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「あの日、私は幽霊とキスをした」
真冬の夜、コンビニに出かけた私は事故にあった。
運良く一命を取り留めた私は2ヶ月ほどリハビリを受けて退院した。
事故にあってから私は見てはいけないものが見える。
人は死の淵に経つと幽霊がみえるようになるらしい。まさにその状況そのものが今私に降り掛かっている。
「なぁ、シズクそろそろ学校行かないと遅れるぞ?」
「わかってる〜」
ほら。こんな感じで死んだはずの幼なじみが私を起こしてる。
「シズク!起きなさい!今日学校よ!」
「んー!」
「おばさんにも言われてやんの」
「悪かったわね 」
「あんたもさっさと成仏しなさい」
「出来たらできてるっつーの」
「あっそ!」
これが日常。非現実的な。
「てかシズク、今日舞台挨拶なかった?」
「え?そうだっけ、やばっマネージャーから電話かかってきた!」
声優。私の仕事だ。事故からの復帰でさらに忙しい。
「お母さん学校に連絡!」
「わかってるよ〜!」
もう、なんで気づかなかったんだ私。
「どんまいシズク」
「むむむっ」
「ギリギリですみません!」
「いいのいいの、早く衣装に着替えて!」
「ほんとすみません!木下さん!」
木下スミレ。私のマネージャー。
仕事が出来る綺麗な人だ。
「シズク遅刻ギリギリだな」
「るさい悠一、黙ってそこら辺ウロウロしてなよ」
「へいへい」
「まもなく開演です!」
「はーい」
私は今作のヒロイン東雲雪菜を演じている。物語は天真爛漫な雪菜と塩対応な主人公、池澤清夏が恋に落ちる少女漫画原作のアニメ。
「雨乃、掛け合いしてもらってもいいか?」
「了解、どこから?」
「ここからいいか?」
「うん」
宮瀬深琴。主人公の池澤清夏を演じている同い年。
今日の舞台挨拶という名のイベントは企画としてアニメのワンシーンをその場で演じるというものがある。正直人前で演じるのは得意ではない。が、深琴が空気を作る。演じやすい空気を。
「お2人は準備をお願いします」
「はーい」
スタッフの人達が集中している、少しの物音もたたない舞台袖。
出番を待つ私と深琴。
「では早速この方達にご登壇していただきましょう!宮瀬深琴さんと雨乃シズクさんです!」
「こんにちは〜!」
「池澤夏樹役の宮瀬深琴です。今日は楽しんでください。」
大きな拍手。人気声優の名は伊達じゃない。観客席には女性が多い。深琴目当てだろう。
「東雲雪菜役、雨乃シズクです。久々の舞台挨拶で緊張していますがどうぞ、よろしくお願いします!」
「では早速ですが企画の方に移らせて頂います。今すぐ?夏樹と雪菜のてぇてぇを見たいんだ!さあこの企画はこの場で宮瀬さんと雨乃さんにアニメのワンシーンを生アフレコして頂きます。途中で何パターンかのシーンに分けられそこは観客の皆様の投票で決めたいと思っています!」
集中しろ。空気を感じろ。雪菜になりきれ
「では早速お2人、よろしくお願いします!」
「ねぇ!夏樹くん、この前誕生日会したじゃん、その時にネックレス忘れちゃったみたいで、見てない?」
「知らないな」
「この後家行ってもいい?」
「なんでだよ」
「ネックレス探させて!」
「俺はこの後…」
「じゃ!また後で!」
「おい…!」
「お邪魔しまーす!」
「ソファにでも座ってろ」
「なんで?私も探すよ!私のだし!」
「俺が探した方が手間がかからない」
「そんな迷惑かけられないよ!わっ」
「っ…!だから、言っただろ」
「ごめん、ちょっと躓いた」
「いいから座ってろ」
「はーい」
「おい、ネックレス見つかったぞ。って、寝てんのかよ」
「くしゅんっ」
「…モーフくらいかけろよ…」
「はい!とゆうことで以上となります!」
「はーい!」
ミスなく出来ただけで私は満足だ。
でも一瞬で集中の密度が上がった。
深琴がセリフを読み上げたその時から。悔しいけど凄い実力。
「ねぇ深琴、なんでそんなに演技できるの?」
「憑依型だから上手く説明出来ない。でもまあ趣味で小説書いてるから”上手く空いてるピースを埋めることができる”って感じ」
「小説…」
「雨乃も書いてみるか?」
「え?」