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俺はふわっとした感覚に陥っていた。何もかもが心地よくて気にならない。
食べないことを開始してから7日経ち、思考はすっきりとして、何もかもはっきりとして見える。
4日目を越えた辺りから、これに似た感覚はあったが、今日は一段と強くなっている。
今、朝飯を食べている豚達をみても、羨ましいと思わない。
例の白豚もちょうど朝飯を食べている。相変わらず綺麗な顔だなと思う。見れば見るほど胸の鼓動が速くなり、それ以外は考えられなくなる。
それはとても苦しいものだが、不思議と嫌な苦しさではない。
ただ、先程のはっきりとした感覚は無くなり、とても落ち着かなくなる。
俺はムクッと立ち上がり、ブンブン横に頭を振った。何度もしている内に、この感情はましになる。食べないことで高尚な豚である事を示す自分にとっては、必要のない感情だ。
いつもはこの白豚を目に入らない様にしているのだが、今日は油断した。
あいつは何故か俺の視線の先にいる。まぁ、遠回しなアピールとみて間違いない。
ジョージ『あいつ、病気じゃないですか』
トニー 『ちげぇよ、あの豚飯食わねぇんだよ』
トニーとジョージが俺を見ながらそう言う。さすがに豚に関心が無くとも、今の俺を見ると気にせざる負えないのだろう。
自分の事はボソボソ話されていても、何となく聞こえるものだ。
ブヒーブヒーとおれは二回鳴いた。
トニーとジョージにすれば、100頭の中の一匹の豚の鳴き声でしかなく、こちらに視線を送ることはなかった。
俺は『処分しないでください、処分しないでください』と二回鳴いていた。
トニーとジョージがボソボソ言っていた時に、『あいつを処分』とだけは聞こえた。
食べないことで死ぬことは良い、だが、やつらの都合で処分されるのは我慢ならない。
食べるしかないのか、いや、食べれば高尚な豚にはなれない。諦めて食べればあの白豚と少しの間でも、幸せな時間を過ごせるだろう。答えがでないまま眠れない夜を過ごした。
ギィーギィーギィーギィーギィィィンと言う聞き慣れない音で俺は目覚めた。