コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
こんにちは!こうちゃです。
第6話になります。 注意事項は第1話をご覧下さい!
前話のアーサーに嫌われたかも、とフランシスが考え始めるより少し前のお話です。アーサー視点で何があったのかお話が進んでいきます。
キャラもどんどん増えていくのでぜひ楽しんで貰えたら嬉しいです!
キーンコーンカーンコーンと授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響く。途端に教室や廊下が喧騒にのまれた。俺が教科書とノートを机の中に突っ込み、いつものように生徒会室で昼食を取ろうと立ち上がった時だった。
「カークランド、少しいいか?」
教室が一瞬ピリッとした空気に包まる。それもそのはず、俺に話しかけてきた教師は校則にものすごく厳しいことで有名なやつだった。頭の中で心当たりを探しながら、急いで教師の元へ走る。
「……は…はい…」
残念ながら原因は分からず、恐る恐る彼の前に立つと買って間もないであろう新品のゲーム機を渡された。
「すまないがフランシスにこれを返しておいてくれないか?あとお前からも注意してやってくれ」
頼んだぞ、と言われ訳が分からず尋ねる。
「え…あの…なんで俺が…?」
「だってお前、フランシスの弟なんだろ?」
「……は…はっ!?」
誰が、何の、なんだって!?
あまりの事に頭がついていかずその場で固まっていると
「じゃ、よろしくな」
と言って先生は忙しそうに走って行ってしまった。引き止めてでも否定すればよかった、と後悔がどっと押し寄せてくる。しかし、どれだけムカついても生徒会長として先生に頼まれた仕事は絶対に遂行しなければならない。俺は弟だと思われていたショックを抱えながら高校棟へと向かった。
「くそっ…どこだよ、あいつ…」
高校棟まで来たはいいものの、2年生のフロアが何階かまでは分からなかった。中学生は珍しいのか周りからちらちら見られていたたまれない。うろうろと廊下を彷徨っていると後ろから聞き慣れた声がした。
「あら…アーサーさんではないですか」
「…菊!久しぶりだな!」
「そうですねぇ…体育祭の時ぶりでしょうか」
菊は高校棟の生徒会書記をやっており、何度も顔を合わせた旧知の仲だ。久しぶりに話せたのが嬉しくて駆け寄ると菊もふわりと笑みを返してくれた。
「アーサーさんはこんな所でどうされたんですか?」
「あぁ…えっと、フランシスを探してて」
「それなら1つ上の階ですね。ここは3年生のフロアですから」
「そうか、Thanks」
「いえいえ…兄弟仲の良いことは素晴らしいことですから」
「……は!?兄弟!?」
いくらなんでもこれは酷い。酷すぎる。強いショックで唖然としていると聞くが慌てて口を開く。
「すみません、違いましたか…?」
「全然違う!!」
「申し訳ございません…仲が良いのでてっきり……」
「俺とあいつじゃLast nameが違うだろ!」
「そ…それは家庭の事情とやらもございますし…」
菊にまであいつの弟だと思われていたのが信じられなくてぐっと唇を噛むと、菊が焦ってすみませんと謝る。
「……きくのばか」
「あああ…!すみませんすみません!お詫びに私がフランシスさんの教室までご案内しますから…!」
ね?と菊に言われて渋々頷く。ここでこの誘いを断るのは紳士的じゃない。菊の後について近くの階段を上り、そこから少し歩いたところで菊が立ち止まった。ここがフランシスの教室なんだろう。
「あら…フランシスさん…いらっしゃいませんね…」
菊が困ったように眉を下げる。せっかくここまで来たのに渡せずじまいは嫌だった。菊の後ろから教室を覗いているとまたしても後ろから声をかけられる。
「あれ、菊ちゃんやん、なんかよう?」
「菊がうちのクラス来るなんて珍しいぜ!」
ふそそやらケセセやらよく分からない音が聞こえて顔を上げると、銀髪の方とバチンと目が合ってしまった。
「ん?中学生のガキがなんで高校棟にいるんだ?」
「こら、ギルベルトくん。口が悪いですよ」
言い返そうと口を開く前に菊が銀髪をたしなめる。菊はすみませんと謝ったあと紹介しますね、とひとつ咳払いをした。
「アーサーさん、こちらアントーニョさんとギルベルトくんです。お二人とも、こちらはアーサーさんですよ 」
「ん…?アーサーって、あれやろ?フランの弟の!」
「あー!坊ちゃんか!」
「…は……」
なんだ…なんなんだこれ…今日は厄日なのか?あまりのことに口を開いたまま絶句していると菊が顔を引きつらせて苦笑いする。
「いえ…あの…アーサーさんは…」
「フランになんかようなん?今あいつ購買で昼飯買っとって…あ、その手に持っとるんフランのゲーム機やん!」
「おー!あの没収されたやつ!お前取り返してきたのか!すごいぜ!さすがフランの弟だな!」
「あ…あの…ですからお二人とも…」
「フランには俺らから返しといたるで!ほら!」
菊の声が聞こえていないのかペラペラと話しまくったあげく手を差し出してきたアントーニョに怒りで肩がブルブルと震える。あわあわと慌てる菊を他所に俺の堪忍袋の緒は切れた。
「…っお前らなんか全員嫌いだっ!!!ばかあああー!!」
アントーニョの手にゲーム機を押し付けて中学棟の方へダッシュで走る。
「あっ…アーサーさん…!」
菊が追いかけてくるのがわかったが、振り切るようにして走って逃げた。