莉瑠は、家族にかけてきた苦労を思うと本当に心
苦しくなる。なんとか考えようとしてあがいて、
うまくいかない思考と幻聴から逃げる日々だっ
た。(感情を抑えて生きるしかないことが本当に
耐えられなかった、どうしてきちんと考えて生き
てこなかったのだろう?頭の中で考えようとして
もいつもわたしの中で何かがはねつけてしまう)
精神病院で過ぎてゆく毎日。考えて、抑制もせ
ず、自分勝手に生きてしまった過去。もう取り返
しがつかない。償いようもない。莉瑠は誰かを傷
つけ過ぎた。過ちに気づいて、考える声に耳を傾
けてももう遅かった。(わたしには生きている価
値もない、頭が悪いからいつも間違ったことをし
てみんなを傷つける、どうしてこんなに馬鹿な
の?何もうまくできないの?せめて、考えがうま
くいかなくても考えることから逃げてはいけなか
ったのに)しかし、うまくいかない思考も幻聴も
耐えられなかったのだ。「なぜお前なんか生きて
いるんだろう?みんなを不幸にするだけなのに」
幻聴が響いた。「なぜ、こんなにみんなを不幸に
してまで生きているんだ?頭の弱いお前は何もで
きなかった、どうして生きているんだ?ここまで
みんなを傷つけているのに、お前が生きているこ
とは害にしかならない、自己中心的で自分勝手だ」幻聴は莉瑠を責める。「いやあああー、黙
れ、黙れ」莉瑠は叫ぶ。そうやって幻聴を食い止
めてきたのだ。幻聴が言っていることは本当なの
に。「やめてー、やめてー、うるさい、違う、こ
んなつもりじゃないのに、なんでどんなに頑張っ
てもうまくいかないのー、もういやあああー」莉
瑠の叫びを聞きつけて美咲と看護師が入ってき
た。「静かにして下さい、病院ですから」今は午
後2時だとはいえ、叫ぶ自由は許されなかった。
看護師が精神安定剤の注射をいつも通り莉瑠に打
つ。「莉瑠さん、落ち着いて、もうすぐカウンセ
リングの時間だったけど、少し眠りましょう
か?」美咲が莉瑠をベッドに寝かしつける。(ま
たやってしまったわ、幻聴が言っていることは正
しいのに、わたしはみんなを不幸にすることしか
できない、どうしてちゃんと勉強をしなかったの
だろう?)莉瑠は、朦朧とした頭で考え眠った。
感情にたいする抑制力が弱く、どうしようもない
子供時代を生き、罪を重ねてしまったのだと莉瑠
は思った。みんなを不幸にすることしかないのだ
と。
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