テラーノベル
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数日後の帰り道。
深澤は駅へ向かう途中で、後ろから駆けてくる足音に気づいた。
「ふっかさーん!待ってぇや!」
振り返ると、息を弾ませた康二が手を振っていた。
「……お前、なんでついてきてんの?」
「ええやん、寂しいやろ?一人で帰るん」
飄々とした笑みで言われて、深澤は肩をすくめる。
「お前はほんと、いちいちお節介だな」
そう口では言いつつ、横を歩く康二の明るさに、ふっと心が軽くなる。
信号待ち。向井がポケットから小さな飴玉を取り出して差し出す。
「ほら、疲れてるときは甘いもん食べましょ!お疲れ様でした!」
「……なんだよ、それ」
受け取って口に入れると、懐かしい甘さが広がった。
その瞬間、深澤の胸がきゅっと締めつけられる。
(あれ……なんでだ。なんで俺、こんなに安心してんだろ)
向井は何も気づかず、にこにこと笑っている。
「ふっかさん、子どもみたいやなぁ」
「バカ、俺は子どもじゃねぇよ」
苦笑いしながらも――心のどこかで、康二の無邪気さに惹かれている自分に気づきかけていた。
信号が青に変わり、深澤と向井は並んで歩き出した。肩が軽く触れ合うくらいの距離。深澤は飄々と笑ってごまかしながらも、向井の横顔から目を逸らせなかった。
その様子を、道の向かいから阿部が見ていた。
帰りしなにコンビニへ寄っただけだったのに。
(……ふっか、あんな顔するんだ)
胸の奥がざわつく。
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