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ーー瞬間、ミオの身体に閃光が走る。しかし痛みは無い。
「ーーえっ?」
表向きは何事も無いそれにミオは動揺する。
「ね、痛みは無いだろう? 君の時を止めた。これで君はその姿のまま悠久を生きる事が出来る。ユキはその成長を待って時を止めるつもりだったけど、君は初潮も迎えているし、充分ユキの子を産めるから必要無いね」
「そ、そんな……」
「ミ、ミオ……」
その事実にミオは打ちひしがれた。そんな彼女をアミは抱き締める。
「アミ、ミオ、ごめん。ごめんね……」
そしてユーリも二人の下へ。三人は絶望に泣きじゃくった。もう、どうしようもなく逃れられぬ運命に。
「悲しむ事はない。必ず彼に、もう一度逢えるから」
そう三人へ贈るノクティスのフォローは、フォローになっていない。そういう問題ではないのだ。
エルドアーク宮殿は大気圏外へ向けて、ゆっくりと上昇していく。通常、地球の大気圏外へ脱出するには重力の関係上、第二宇宙速度(11.2km/s)が必要なのだが、まるでその必要は無いとばかりに。
「ーーさあ、新たな門出の祝いだ。共にこの星の最期を見届けよう」
そう語るノクティスには最早、何の未練も感慨も感じられない。ユキの居なくなった世界は無価値であり、最期を司り愉しませる花火の様なものでしかない。
一つの世界が終わり、新たな世界へと。永遠に繰り返される、多元宇宙に於ける消失の連鎖。
上昇を続けるエルドアーク宮殿が、高度一万に達したその時だったーー
“何を勝手に幕を引いているんです? これからですよーー”
頭の中に直接囁かれるようなその声を、全員が確かに聴いた。
『ーーユキ!?』
その声は確かにユキのもの。しかし辺りを伺っても、彼の姿は何処にも無い。
ユキの姿こそ見えないが、確かに気配は感じる。その中の一人、ハルは驚愕にうち震えていた。
“生体反応ーー再構築!? まさか……あり得ない!”
サーモの反応が示したもの。それは確かに、消失した筈の彼ーーユキの反応。
刹那ーー無数の光の粒子が宙に顕れ、一つに集約していく。
『まさか……?』
その光景に誰もが眼を見張る。集約した粒子は、何か一つの形に成ろうとしていた。
そしてーー
“level399.99%over”
※※※※EMERGENCY※※※※
――ハルの、そしてユーリのサーモより、一斉に警告音が鳴り響いた。これは臨界突破反応。だが何時もの警告音とは、何処か異なっていた。
「なっーー何この、嫌な音は!?」
ユーリはその音に嫌悪感を示す。ここまで危機感を煽る、甲高い不吉な警告音を彼女はこれまで聞いた事が無い。
「最終コード、解除……。遂に最奥のーー終焉の扉が開かれてしまった」
放心したように呟くハルは、既に心此処に在らず。
一体何が起きたというのか。続けて独特の機械音声が、サーモよりアナウンスされた――
※対象者臨界値『400%』超を計測突破――
※『CODE:03990400』よりモードチェンジ――
※最終コード『コード:ファイナルナイン』を解除――
※※※※EMERGENCY※※※※
※本機はこれよりモード『インフィニティ』へ移行します――
※時空障壁崩壊及び宇宙法則乱入の危険度極大――
※ただちに大気圏外への離脱から最寄りの惑星もしくは――他天体へと避難してください――
※※※※EMERGENCY※※※※
…
――――――――――――――
※最終コード~臨界値400%超
※最終第四マックスオーバー
※モード:インフィニティ
対象level 499.99%
※危険度判定 ∞
――――――――――――――