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その夜、居酒屋にて───
「では!我が営業部の救世主、黒崎くんの歓迎会を始めます! かんぱーいっ!」
「「「「かんぱーいっっっ!!」」」」
ジョッキやグラスがぶつかり合う、小気味よい音が店内に響き渡る。
金曜日の夜
駅近くの賑やかな居酒屋の座敷を貸し切って行われた歓迎会は
幹事の先輩のテンションも手伝って、開始早々から予想通りの大盛り上がりを見せていた。
その中心にいるのは、もちろん叶人くんだ。
彼の周りには常に隙間なく人が集まり、入れ替わり立ち替わり部署の人間が挨拶や自己紹介に赴いている。
いや、挨拶というよりは……
主に女性社員たちの「餌食」になっていると言った方が、この状況を正確に表しているかもしれない。
「ねえねえ黒崎さん!ズバリ聞いちゃうけど、今彼女とかいるの!?」
「あはは、彼女ですか?…今はいないですね。当分は『仕事が恋人』になりそうです」
「ええぇ何それ、答えまで爽やかでカッコよすぎる~!」
「じゃあ私、今から彼女候補に立候補しちゃうから!」
一歩引いた席からその光景を眺めながら、私は手元のグラスをいじった。
(やっぱり、すごいなぁ叶人くん……)
頭の中をよぎるのは、かつて私の後ろでシクシクと泣いていた色白の男の子の姿だ。
それが今や、どんな無茶な質問にも完璧な笑顔とスマートな受け答えで返す
非の打ち所がない立派な大人の男性。
それに比べて、私はどうだろう。
あの頃から何も成長していないような、ただの地味なOLだ。
こんなに格好良くて仕事もできる男なんだから、モテて当然。
私はただの幼馴染。
頭では痛いほど分かっているのに
他の女の子たちに楽しそうに囲まれている彼の姿を見るたび、胸の奥がキュッと歪んで
得体の知れないモヤモヤとした感情が広がっていく。
「はあ……」
思考の泥沼にハマり、自分でも気づかないうちに重いため息が口から漏れていた。
「随分と大きなため息ですね?先輩」
「ひゃっ!?」
背後から突然鼓膜を揺らした低い声に、私は漫画のように肩を跳ね上げて飛び上がった。
慌てて振り返ると、そこにはいつの間にか私の真後ろの席に移動してきていた
後輩の佐藤樹くんが座っていた。
「さ、佐藤くん!いつの間にそこに…」
「さっきからですよ。普段、仕事中も滅多にそんなため息なんて吐かないのに。何か深刻な悩み事ですか?」
佐藤くんは新卒で入ってきたばかりの私の後輩だ。
普段は飄々としていて掴みどころがなく、何を考えているのか分からないタイプだが
妙に観察眼が鋭いのが玉に瑕である。
「な、なんでもないよ!ちょっと、今週は仕事が立て込んで疲れただけ!」
「へえ……。あの〝幼馴染〟の黒崎さんのことが気になってるのかと思いましたけど」
#TL
瀬名 紫陽花
14,533
#BL
多 動 症 .
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コメント
1件
後輩くんきたーー!! これから叶人くん嫉妬とかしちゃうんじゃないかって思ってしまう……🤭