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#Paycheck
ゆゆゆゆ
ゆゆゆゆ
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「ほら、もういいよ」
エリオットがそう言った瞬間、
チャンスが一歩、踏み込む。
今度こそ来る。
——はずだったのに。
エリオットは、その直前でひらりと体をかわした。
「……あ」
ほんの一瞬、距離がずれる。
その隙に、くるっと背を向ける。
「やっぱさ」
軽い声。
「ここじゃなくていいでしょ」
振り返って、少しだけ笑う。
「……あっち行こ」
視線で、ソファの方を示す。
でも——
歩き出すのが、やけにゆっくり。
わざと。
一歩、また一歩。
全然急がない。
チャンスはその背中を見て、動かない。
いや、動けない。
その“余裕ぶってる遅さ”が、逆に煽る。
エリオットは気づいてる。
分かってて、さらにゆっくり歩く。
「そんなに急がなくても——」
言いかけたところで。
後ろから、腕を掴まれる。
ぐっと強く。
「……っ」
そのまま一気に引き寄せられる。
バランスを崩して、体が傾く。
「遅えよ」
低い声。
すぐ近くで落ちる。
次の瞬間——
そのまま半ば強引に、ソファの方へ引っ張られる。
抵抗する暇もない。
「ちょ、ちょっと」
言葉とは裏腹に、完全には抗わない。
むしろ、少しだけ笑ってる。
そのままソファに押し倒される。
クッションが沈む音。
視界が一瞬で反転する。
上から、チャンスの影が落ちる。
逃げ場はない。
エリオットは一瞬だけ驚いた顔をして——
すぐに、ふっと笑う。
「……やっと来た」
小さく呟く。
息が少しだけ上がってる。
でも、目は逸らさない。
チャンスの手が、エリオットの腕を押さえる。
強すぎないけど、動かせないくらいには確実に。
「逃げるなって言っただろ」
低く、抑えた声。
さっきまでの余裕はもうほとんどない。
エリオットはそれを見て、少しだけ目を細める。
「逃げてないよ」
ゆっくり言う。
「誘ってただけ」
その一言で、空気がまた濃くなる。
チャンスの視線が、さらに強くなる。
エリオットは、そのまま少しだけ顎を上げる。
距離が、また近づく。
今度は——
逸らさない。
でも、まだ触れない。
そのギリギリで止める。
「ほら」
小さく囁く。
「ちゃんと来てよ」
さっきと同じ言葉。
でも今度は、逃げ道がない。
完全に捕まった状態で。
チャンスの呼吸が、近くで重くなる。
エリオットはそれを感じながら、
ほんの少しだけ笑った。
「さっきみたいに、止まるのはなしね」
最後の一押し。