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みどりいろと忘夢
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第5話、読み終わりました。新しい常連さん・零雨さんのキャラが立ってて良いですね。泣きながらも「ああいう生活」に憧れるシーン、切なくも温かかったです。みどりが「肉」を勧める無邪気さと、コナータミソンの「大きな変化」の予言が絶妙に絡んで、伏線がまた増えた感じがします。次回が楽しみです。
コンタミを出てから、数分。
「…………」
俺は隣を歩くみどりを見た。
「…………」
みどりも俺を見る。
「……なぁ」
「なに?」
「さっきの占い、どう思う?」
「お腹減った」
「お前に聞いた俺が馬鹿だった」
結局、コナータミソンに聞いても、みどりについて分かったことはほとんどなかった。
むしろ謎が増えた。
「未来が見えない、ねぇ……」
「うん」
「お前、何か隠してたりしない?」
「してないよ」
「本当に?」
「うん」
「……まあ、いいけど」
みどりが俺の服の裾を引っ張る。
「らだ男」
「ん?」
「さっきの店」
「コンタミ?」
「また行きたい」
「なんで?」
「絵があった」
「ああ」
確かに、あの店にはたくさんの絵が飾られていた。
「絵、好きなの?」
「ワカラン」
「分からないこと多いな、お前」
「うん」
「そこは否定しろよ」
その翌日。
俺は大学帰りに、またコンタミへ向かっていた。
「……なんで来たんだっけ」
「絵」
「はいはい」
ドアを開ける。
カラン。
「いらっしゃいませ」
「どうも」
昨日と同じように、コナータミソンが店の奥に座っている。
「おや。昨日ぶりですね」
「どうも」
みどりが店内を見回す。
「絵」
「ええ。ご自由にご覧ください」
「ありがとう」
みどりはトコトコと絵の方へ向かっていった。
俺も適当に椅子へ座る。
「……ここ、他にお客さん来るんですか?」
「ええ。結構来ますよ」
「へぇ」
「特に一人、よく来る方がいまして」
「誰です?」
「もうすぐ来ると思います」
「そんなピンポイントな……」
そのとき。
カラン。
店のドアが開いた。
「…………こんにちは」
入ってきたのは、一人の男だった。
スーツ姿。髪は少し乱れていて、目の下には疲労が浮かんでいる。
そして。
「…………」
何故か泣いていた。
「いらっしゃいませ」
「…コナータミソンさん……」
「はい」
「……今日も……」
男は目元を拭う。
「今日も会社が……」
「なるほど」
「まだ俺何も言ってないですよ!?」
「顔を見れば分かります」
「そんなに分かりやすいですか俺!?」
俺は黙って二人を見る。
みどりも見る。
「……誰?」
「常連さんです」
「はじめまして……」
男が俺を見る。
「……伊田場零雨です」
「青井らだ男です」
「……よろしくお願いします」
「こちらこそ」
その時、レウがまた泣き始める。
「……どうしたんですか」
「いや……人とまともに話すの久しぶりで……」
「そこまで!?」
コナータミソンが紅茶を淹れる。
「レウさん。今日は何を占いましょう?」
「……仕事です」
「いつものですね」
「はい……」
零雨は椅子に座った。
「昨日、上司に怒られて……」
「はい」
「今日も怒られて……」
「はい」
「明日もたぶん怒られます……」
「でしょうね」
「否定してくださいよぉ……!」
俺は思わず吹き出した。
「……すみません」
「笑ってます?」
「ちょっとだけ」
「ひどい……」
その時、俺の隣に座っていたみどりが零雨の隣に座った。
「泣いてる」
「……泣いてます」
「悲しい?」
「悲しいです」
「じゃあ食べる?」
「何を?」
「肉」
「なんで?」
「腹いっぱいになると元気になる」
零雨がしばらくみどりを見る。
「…」
「…」
「……確かに」
「納得するんだ」
しばらくして。
コナータミソンがカードを並べ終えた。
「……なるほど」
「どうですか?」
「明日は少し良い日になるでしょう」
「本当ですか!?」
「ええ」
レウの顔が少し明るくなる。
「よかった……」
俺も少し安心した。
すると。
「ただし」
「……ただし?」
「あなたの身近で、大きな変化が起こります」
「……え?」
零雨が固まる。
「悪いことですか?」
「さあ」
「さあ!?」
「それは、あなた次第です」
「そんなぁ……」
みどりが首を傾げる。
「大きな変化?」
「ええ」
コナータミソンはみどりを見る。
「……あなたの近くにも、すでにありますよ」
「?」
俺はみどりを見る。
みどりは何も分かっていない顔をしていた。
「……まあ」
俺は立ち上がる。
「そろそろ帰るか、みどり」
「うん」
「零雨さんも、頑張ってください」
「ありがとうございます……」
「じゃあまた」
「……はい」
俺たちは店を出た。
カラン、とベルが鳴る。
店内に残された二人。
零雨がコナータミソンを見る。
「……あの子、何者なんですか?」
「さあ」
「さあって……」
コナータミソンは笑った。
「ただ」
「?」
「面白い子ですよ」
「……そうなんですか」
「ええ」
レウは窓の外を見る。
そこには、らだ男とみどりが並んで歩いていた。
「…………」
「どうしました?」
「いや……」
レウは少しだけ笑った。
「なんか、いいですね」
「何がです?」
「……ああいうの」
そして。
レウはまた泣いた。
「俺もあんな生活したい……」
「仕事を辞めればいいのでは?」
「それができたら苦労してませんよぉ!!」
コンタミに、今日も泣き声が響いた。