15 忘れられない日。
今日もバイト。
『失礼しまーす』
「やっほ!」
『お願いします』
「ねぇー、もうちょい俺に優しくしてよ〜」
『……あ、はい』
「店長ー!俺嫌われたかもー」
『え〜、ごめんなさい、嘘です!ふふっ』
「そうなの!?ふふっ」
手塚さんと話してるとなんか、気分が楽だから、ああやって、煽りたくなっちゃう。
いいよね。手塚さんなら。
カラン。そんなベルの音で私のバイトの1日が始まった。
『いらっしゃいませ。こちらの席どうぞ』
『今週はいちごオレがおすすめですよ』
「じゃあ、それで」
バイト終わり。
「ねぇ、○○ちゃーん」
「今日こそ一緒に帰ろ」
『いいですよ』
「え、!いいの!?」
『ふふっ、早くしてくださーい』
・
夜道、気にしてくれたのだろうか。
今日は、やけに寒い。きっと手塚さんも。
「○○ちゃんはさ、彼氏いないの」
『いませんよ…』
「そーなんだ。なんかあったの」
『…少し、あって』
「聞いても、いい?」
『…………』
「嫌なら、いいけど」
『いいですよ、教えます。』
私の高校生活のあんな恋が、知られていいのか迷ったけど、知りたそうにするから。
話してって、見つめてくるから、、
「先生との、恋なんだ」
『……はい』
「告白は?したの」
『しましたよ、でも、』
・
『先生…、私』
『私……先生の事っ、好きです』
「雨、止まねぇな。」
もう言う頃には失敗だって、わかってたのに、今まで心の中にあった気持ちから開放されたくて、口が動いてしまった。
『先生、、!』
「違う。お前は俺なんか好きじゃない」
『……え、?』
「よく言うだろ。恋に恋する、って」
「姫野は現実から逃げたいだけ。『先生と生徒の恋』って言う非現実的な世界に逃げ込んだだけ。」
『……そんなの、、!』
「今はそんな大きい気持ちも、ちょっと経てば小さくなって消えるから。」
『……そんなんじゃ、ない』
「ごめんな。俺が行き過ぎてた。態度が悪かった。」
「すまない」
先生は体を曲げてお辞儀した。
『違うもん、私は嬉しかったもん……!』
『先生に、抱きしめてもらって、嬉しか…』
「生徒に『抱きしめられて嬉しい』なんて思わせちゃ、駄目だろ、オレ。」
『……』
「俺が教えるのは学問。色恋じゃない。」
その場から1歩も動かず喋る先生は、もう私との距離を縮める気なんてないんだって、態度で語っているようで、悲しい。
「オレは、オレを『先生』なんて呼ぶ奴と、恋愛する気は無い。」
先生の言う一つ一つの声が痛かった。
・
「どうした?」
『え、いや、』
「ごめん、やっぱ聞くもんじゃなかったね。」
『今日は、帰ります、』
思い出しちゃったよ、
まだあのときの会話を明確に覚えてるって、
気持ち悪いかな。
コメント
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切な過ぎて……😖 あ、渡辺のドラマ見ました?