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私
には、友人がいる。
大切な親友だ。
その日もまた、二人で一緒に帰路についていたのだが、突然彼女は立ち止まった。
私の顔を見つめながら、何か言いたいことがあるようだった。
私は彼女からの言葉を待った。
しかし一向に話し出す様子がない。
彼女の視線から察するに、私が何か言わなければいけないらしい。
少し考えてみたが何も浮かんではこなかった。
だから私は、ありのままの言葉を口にすることにした。
そうすればきっと伝わるはずだと思ったのだ。
だが、それはほんの一部に過ぎない。
彼の本質は……ただ一つだった。
「僕は僕だ」
そう言い切った彼から、 もう目を逸らすことはできないだろう。
私は、彼を救わなければならないのだ。
私の使命だ。
私が私であるために、必ず成し遂げなければならないことなのだ。
たとえそれが、どれほど困難な道であろうとも。
彼は、まだ何も知らないだけだ。
だから、教えてあげよう。
本当のことをすべて。
彼は、きっとわかってくれるはずだ。
私が彼に嘘をつくはずがないのだと。
彼が信じるべきなのは、他でもない自分自身だということを。
「さぁ、はじめましょう。」
彼と私の物語を始めよう。
今こそ始まるんだ! そうだろ?
「ねぇ、知ってる?」
「うん、知ってる。あの子でしょ?」
「えーっ、そうなの!?」
「うん……」
「でも、どうして急に?」
「さあね。
私にはよくわからないわ」
「ただ一つ言えることは……」
「彼女は、あなたを信じているということ」
「そうですか? 僕なんてダメですよ」
「そんなことない! キミはとても優しいんだから!」
「本当に困ったときは、必ず助けてくれるもん!」
「ありがとうございます。
なんか照れるなぁ~」
「あの子にとって、あなたは初めてできた友達だから」
「そうなんですか!?」
「えぇ……」
「なるほどね!」
「はい……」
「ふーん?」
「……」
「うっそだぁ!!」
「本当ですよ」
「あっ!今笑ったでしょう!?」
「いえ……」
「笑ってないなら、こっち見て言ってくださいよぉ!」
「失礼しました……」
「やっぱり!!絶対笑いましたよね?ねぇってば~!!」
「……」
「ちょっと、無視しないでくださいよぉ!!」
「あのですね……その辺にしてもらえますか?」
「だってぇ……」
「いいですか?僕は忙しいんですよ。あなたの相手をしている暇はないのです」
「ぶぅ~!」
「ぶぅ~じゃないです。まったく……」
「じゃあ、私も仕事に戻りますから!」
「そうして下さい」
「あとでまた来ますからね!逃げちゃダメですからね!!」
「わかりましたから、早く行って下さい」
「むきぃー!!」
「なんなんでしょうか、あの人は……」
ここは、とある小さな街の喫茶店である。
店の中は静けさに包まれていて、客の姿もほとんど見当たらない。
店内にはマスターと思われる男が一人だけで、カウンター越しに向かい合う二人の男女の声だけが響いている。
男の方は落ち着いた雰囲気のある青年だが、女性の方は子供のような見た目をしている。
しかし、外見とは裏腹に女性はとても落ち着いていて、大人びて見えた。