テラーノベル
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廊下。
人通りはあるけど、少しだけ静かな場所。
ジェーンは足を止める。
ジョンも、その隣で止まる。
(なに話すんだろ……)
少しだけ緊張が走る。
「……さっきの」
ジェーンが口を開く。
「はい」
「何話してたの」
「えっ」
一瞬詰まる。
(デート指南って言えない……!!)
「えっと……その……」
明らかに挙動不審。
ジェーンはじっと見る。
「……別にいい」
あっさり引いた。
「無理に言わなくていい」
「すみません……」
「謝らなくていい」
淡々。
でもどこか優しい。
少し沈黙。
ジェーンは少しだけ視線を逸らして、
「……昨日のこと」
「はい」
ジョンの背筋が伸びる。
「ちゃんと考えた」
「……」
一気に緊張が上がる。
(来る……?)
「すぐに答えは出ないって言ったけど」
「……はい」
「何もないままにするのは違うと思う」
一歩だけ距離が近くなる。
「だから」
ほんの少しだけ間。
「試す」
「……え?」
理解が追いつかない。
「一緒に過ごして」
ジェーンはまっすぐ見る。
「それで決める」
——つまり。
「……」
「……デート、みたいなもの」
ぽつり。
(今、“デート”って言った……?)
ジョンの思考が一瞬止まる。
「……どう」
短く聞く。
「いや、えっと、その……」
完全にキャパオーバー。
「お願いします!!」
最終的にそれしか出なかった。
ジェーンは少しだけ目を細める。
「……声」
「あ、すみません!!」
でも。
ほんの少しだけ。
口元が緩む。
「場所は」
ジェーンが淡々と続ける。
「人多くないところがいい」
(指南その②……!!)
頭の中で
デュセッカーの声が再生される。
「落ち着いたとこ……」
「はい……!」
「あと」
少しだけ考えるように間。
「ご飯」
「はい!」
「また食べたい」
——パンケーキのことだと、すぐ分かる。
「任せてください!!」
「声」
「すみません!!」
でも止まらない。
嬉しすぎて。
「じゃあ」
ジェーンは軽く頷く。
「今日の仕事終わったら」
「え、今日!?」
「ダメ?」
「いえ!!全然!!むしろ!!」
「うるさい」
「すみません!!」
決まった。
あまりにも自然に。
でも確実に。
“デート”が。
その頃。
少し離れた場所で。
「今の聞いた?」
ひそひそ声の
シェドレツキー。
「聞こえたな」
腕を組む
デュセッカー。
「まさかの向こうからだよ?」
「予想より早い」
「これもう勝ちじゃない?」
「ほぼな」
二人は満足げに頷く。
その頃ジョンは——
(今日!?今日デート!?)
デスクに戻りながら、頭が完全にパンクしていた。
(なに準備すれば!?服!?いや仕事後!?)
(パンケーキ!?どこで!?)
(落ち着け俺!!)
落ち着いていない。
でも。
(……嬉しい……)
ふっと、少しだけ笑う。
同じフロアの端。
ジェーンは一人で立ち止まる。
「……デート、か」
小さく呟く。
少しだけ、考えるように目を閉じて——
「……悪くない」
ほんのわずかに、頬が緩んだ。
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