の男は空気扱いされて存在感をなくしてしまいます。場合によっては完全にモブキャラ化することすらあります。
そこで登場するのが主人公の親友とか幼馴染とか兄弟分だとかライバルだとかいう男の存在です。彼らもまた主人公であると言って差し支えありません。
なぜなら彼らは主人公に恋をしているわけではないからです。彼らの視点から見て主人公はあくまでも一人の人間として映っているはずです。だから彼らが異性を意識し始めることはないでしょう。少なくとも現段階では。
ではもし仮に主人公が誰か一人を選んだとしたら……それはもう恋愛対象としてしか見れないでしょうね。だって他に選択肢がないんだもん!
――というわけで、今回取り上げるテーマのひとつは「男が女を選ぶのではなく、女が男を選ぶのだ!」ということなんです。
よく考えてみれば、私は今までに、 自分のことを誰かから教えてもらったことがない。
もちろん両親からは聞いたことがあるが、それはあくまで知識としてであって、実感を伴ってはいないのだ。
だからといって、別に両親が私に対して愛情を持っていなかったということではないと思う。
むしろその逆だったのだろう。
私の両親は私が小学校に入る前に離婚したのだが、母に引き取られて間もなくの頃、父は私たち母子のことを非常に気にかけていたらしい。
父の仕事の関係で、母は頻繁に転校を繰り返していた。
最初の頃こそ新しい学校に慣れなかったが、母の持ち前の明るさもあって次第に友達も増えていき、クラスでは人気者になっていったそうだ。
しかし、私が小学二年生になったばかりの頃にまた引っ越しが決まり、それからというもの私にとってこの公園だけが心の拠り所となりました。
ブランコに座っているときだけ、いつも決まって私の頭の中には同じイメージが流れ込んできます。それはいつも同じ風景なのですが、いつだってその景色には誰かがいました。
それが誰なのかはわかりませんでしたけれど……それでも私はとても嬉しくて楽しくて仕方がありませんでした。それというのも、私の周りには大人ばかりしかいなかったからです。小学校に入学したときにはもう両親は離婚していて、母親に引き取られていました。母の実家からは学校に通うことは許されず、ずっとアパート暮らしだったのです。友達と呼べるような存在はいなかったと思います。
だから、ブランコに乗っているときに見える光景の中で、初めて出会った同世代の男の子の存在は本当に貴重でした。
名前は知りません。
顔もよく覚えていません。
一緒に遊んだ記憶なんてありませんよ? 私の知る限りですがね。
あの子はいつも独りだったんですから。
だから私も必要以上に近づきませんでした。
別にいじめられたとかそういうんじゃないですよ。
単に他人に興味がなかっただけですね。
それなのにどうして今になって……。
はあ……もう好きにしてください。
えぇ、はい。じゃあそうしますんで。
おやすみなさい。
***
夜風が心地よい晩夏のある日のこと。
「わたしにはもう、何もない……」
少女は、つぶやく。
彼女の瞳から光が消えるとき、物語は終わるだろう。
そうしてすべてが闇に染まった世界で、彼女は静かに微笑むのだ―――
これはただの妄想ではない。
彼女が僕に見せてくれた夢だ。
あの日、あの瞬間まで僕は、彼女と二人でいたんだ。
だから僕は彼女を忘れたりなんかしない。
たとえどんな結末を迎えようとも、その先にある新しい物語のために。
「あなたの名前は?」
「……名前なんて、忘れちゃいましたよ」
「じゃあ、私がつけてあげる!」
「えっ!?」
「そうだなぁ~、あなたの目はとても綺麗だし、それに似合う名前がいいよね! んーっとね、うん決めた!! あなたの名前は、ハル!!」
「ハ、ル? ははっ、なんですかそれ?」
「ふふん♪ ハルちゃんっていうのよ! 今度からそう呼びなさい!」
「えっと……はい。わかりました」
「ちょっと待てぇい!! 納得できるわけないだろ!? なんで春香さんじゃなくてお前なんだよ!!」
「仕方がないでしょう? あなたたちがどうしてもって言うから……」
「俺たちは別にそこまで言ってねぇよ!」
「それにしてもさぁー、これってどういうことなのかなー?」
「そ、それはですね――」
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!