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画良歩瑠中学校・屋上
私は、すっかり錆びた手すりを握りしめた。
どうしよう、最後に一回だけでも………。
「ううん…………もういいや。」
私は涙が出そうな目をぎゅっとつむって、首をぶんぶんふった。
制服のポケットから手紙を出した。
靴を脱いで、そこに入れた。
少ししかない力を振り絞って、手すりに登る。
さようなら。
ドンッ
それは、私の体が屋上から落ちた衝撃音ではなく、手すりから落ちた衝撃音だった。
「お前、なんてことしようとしてんだよ!?」「あ、青野君…」「桃野だっけ?お前はそんな事するやつなのか!?俺の見たことある桃野じゃねぇぞ。」
だって……
「全国大会進出・最優秀賞は…………○○○○さん!」
どくんっ
今までで大きな心臓の音が鳴ると、体の力はどこかに吸い取られたように抜けた。
姉さんの命が事故で奪われてしまってから、私はもう一つ大好きなピアノに没頭してた。
大会で弾く曲も、姉さんが大好きだった「ピアノソナタ第11番」にした。
でも、その思いも努力も県大会で水の泡になった。
だから…………っ
「だから私も姉さんのところに行きたいの。ただそれだけ。」「おいおいちょっと待てよ。」「何?」「死ぬなら、俺と勝負してから死ね!」「はっ…?何言ってんの?バカじゃないの。」「俺だってピアノできんの知ってんだろ?自己紹介で言っただろ。」「………。」
「青野葵です。ピアノやってます!」
「確かにそうだけど……でも、それとこれとは__」「だったら、俺とピアノで勝負してくれ!」「………………。」
この人は何を言っているんだろう。意味が分からない。
引き受けて得られる価値があるかもわからない。
だったら、私はここで死んだほうが___
「受けてあげなさい。」「こ……校長先生……………!」
屋上の入口には、採鳥色羽校長先生がいた。
うそっ、今のやりとり聞こえてた!?
「ピアノで勝負するくらいなら、とてもいいことじゃないかしら。クラスメイト同士で競い合うのは、悪いことではないと思うわ。」
校長先生の話す内容だと……私が自殺しようとしたことは、知られてないみたい。
「まぁ、ピアノの勝負なら…。大丈夫です。」
私は重々しく承諾した。
「それより2人とも。」「「はい。」」
校長先生はにこりと笑いながら、笑顔に似合わない言葉を放って去っていった。
「早く帰りなさいね。」「はっ……はいぃ!」「わかりましたぁ!」
青野君はこちらをちらりと見て「ありがとな!」と言ってから、大急ぎで帰っていった。
私も………今日を最後まで生きる理由ができてしまったし……帰るか。
コメント
1件
え待って!続き気になりすぎる!ふらんすぱんさんの表現の仕方めっちゃ好み〜!他作も好きだよ!応援してますっ!