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僕の毎日は、色のないモノクロなものに変わってしまった。彼女が突然いなくなってから一年。未だに立ち直れていない僕がいる。今日は高校の入学式だと言うのに。

「僕、何もわからないまま高校生になっちゃったよ…?」

そんな問いかけをしてみるも、もちろん誰も答えてくれるわけがなく、僕は一人ため息を漏らす。

「きっと彼女の意志じゃない。誰かにそそのかされたんだ。」そうやってどんなに思い込んでも『彼女が望んで僕の元を離れた。』そんな考えが頭をよぎる。

「いい加減、立ち直らないと。」

そう決意して学校へ向かった、はずだった。


学校に着いて早々ため息を漏らす。新しいクラスメイトにツッコまれるも、僕の頭の中は彼女のことでいっぱいになっていた。そう、立ち直る決意が出来ていない証拠だ。

そういえば、圭(けい)のところにまだ行ってなかった。圭は僕の2個上の高三。でも小学校からの仲だから今さら先輩とは思えない。学校に着いたら挨拶にでも行こうかと思っていたが、面倒くさくなってしまった。

「お前の教室はここだから。覚えたな?」

お、噂をすれば圭だ。誰か案内してるのか?

「うん!ありがと〜。先輩!」

「そう、学校ではそう呼べよ。あと敬語もな。」

圭ったら、先輩ヅラしちゃって。僕は先輩なんて呼ばないからね〜。それにしても、女子生徒の方、どこかで聞いたことある声…。

「はーい。それじゃあまたね。」

「おう、またな、楓(かえで)。」

…楓?楓って、まさか!?

「楓っ!!」

「え、はいっ!」

ほんとに、楓だ。約一年前―春がもう終わるという頃―に、恋人である僕に別れを告げていなくなった彼女。どうしてここに?それよりも…!

「今まで、どこにいたんだよ…!どうして突然いなくなったんだよ…っ。」

「春樹、くん…?」

僕がなにかしてしまったのか、単純に冷めたのか、楓になにかあったのか、ものすごく考えて塞ぎ込む日々が続いたというのに。今はこうも簡単に僕の目の前に現れた。若干の苛立ちを覚えながらも僕は楓に聞く。

「僕のこと、そんなに嫌だった?嫌だったなら直接…」

「ちょっと待って、ストップ!」

楓の制止の声でやっと我に返る。僕は何をやっているんだ。やっと再会出来た楓に向かって質問攻めなんて。しかも見てみろ。入学早々の教室のど真ん中でこんな喧嘩をして、教室内からも廊下からも生徒達が僕たちを見ながらコソコソと話しているじゃないか。

「お互い聞きたいこと、話したいことあると思うし、放課後に落ち着いて話そう?」

「…そうだね。ごめん、突然。」

「ううん、いいの。」

そう言って楓は少し笑った。やっと見ることが出来た。君のその嬉しそうな笑顔に、僕は初めて恋をしたんだ。そして今も、既にどうしようもないくらいに君が好きなのに、もう一度、恋に落ちたような気がしたんだ。


朝は色々あったけれど今はあっという間に放課後。楓に色々聞かないといけないし、謝らないといけない。きっと楓がいなくなったのは僕が原因だから。あれこれ考えているとドアを開ける音がした。

「ごめんね、待った?」

そう言いながら申し訳無さそうに楓が僕の表情を伺う。言葉からその動作までが、まるでデートのときのよくある会話に見えてきて胸が高鳴った。僕は慌てて会話の続きを言う。

「ううん、待ってないよ。」

これが本当にデートだったらよかったのに。不覚にもそう思ってしまった。

「圭くんも呼んだんだけど、まだ来ないね。」

また、圭。でも今回は圭を呼んでもらえたのはありがたい。朝、圭はなんで楓と普通に話していたのか聞きたかったからだ。

「すまん、遅れた。」

圭はなぜこんなにもタイミングがいいんだ。僕の心読んでるだろ。

「遅い。」

「だから悪かったって。」

圭と小さな言い合いを交えてから本題に戻す。

「楓。今までどこにいたんだ?」

聞いてしまった。もう後には戻れない。質問を止めることは、もう出来ない。止めてしまったら何も喋れなくなるから。

「春樹くんと別れてからは隣町に、最近は圭くんの家の近くに住んでるよ。」

「…圭はいつから、なんで楓と会ったの?」

「楓が、俺の家に来たんだ。丁度一ヶ月前に。」

……楓が?付き合っている時、一度も僕の家に入らなかったあの楓が?身体の芯が冷える。もしかして、楓は圭のことが…?嫌だ、そんなわけない。信じたく、ない。

「なんで、僕と別れたの…?」

「えっと、それは…。」

聞きたくない。でも、今ここではっきりさせないとこの先僕が苦しくなる。楓は優しいから、僕が傷つかないように嘘をつくのかな。

「昔からの友人が、重い病気で、余命宣告…されちゃったの。どうしても最期まで一緒にいたかったから、入院してる病院がある隣町まで行ってたの。」

「病院…。でも、それなら別れることはなかったんじゃないか…?」

「友人が亡くなるかもってときに、恋愛とか、そういうのを考える気にはどうしてもなれないと思ったから…。」

そんな理由が…。なら、僕にもまだチャンスはあるんじゃないか?それとも、楓は今もまだ駄目なのか…?


「楓は、まだ僕のこと好き?」

永遠の春を望んでいた

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