船のキャビンへ誘い、備え付けのソファーに隣り合って腰を下ろした。
「ホテルの部屋みたい……広いんですね…」
彼女が落ち着かない風で室内を見回す。
「一泊ですが快適な海の旅にしたくて、オーシャンビュースイートにしました。窓の外を見てもらえますか?」
私の指を差した窓辺に彼女が寄り外を眺める。
「本当に海がよく見えて綺麗で……一臣さん、こんなに素敵な贈り物を、ありがとうございます」
彼女のそばに立って行って寄り添い、肩を抱いた。
「私は、あなたからたくさんの贈り物をもらいました。
だから、ありがとうと言いたいのは、私の方ですから」
彼女がゆるゆると首を左右に振る。
「そんな……いつも抱え切れないくらいの思い出をもらっているのは、私なのに」
言う彼女の顎を片手で捕らえると、
「私には、あなたといることの全てが思い出になるので」
思いのままを伝えて、口づけると、
触れ合った唇から、温もりがあたたかく流れ込んで伝わるようだった。
──船がゆっくりと動き出して、「船の中を見てみたいです」言う彼女と、連れ立って船室を出た。
キャビンフロアを上がると、広めのステージを兼ねたディナーホールがあって、
「ここで、夜にはお食事を……」と、彼女は嬉しそうに目を輝かせて、「海を眺めながらのディナーなんて、素敵…」うっとりとした表情で話した。
「ディナーは、オマール海老のローストと牛ステーキがメインになっていますので」
「美味しそう、今からとっても楽しみです」
楽しげに笑う彼女の顔を見ているだけでも、連れて来ることができてよかったと感じる。
バーラウンジやカジノスペース、ショップが立ち並ぶ通路を巡ってデッキに出ると、ジャグジーがあるのが目に入って、
「足を入れてみてもいいですか?」と、彼女が駆け寄って行く。
ジャグジーの淵に座りスカートを膝の辺りまでたくし上げると、泡立って沸く中へ両足をちゃぽんと差し入れた。
「あったかくて、気持ちいい」
向けられた笑顔の愛らしさに、背後に膝をついて後ろから腕を回し首筋を抱えた。
「……恥ずかしいから…」
人目を気にする彼女に、「恥ずかしいことなど、何も……」と、頬を擦り寄せた。
「あなたといられて、幸せです」
柔らかな肌の触れを感じながら口にすると、
「私も、幸せ」
はにかんで頬を染めた彼女から言葉が返り、さらにぎゅっと強く腕に抱きしめた……。
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