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45
#ntjo組
ゆかボンド
30
コンタミを出てから、数分。
「…………」
俺は隣を歩くみどりを見た。
「…………」
みどりも俺を見る。
「……なぁ」
「なに?」
「さっきの占い、どう思う?」
「お腹減った」
「お前に聞いた俺が馬鹿だった」
結局、コナータミソンに聞いても、みどりについて分かったことはほとんどなかった。
むしろ謎が増えた。
「未来が見えない、ねぇ……」
「うん」
「お前、何か隠してたりしない?」
「してないよ」
「本当に?」
「うん」
「……まあ、いいけど」
みどりが俺の服の裾を引っ張る。
「らだ男」
「ん?」
「さっきの店」
「コンタミ?」
「また行きたい」
「なんで?」
「絵があった」
「ああ」
確かに、あの店にはたくさんの絵が飾られていた。
「絵、好きなの?」
「分からない」
「分からないこと多いな、お前」
「うん」
「そこは否定しろよ」
その翌日。
俺は大学帰りに、またコンタミへ向かっていた。
「……なんで来たんだっけ」
「絵」
「はいはい」
ドアを開ける。
カラン。
「いらっしゃいませ」
「どうも」
昨日と同じように、コナータミソンが店の奥に座っている。
「おや。昨日ぶりですね」
「どうも」
みどりが店内を見回す。
「絵」
「ええ。ご自由にご覧ください」
「ありがとう」
みどりはトコトコと絵の方へ向かっていった。
俺も適当に椅子へ座る。
「……ここ、他にお客さん来るんですか?」
「ええ。結構来ますよ」
「へぇ」
「特に一人、よく来る方がいまして」
「誰です?」
「もうすぐ来ると思います」
「そんなピンポイントな……」
そのとき。
カラン。
店のドアが開いた。
「…………こんにちは」
入ってきたのは、一人の男だった。
スーツ姿。髪は少し乱れていて、目の下には疲労が浮かんでいる。
そして。
「…………」
何故か泣いていた。
「いらっしゃいませ」
「……コナータミソンさん……」
「はい」
「……今日も……」
男は目元を拭う。
「今日も会社が……」
「なるほど」
「まだ何も言ってないですよ!?」
「顔を見れば分かります」
「そんなに分かりやすいですか俺!?」
俺は黙って二人を見る。
みどりも見る。
「……誰?」
「常連さんです」
「はじめまして……」
男が俺を見る。
「……伊田場零雨です」
「青井らだ男です」
「……よろしくお願いします」
「こちらこそ」
沈黙。
零雨がまた泣き始める。
「……どうしたんですか」
「いや……人とまともに話すの久しぶりで……」
「そこまで!?」
コナータミソンが紅茶を淹れる。
「零雨さん。今日は何を占いましょう?」
「……仕事です」
「いつものですね」
「はい……」
零雨は椅子に座った。
「昨日、上司に怒られて……」
「はい」
「今日も怒られて……」
「はい」
「明日もたぶん怒られます……」
「でしょうね」
「否定してくださいよぉ……!」
俺は思わず吹き出した。
「……すみません」
「笑ってます?」
「ちょっとだけ」
「ひどい……」
その時、俺の隣に座っていたみどりが零雨の隣に座った。
「泣いてる」
「……泣いてます」
「悲しい?」
「悲しいです」
「じゃあ食べる?」
「何を?」
「肉」
「なんで?」
「お腹いっぱいになると元気になる」
零雨がしばらくみどりを見る。
「…………」
「…………」
「……確かに」
「納得するんだ」
しばらくして。
コナータミソンがカードを並べ終えた。
「……なるほど」
「どうですか?」
「明日は少し良い日になるでしょう」
「本当ですか!?」
「ええ」
零雨の顔が少し明るくなる。
「よかった……」
俺も少し安心した。
すると。
「ただし」
「……ただし?」
「あなたの身近で、大きな変化が起こります」
「……え?」
零雨が固まる。
「悪いことですか?」
「さあ」
「さあ!?」
「それは、あなた次第です」
「そんなぁ……」
みどりが首を傾げる。
「大きな変化?」
「ええ」
コナータミソンはみどりを見る。
「……あなたの近くにも、すでにありますよ」
「?」
俺はみどりを見る。
みどりは何も分かっていない顔をしていた。
「……まあ」
俺は立ち上がる。
「そろそろ帰るか、みどり」
「うん」
「零雨さんも、頑張ってください」
「ありがとうございます……」
「じゃあまた」
「……はい」
俺たちは店を出た。
カラン、とベルが鳴る。
店内に残された二人。
零雨がコナータミソンを見る。
「……あの子、何者なんですか?」
「さあ」
「さあって……」
コナータミソンは笑った。
「ただ」
「?」
「面白い子ですよ」
「……そうなんですか」
「ええ」
零雨は窓の外を見る。
そこには、らだ男とみどりが並んで歩いていた。
「…………」
「どうしました?」
「いや……」
零雨は少しだけ笑った。
「なんか、いいですね」
「何がです?」
「……ああいうの」
そして。
零雨はまた泣いた。
「俺もあんな生活したい……」
「仕事を辞めればいいのでは?」
「それができたら苦労してませんよぉ!!」
コンタミに、今日も泣き声が響いた。
コメント
1件
第5話、読み終わりました。新しい常連さん・零雨さんのキャラが立ってて良いですね。泣きながらも「ああいう生活」に憧れるシーン、切なくも温かかったです。みどりが「肉」を勧める無邪気さと、コナータミソンの「大きな変化」の予言が絶妙に絡んで、伏線がまた増えた感じがします。次回が楽しみです。