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黄色い星が上る

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黄色い星が上る

10 - 第10話先生

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2022年09月28日

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の名前は、一ノ瀬愛理沙(いちのせあいり)。今日から高校2年生になる。ちなみにクラス替えはまだない。去年と同じメンバーだ。担任も同じ先生だった。

始業式を終え教室に戻るとホームルームが始まった。このあとは新入生歓迎会があるらしい。毎年恒例だと聞いている。私は特に興味がなかった。新しい出会いなんて求めていないからだ。ただ一つ気になっていることがあるとすれば、それは今年から共学になったということだ。男子がいるということに対してあまり実感がない。中学まで女子校だったので違和感しかないのだ。だからと言って全く気にしていないわけではないのだが。

放課後になった。私はいつも通り帰宅しようとしたその時、「ねぇー!一緒に帰ろ!」と言われ振り返るとそこには一人の女の子がいた。彼女は親友である宮森真菜(みやもりまな)ちゃんだ。小学校からの付き合いなのでとても仲が良い。

「うん、いいよ。」と私が言うとその隣にいた男が言った。

「お前ら二人共いい感じだよ。お似合いだ。」

私はこの台詞を聞いて少しばかり嫌気が差した。だってそれはつまり、「お前らは恋人同士ではない」と言っているようなものだから。私達二人はただの友人であって、それ以上でもそれ以下でもないのだ。私は彼の事が好きなのだが、彼もきっと同じ気持ちを抱いている筈なのに何故このような事を言われなければならないのか。

私はその時とても腹立たしくなって、思わずその場を離れてしまった。勿論、彼と離ればなれになるのはとても辛い事だった。だけど私は、これ以上あの場にいる事は耐えられなかったんだ。

それから暫くして、彼は私の元を訪れるようになった。

「あぁ……また来たのか……」

「今日もお邪魔していますよ」

彼の来訪を拒む理由は特にないのだが、ただ単に少し鬱陶しい。それだけだ。

しかし、この男はいつも笑顔を絶やさない。

きっと私のように表情筋を動かすことを忘れてしまった人間とは違うのだろう。

「貴方も毎日大変ですね」

「いえ、好きでしている事なので苦ではありませんよ」

彼は私の事を”先生”と呼ぶ。

それは私が医者だからなのか、それとも別の理由があるのか分からない。

彼は何時もの様に世間話をしてくる。

別に話を聞いて欲しい訳でもないのだが、誰かに聞いて欲しくもある。

だが、誰とも話したくない時だって当然あるのだ。

だからと言って何もかも放り出すつもりはないが。

それでも自分の気持ちの整理のためにも、ここに吐き出しておこうと思う。

まず最初に断わっておくが、俺は人付き合いが得意ではない。

特に初対面では緊張してしまい、何をしゃべったら良いのか分からなくなることが多い。

しかし、それは決してコミュニケーション能力が低い訳ではないと信じている。自分の考えを相手に伝えることが苦手だというだけで、むしろ口下手な分、相手の気持ちを考えすぎてしまいがちだ。

だから相手に迷惑をかけまいとして遠慮してしまうのだ。

その結果、相手を傷つけてしまったりすることもあるかもしれないが、それも仕方ないと思っている。

だって自分は人付き合いが得意ではないのだから。

それでも、なんとかしたいと思ってしまうのだが。

自分のことを分かってほしいと思う。

だけど理解されなくてもいいとも思う。

自分にとっては、この世界で生きていけるかどうかの方がずっと重要な問題なのだから。

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