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#ざまあ
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「来週の連休、急な出張が入った。⬛︎⬛︎商事の接待だ。場所は箱根」
夕食の最中、直樹がビールを煽りながら吐き捨てた。
嘘だ
私は心の中で即座に否定する。
直樹が「接待」だと言い張るその旅館の予約完了メールは昨夜、奴のクラウドフォルダ経由ですべて把握済みだ。
一部屋15万円もする、露天風呂付きの高級スイート。
もちろん、宿泊者名簿には「直樹と莉奈」の名前。
「出張なのね……。大変ね、せっかくの連休なのに」
「まあな。俺が稼がないとお前ら食っていけないだろ? 感謝しろよ」
直樹は得意げに笑う。
自分の浮気旅行の費用を、妻に「感謝」させるクズ。
胃の奥が熱くなる。でも、私はその熱を「冷徹な計算」へと変えていく。
「陽太も実家に預けて、私も少し家を空けようかしら。法事があるって言ってたでしょ?」
「ああ、勝手にしろ。金は一円も出さないからな」
直樹は興味なさげにスマホを操作し始めた。
不倫相手との打ち合わせに夢中なのだろう。
連休初日。
直樹はブランド物のボストンバッグを抱え、意気揚々と家を出た。
私は彼を見送った後、すぐに動き出す。
陽太を実家の母に預け「仕事の研修がある」とだけ伝えた。
母は私の変化を察してか、何も聞かずに背中を押してくれて、私は新幹線に飛び乗った。
目的地は、箱根。
私はあえて、直樹たちが泊まる旅館のすぐ近くにある
素泊まり5,000円の古いビジネスホテルにチェックインした。
持ってきたのは、性能の良い望遠レンズ付きのカメラと、先日購入したばかりの小型録音機。
その夜
旅館の入り口が見えるカフェのテラス席で、私は獲物を待った。
(……来た)
タクシーから降りてきたのは、予想通り、直樹と莉奈。
直樹は私の前では絶対に見せないような、だらしない笑みを浮かべて莉奈の腰を引き寄せている。
莉奈の首元には、私の貯金を盗んで買ったあのネックレスが、月の光に不快に反射していた。
シャッターを切る。
二人の密着した姿
チェックインカウンターでの親密なやり取り。
そして、ここからが本番だ。
私は翌朝、旅館のチェックアウト時間を見計らって、ロビーの物陰に潜んだ。
直樹が精算を終える。
彼は慣れた手つきで、財布から「会社の法人カード」を取り出した。
(やっぱり……!)
不倫旅行の費用を、会社の経費で決済している。
それだけじゃない。
直樹はフロントスタッフに、こう告げたのが聞こえた。
「領収書、宛名は⬛︎⬛︎商事、但し書きは『会議室利用料及び飲食代』でお願いします」
決定的だ。
これは単なる不倫ではない。
会社を欺く明確な「背任行為」。
私は震える手で、そのやり取りをボイスレコーダーに収め、さらに遠目から領収書を受け取る直樹の手元を動画で撮影した。
「……捕まえた」
ロビーの喧騒の中、私は独りごちた。
直樹は莉奈の肩を抱き、満足げに高級車へと乗り込んでいく。
これから二人は、私の金と会社の金で、豪華なランチにでも行くのだろう。
どうぞ、今のうちに最高の思い出を作っておいて。
それが、あなたが「まともな人間」として過ごせる最後の休暇になるのだから。
私はスマホのカウントダウンアプリを見つめた。
【残り95日】