家に帰るまでの道が同じだったので、途中まで一緒に帰ることにした。
「祐奈ちゃんって歳いくつ?私は20歳。」「17です。」「17!?ってことは高校生か、いやー若いねぇ。」「堀河さんだって若いじゃないですか。」彼女はそんなことないよと笑いながら私の背中をバンと叩いた。正直バカ痛かった。「私のことは名前で読んで!苗字だとよそよそしいでしょ。」
大分距離詰めてくるな。「分かりました、夏希さん。」夏希さんはとても嬉しそうにニコニコしている、可愛い。「夏希さんって美人さんなんですね、なんのメイク使ってるんですか?」「え?これスッピンよ。」嘘でしょ、これでスッピン?ヤバ、女優とかいけそう。
「そういえば、どうして海月様について聞いてきたの?」「…それ、答えなきゃ駄目ですか。」イベリスの侮辱になりかねないし、これはなるべく避けたい質問だな。「いや、少し気になっただけよ。答えたくないなら全然答えてくれなくてもいいから。」「すみません。その質問には答えられません。」「そっか、ごめんね。」「いえ、こちらこそすみません。」
3│遭遇
「じゃあ、またね!祐奈ちゃん。」「はい。」私達は坂を降りた所で別れた。あの顔、何処かで見たような気がするんだけど、気の所為かな。そんなことを考えていたら、急に ポチャッと頭に冷たい水滴が落ちてきた。「うげっ、雨だ。」私は雨に濡れないよう、いつもより少し遠回りした。
結構降ってきたなぁと、空を見ながら歩いていたら、誰かと肩がぶつかってしまった。「あたっ、すみません。」私は頭を下げ謝った。ぶつかった相手は女性だったようだ。セーラー服を着てるから学生さんかな、しかもイベリスと同じ学校の。私はふと顔を見た。
え、仮面…?しかも左耳にピアス付けて…。こいつ、まさか。「お前、もしかして海月か?」相手は黙ったままこちらを見ている。「おい、聞こえてんだろ。返事しろよ。」それでも黙ったままだ。確信した、こいつが海月だ。イベリスを殺したクソ野郎の、海月だ。「お前が、お前がイベリスを!」私は恨みや怒りで気が動転し、手持ちのカッターナイフで切りかかった。だが、軽々しく避けられてしまった。
「わっ、急に切りかかって来ないでよ、祐奈ちゃん。危ないじゃない。 」「は、お前何で私の名前を。」殺し屋って全員の名前を覚えるものなのか。いや、そんな訳ない。この街の住民は数万人いるんだぞ、そんな多人数覚えきれる訳がない。「何言ってるの、祐奈ちゃん。僕達オトモダチじゃない。」「調子こいてんじゃねぇよ、クソ野郎が!」何がオトモダチだよ、テメェの事なんざ知らねぇよ。「え、確かに僕は海月だけど、君に何かした覚えは無いよ。人違いじゃない?」「うるせぇ黙れ!お前が殺したんだ。私の、たった一人の妹を。」怒りでおかしくなってるのは自覚してる。でも、しょうがないじゃないか。家族を殺されたら誰だって許せないだろう。「何の話をしているのかさっぱり分からないよ。」クソ、流石殺し屋だけあるな。会話の途中ずっと刃を振りかざしてるのに、全部避けられる。いや、私が下手なだけか。
「死ね、死ねよ!なんでイベリスが死なないといけなかったんだ!まだ16だったんだぞ、お前は1人の女の子の未来を奪ったんだよ!」私は全ての思いを吐き出した。だが、全くスッキリなどしない。やっぱりこいつを殺さねぇと意味ねぇか。
「お前には苦しんでから死んでもらう。泣いても必死に願っても絶対に許さねぇ。」そう言うと、海月は声を出して笑った。「あっははは!」「は?何がおかしいんだよ。」「ごめんごめん。そっか、君は僕を恨んでるんだね。僕、人に恨まれるのは君が初めてだ。」「君は僕を殺すと言ったね。でも、きっと無理だ。僕の正体を知ったら、殺意は無くならなくとも、殺すなんて事は出来なくなるよ。 」そう言うと、海月は自分の顔に付けている仮面を取った。
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こんにちわサマータイムレンダのなりきりしませんか?