テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「……お嬢様。おかえりなさいませ。って、――ええっ!? 一体どうしちゃったんですか?」
自室に戻るなり、アンナがくりくりした大きな目を見開いて私を迎えた。
無理もない。自分で留められなかった背中のボタンは開き、はだけかけたドレスを乱れた髪で隠す私の姿は、どこからどう見ても情事の後だ。
……そして何より、私の胸元は異常なほど左右非対称に膨らみ、ボコボコに波打っている。
「アンナ、急いで着替えの準備を。……それと、これを『調査費』として秘密の金庫へ」
私はブラジャーの中に手を突っ込むと、サファイヤと純金のボタンをテーブルに置いた。
――コトッ
糸がついたままの宝石が、音を立てて転がった。
「……うわあ。お嬢様、これ……。カイル殿下の正装用の軍服についていた装飾ですよね? かなり大胆に取って(盗って)きちゃったんですね?……。もう、びっくりですよ……!!」
アンナは引きつった顔で、糸屑のついた宝石を指先でつまみ上げた。
「でも殿下にバレたらどうするんですか? これ、普通に考えれば窃盗罪ですよ!?」
必死に釘を刺してくるアンナに対し、私は髪をかきあげつつ、ふんと鼻を鳴らした。
「大丈夫よ。殿下は気づいても、何も言えないはずだわ」
新しいドレスの背中のボタンを留めるアンナを、ドレッサーの鏡越しに余裕の笑みで見つめた。
「だって、『激しい公務』の最中に取れたのかも……なんて思ったら、あの初心な殿下が確認なんてできるわけないじゃない?一人で赤面して反省するのが関の山よ」
「……まったくもう、お嬢様ったら! とんだ悪党ですね……殿下の純情が、ちょっと可愛そうになっちゃいますよ」
アンナは呆れたようにため息をつきつつも、その手は手際よく宝石をベルベットの布で包み、金庫へと収めていた。
「最高の褒め言葉として受け取っておくわ。さあ、プランBよ。アンナ、過去三年分の王宮の予算明細を持ってきてちょうだい」
「さ、三年分ですか? 結構な量になっちゃいますけど……お嬢様、マジですか?」
「ええ、本気よ」