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‘母さんたちに電話したって?母さんから俺に電話があって、思わず‘良子に会った’と言いかけてチカに膝が割れそうなほど叩かれた’
‘私の手も痛かったわよ。良子ちゃん、大丈夫よ~私が阻止した’
「ありがとう。大事な手なのに…大丈夫ですか?」
‘頑丈だもの、私’
‘俺の心配もしてくれ’
仲のいいお兄ちゃんとチカさんの声を聞きながら、夕食を食べる。
そして片付けをしたあと、佳ちゃんと少し話をして、お風呂に入ってから颯ちゃんと電話で話をするのがここ最近の習慣のようになってきた。
「自転車屋さんの忙しい時期だよね。頑張って佳ちゃん」
新学期を前にした3月後半は自転車屋さんの1年で一番忙しい時期だ。
‘今、暇だったら店がつぶれる’
そう笑った佳ちゃんは
‘こっちの忙しいのは関係なく、いつでも連絡してくれよ’
何度も言って通話を終えた。
いつでも連絡……電話は普通に出来るようになった。
自分の誕生日までに皆に会えるだろうかという気持ちが、ふっと湧いて慌てて否定した。
具体的な日にちを決めたり約束というのは自信がないし……少し怖い。
‘なぁ、なんで俺いつも佳佑のあとな訳?’
今夜はそこが気に入らないのね、颯ちゃん。
彼は‘会いたい’‘会いに行く’という思いを必ず伝えてくれる。
そしてそれが未だに叶わず不機嫌になるのを隠そうともしないのだが、特に私に苛立つ訳でなく
‘叶うというのは、口に十と書くのだから10回言うわ’
と‘会いたい’と10回連続で言ったりする。
ところが今日の不機嫌ポイントは電話の順番だ。
特に理由はないけど颯ちゃんが気になるなら変えると伝えたあと
「あとの方がゆっくり話している気がするけど…」
独り言を呟く。
‘今まで通り、俺は一番最後でいい。最後にしろ’
私の独り言を拾った彼はすぐさま言い、機嫌が良くなる。
小学生みたいじゃないか?
「颯ちゃんはいつも颯ちゃんだね」
‘はぁ?頭大丈夫か?俺が俺じゃなかったらどうなる?俺は俺に決まってるだろうが’
「ふふっ…そういう感じも小さな時から一緒だ」
‘成長してないと言いたいのか?’
「ううん、変わっていないところがいいところでしょ?私も安心できるし…そういえばお兄ちゃんもずっと同じ感じだけど、佳ちゃんは少し変わったよね」
前に感じたことのある変化も、それが普通になっていた。
でも今また電話で声だけ聞いて話をすることによって、佳ちゃんが20歳くらいで変わったことを思い出した。
‘リョウがそう思うなら変わったんだろうな’
「佳ちゃんが20歳の時だったと思う…私が大学生だったから」
‘そんなにはっきりときっかけがあるってことか?’
「私はそう思うんだけど…」
‘何があった?’
「佳ちゃんが彼女と…キスしてるところに出くわしたの……大学から帰ってくる時」
‘俺知らねぇぞ’
「言ってなかったっけ?」
‘彼女がいたのは知ってるが’
「…そのあと、今みたいな優しい…どちらかと言えば過保護っぽいことを言うようになったと思う」
‘チッ…佳佑の奴……要らない変化だな’
「どういう意味?」
‘こっちの話だ。お前、そこで好きな奴とか付き合っている奴できてないだろうな?’
「あははっ…颯ちゃん、想定外の質問だね」
‘笑い事じゃねぇだろ?会えない間にかっさらわれたら洒落にならねぇ。いいか、リョウ’
「ふふっ、はい」
‘絶対男を好きになるなよ。まあまあいいかなぁ、とか言って付き合うなよ’
「まあまあいい…?」
‘絶対ダメだぞ。俺がお前にもう一度会うまで…リョウが好きになっていいのは俺だけだ。俺以外は拒否しろ。視界に入れるな’
「…颯ちゃん……?」
それって……まるで告白だよ?
コメント
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お兄ちゃんとチカさんいいコンビ😆 佳ちゃんの過保護増し増しはなぜ?と気になるとこだけど、颯ちゃんの何気ない愛の告白と10回称えるのくだりにきゅ〜ん💗2人のやり取りにも💗一見強引そうだけどリョウのこと優しく包んでるように思う˘͈ ᵕ ˘͈ ෆ