コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
メモを見ながら考え事をしていると、誰かが私の名前を呼んだ。「天川さーん、全て片し終わりましたよー。」さすがプロ、仕事が早い。 私は早々に元いた場所へ戻った。
「お疲れ様です。これ、良かったらどうぞ。」私はお礼として、自動販売機で買った缶珈琲を二人に渡した。 「いいんですか、わざわざありがとうございます。」そう言うと桐谷さんは缶を開け、珈琲を一気に飲み干している。
一方高槁さんはというと、缶をじっと眺めていて、一向に飲む気配が無い。あれ、珈琲嫌いだったかな。「ふふっ、高槁さん。変なものは入ってませんよ。 」桐谷さんは少し笑いながら、肩をポンと叩いた。変なもの?なにそれ。よく分からない冗談を言うのね。
結局高槁さんは珈琲を飲まずに帰って行った。「ありがとうございました。お陰で助かりました。」「いえいえ、そういうお仕事なので。また何かあったら呼んでくださいね。それでは、失礼しました。」何から何まで丁寧な人だ。この人は絶対モテる。そう呑気なことを思いながら、私も家に帰ることにした。
2│帰り道
帰り道の山の中、目の前に懐かしいものがあった。「公園か、イベリスとよく行ってたな。」イベリスという人物は、私の妹だ。母の再婚がきっかけで出来た義理の妹だが、実の妹のように可愛がっていた。
「もう、会えないのか。」泣くのはもう辞めたはず。なのに、勝手に涙が溢れてくる。「私もメンタル弱いのね、しっかりしなくちゃ。」いくら泣いても妹は戻って来ない。なら、泣くだけ時間の無駄だろう。でも、もう会えないとなるとやっぱり悲しい。
妹は、病気や事故で死んだのではなく、殺されたのだ。そう、あの海月に。そんなの悔しいに決まっているだろう。イベリスの為にも、私はメソメソしている場合じゃない。「イベリス、待ってなさい。お姉ちゃんが絶対敵を討つから。」だが、敵を討つと言っても何をするかまだ決めていない。そもそも海月にも会ったことが無い。「はぁ、どうしたもんかな。」
そんな独り言を呟いていると、背後からカランという音が聞こえてきた。ふと振り返ると、そこには1人の女性が立っていた。「こんにちは、お嬢さん。」「…こんにちは。」音の正体は左耳につけているピアスの鈴だったようだ。 左耳のピアス?「貴方、もしかして海月?」警戒しながら少し構える。「ち、違います!てゆうかお嬢さん、海月様と会ったことあるの!? 」「え、いや、会ったことないです。」あれ、海月じゃなかった、人違いか。というか、海月様?「まぁ知っててもおかしくないわよね。そこそこ有名だし。」「有名なんですか?」「そりゃあもちろん!ここらへんの地域では有名な殺し屋なんですよ。」
何だそれ、殺し屋だと?この時代の日本にそんなものあったのか。一応この人にも聞いておこうか。「その海月について、知っていることって何かありますか。」「えっと。あ、そういえば!殺し屋と言っても、依頼を全部引き受ける訳じゃないんだって。よほどのことがない限りはいくらお金を積まれても断るらしいよ。」「よほどのこと、とはどんな?」私はすぐにメモを手に取り、真剣に話を聞いた。「例えばだけど。沢山人を殺めた極悪人とかかな。」お、かなり良い情報が手に入った。ん、待てよ?極悪人以外殺さない?じゃあイベリスは何故殺されたんだ。
「他には」「他には、海月様はとっても良い人って事だけかな!」「良い人?」何を言っているんだ。海月は私の妹を殺したクソ野郎だぞ。「えぇ、この街のお手伝いを沢山しているんだって。」は、お手伝い?笑わせないでよお姉さん。あんなクソみたいな奴の何処がいいのよ。「そうですか、ありがとうございます。」「いえいえ〜、そうだお嬢さん。お名前は?私は堀河 夏希」「天川祐奈です。」「祐奈ちゃんね、これからよろしく!」「あ、よろしくおねがいします。」この人絶対陽キャだな。